リカと、舞台監督の伴、事情を知るケントちゃんがいれば、舞台は何とかなると大見得を切る久部だが、何とかなるわけもなく、テンペストで崩れ落ちる。リカが和解を促し、風呂須も支払いは待つと言ってくれるが、久部は引っ込みがつかなくなっていた。

そのとき、ふと久部は、以前から思っていた、風呂須の正体に関する疑問を口にする。是尾らと古い知り合いではあるが、実は、西武劇場にあるカフェで10年働いていただけで、演劇の仕事をしていたことはないと言う風呂須。しかし、演劇の知識は豊富に持ち合わせていた。

久部が今の状況を打開する案を求めると、“仮面劇”という思わぬアイデアが出てくる。仮面を替えれば、1人で何役も演じることができるのが仮面劇。それなら2人でも上演可能だと久部の目に力が戻り、リカ以外の4人はうれしそうにWS劇場へ駆け戻っていく。

その後ろを歩くリカだけは、物憂げな表情を浮かべていた。

リカ(二階堂ふみ)はついに久部(菅田将暉)を見限る…!

伴が見守るなか、さっそく舞台で試してみることに。ハムレットがオフィーリアに「尼寺へ行け!」と別れを告げるシーンを演じ、その熱演に感極まった久部は相手を抱きしめる。しかし、仮面の下にあったのは、リカではなく樹里の顔だった。衝撃のあまり久部は言葉を失い、樹里は素顔を見られて後ずさる。

ホールに行かずにリカが来ていたのは、劇場の事務所だった。毛利から連絡を受けたジェシー才賀(シルビア・グラブ)と、仲間の信頼を失った久部はもう終わりだと話していたのだ。

次の支配人にならないかと問われたリカは、もっと広い世界で勝負したいと言い、芸能界の人を紹介してほしいと頼む。笑顔で力になると約束してくれたジェシーに甘えるリカ。そして、八分坂から抜け出すため、久部を切り捨てることを決意する。

自分が外の世界に連れていくと久部は必死に言い募るが、恵まれた育ち方をしてきた久部には、自分の気持ちはわからないと半生を語り出すリカ。裕福な家に生まれ、小学生の頃はたくさんの習いごともしていたが、オイルショックを機に没落。気づいたらストリップダンサーになっていた、と。

手ひどい言葉とともに、はっきりと見限ったことを伝えるリカは、最後には久部を優しく抱きしめて「楽しくないことはなかった」と言い残し、その場を立ち去っていく。久部の頬に涙が伝うのだった。

最愛のリカも失い、呆然として舞台に寝転がる久部のもとに、再び樹里がやってくる。シェイクスピアの戯曲を読んでいると、いなくてもいい登場人物がいて、不思議に思っていたと話し出す樹里。シェイクスピアは劇団の座付き作家だったから、みんなに役を与えるために、小さな役を作ったんじゃないかと気づいたという。だからシェイクスピアの作品は温かい、と。

そして久部に対し、自分のためだけに芝居を作っている人に人はついてこないと言い、転勤する父・江頭論平(坂東彌十郎)とともに八分坂を離れると報告した。

伴を呼んだ久部は、いよいよ告げる。「決めた。劇団は解散だ」と。