舞台袖では、劇団を辞めた王子はるお(大水洋介)の代役を務める大瀬六郎(戸塚純貴)が、いよいよ出番を迎えようとしていた。

久部は、初めての舞台に緊張する彼をフォローするために一緒に出演するが、心配とは裏腹に見事な度胸を見せる大瀬。朗々とした歌声を響かせ、のびのびと芝居をする姿に、観客は笑顔を浮かべ、久部や劇団クベシアターの面々は驚愕。まさにスター誕生の瞬間だった。

終演後、大瀬はパトロールに戻る前に好意を寄せているモネとその息子・朝雄(佐藤大空)と、客席で話していた。いつもは冷たい態度のモネだが、劇場のピンチを救ってくれた大瀬に柔らかい表情を見せる。甘酸っぱい空気を漂わせる2人の間で、朝雄は大瀬のピストルに興味津々。

劇場から出ていく大瀬を見送ったモネは、「学校に行きたくない」という朝雄を諭す。そこへいつも冷静な伴が現れて朝雄の気持ちに共感すると、自作のピストルのおもちゃをプレゼント。よくできたおもちゃに、朝雄も笑顔を浮かべた。

リカ(二階堂ふみ)とトロ(生田斗真)の動向にショックを受ける久部(菅田将暉)

久部と蓬莱は、スナック「ペログリーズ」を楽屋替わりにしている是尾のもとへ。ひどいヤジに深く落ち込こむ是尾を励ますべく、2人は演技の講義をしてほしいと依頼する。最初は断っていた是尾だが、夜の公演後に演技実習を引き受けることに。

そこへ伴が顔を出し、ヤジの主がリカの関係者であるトロだと告げると、久部の表情が一変。台本をブラッシュアップするための樹里との打ち合わせが始まっても、ぼんやりしたまま。

蓬莱が声をかけ、ようやくシャキッとした表情に戻るも、久部が台本をめくり始めたところで、トロの話題を持ち出す樹里。蓬莱が必死に話を流そうとするも、樹里は気づかないふりで話を続行。そしてリカとトロが2人で出かけたと聞き、久部は再び表情を変え、出て行ってしまう。

リカとトロはジャズ喫茶「テンペスト」で向かい合っていた。新宿・歌舞伎町の風俗店でリカが働けば、トロの懐に120万円が入り、殺されずに済むのだという。リカが言うことを聞くはずだと端から決めてかかっているトロに、舞台女優という夢に本気だと匂わせるリカ。濃密な空気を漂わせて見つめ合う2人を、久部はカウンターの陰から見つめていた。

トロが去ったテーブルに飛んできた久部は、リカにいなくなられては困ると主張。しかしリカは、自分の人生なのだと言い、いつもと変わらないミステリアスな態度でテンペストを出ていく。

見送ることしかできず、マスター・風呂須太郎(小林薫)に苛立ちをぶつける久部。次の瞬間、カウンターの陰からトロが姿を現し、久部は絶句する。

久部がリカに夢中だと見抜いたトロは、いい女だと余裕を見せるが、久部は「僕はすべての役者を愛してる!」と、言葉では演出家の姿勢を崩さない。しかしその目はうるみ、激情を抑えきれずにいた。

テーブルを激しく叩き、勝手な真似はしないでほしいと叫ぶ久部に向けられるナイフの刃。トロは鼻の周りをナイフでなぞると、怯えきった久部の鼻の穴に切っ先を入れて、ニヤリと笑う。

風呂須と仮歯(ひょうろく)の仲裁でナイフを収め、代わりに120万円を払ってくれるならリカを返すというトロに対し、久部は怯えるばかりだった…。