──シェイクスピア作品のモチーフを背負わせているという登場人物ですが、キャストのイメージものせて人物像を設定している部分はありますか?
ドラマも映画も舞台も、基本的にはキャスティングありきで脚本を書いています。俳優さんが決まっていないと何も思いつかないというか、「このセリフを言ってほしい」「こういう芝居をしてほしい」というところから物語を逆算してつくっていくので、本来は全俳優さんが決まってから書き出すんです。
でも、今回はかなり早い段階から企画が始まったので、キャストが決まる前から書き始めていて。最初に決まったのは菅田さんですが、そこから徐々にキャストが決まり書き進めていったので、僕にとっては新鮮な体験でした。

新鮮な体験と言うと、脚本の執筆期間も新鮮でした。昔は1話のオンエアが始まってもまだ書いていましたから。一番大変だったのは、次の週のオンエアのための本がないという状況のとき。1週間でドラマをつくらなければいけないところまで追い詰められたこともありました。
ですが、その良さもあって。放送中に書いているわけですから、視聴者の反応を見て物語の軌道修正ができたり、「この人をもうちょっと活躍させよう」とメインではないキャラクターを活躍させたり。視聴者とコミュニケーションを取りながら後半の物語をつくることもできたので、決して悪いことばかりではなくて。でも、8割くらい悪いことですけど(笑)。
今回は、クランクインしたときには後半を書いていましたし、中盤まで撮影が進んだ頃に台本は書き終わっていて、それは初めてのことでした。本が先にできていれば撮影もスムーズにいきますし、俳優さんたちも自分が今後どういう人生をたどるのかをわかったうえで芝居ができるから、早く台本が出来上がっていることに悪いことは一つもないんです。それはすごく勉強になりましたし、いい形で仕事ができてよかったなと思っています。
菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波の魅力「人としてしっかりしている」
──キャストがあとから決まったということは、台本を書き直すこともあったのでしょうか。
もちろんありました。魅力的な俳優さんに演じていただけることになったら、「もっとここを膨らませよう」ということもありましたし、軌道修正はしました。
──メインキャラクターを演じる二階堂ふみさん、神木隆之介さん、浜辺美波さんは三谷作品初参加となります。皆さんの印象を聞かせてください。
皆さんすごく演技がうまいですよね。それに、人としてもしっかりしている印象です。先日、座談会をやったのですが、そのときもきちんと自分の言葉を発していらして、積極的に発言するし。菅田さんを含めた4人のスキルが高いからかもしれないし、世代なのかもしれませんが、皆さんステキだなと思いました。
僕ら世代の人が何人か集まって座談会をやると、だいたいグダグダですからね(笑)。だから、4人があまりにしっかりしていてびっくりしました。

──現場を見学した際の、皆さんとのエピソードがありましたら聞かせてください。
控室で皆さんが集まってしゃべっているところを見ていて、ドラマ『王様のレストラン』(フジテレビ)をやっていた頃を思い出しました。みんないい意味ですごく気合いを入れて、でも楽しくやっている感じがあって。そういう空気感はいつの時代も変わらないんだな、と。
でも、そこに僕が入っていくとちょっと緊張感が生まれてしまって。それは少しさみしかったです。自分が思う以上に、若い皆さんは僕に気を使ってくれて、リスペクトしてくださっていて。ちょっと居づらさを感じました(笑)。

──最後に『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』というタイトルに込めた思いを聞かせてください。
シェイクスピア作品のセリフがもとになっているのですが、“シェイクスピア感”が出したかったということが一つです。あとは、オリジナル作品ですし、僕にしか書けないものをと始めたこともあり、差別化できるといいなと思い、ちょっと長めのタイトルにしました。
物語が進み、後半である登場人物がこの言葉を発するのですが、そこに向かって物語が集約していくイメージになっているので、誰がこのタイトルを口にするのか楽しみにしていただきたいです。