100年前の大震災で被災した港町　横浜にあった災害遺構　『上垣アナの災害遺構探訪記』

自然災害の歴史から防災を学ぶ、「災害遺構プロジェクト」。
あなたの地域で、過去にどんな災害が起きたのか？
全国の災害遺構をめぐり、先人たちが遺したメッセージや災害の爪痕から、社会科の教員免許をもつ、フジテレビの上垣皓太朗アナウンサーが災害の歴史を解説。
また、防災士の視点から、防災に役立つ知識を紹介します。

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みなさん、こんにちは。フジテレビアナウンサーの上垣皓太朗です。

出身地・関西から東京へ移動するときに、「まもなく新横浜」とアナウンスがあると、うとうとしていても目を覚まさねばと思う…横浜といえば、私にとって関東の玄関口です。
実は、この横浜の街、防災を学ぶことができるのです。

それが、ここ横浜DeNAベイスターズの本拠地がある横浜公園。
今日は、公園内にある災害遺構を紹介します。

ベイスターズの本拠地・横浜スタジアムをぐるりと回り込むと、市民の憩いの場が広がっています。
多くの木々に囲まれた場所に災害遺構の石碑はありました。

こちらは、関東大震災の復興の記念碑ということですが、どんなことが書かれているかというと…

「大正十二年九月大震火災の際本市の大半猛火に蔽《おお》はるゝや多数の市民は緑陰池邊《木陰や池辺》に避難して危くも九死に一生を得たり」

関東大震災で横浜市は大火に襲われましたが、横浜公園に避難して多くの人が助かったと書かれています。避難してきた人はおよそ６万人といわれ、横浜公園は６万人もの人を救ったというのです。

関東大震災の火災といえば思い出すのが、東京・墨田区の横網（よこあみ）町公園、被服廠（ひふくしょう）跡地で起きた火災旋風（せんぷう）です。
当時、軍服などをつくっていた陸軍の被服廠があった土地が、建物移転のため広い空き地となっていて、火災で焼け出された多くの人々が避難しました。
しかし、強風にあおられた炎が、火災旋風と呼ばれる巨大な炎の竜巻となって襲い、約３万８０００人もの人が亡くなったとされています。

なんと対照的な事例でしょうか。

決して横浜の大火が東京より小さかったというわけではありません。関東大震災による横浜の被害は、東京よりも深刻でした。
横浜市の住家全壊棟数は約１万６０００棟と人口が５倍だった東京の約１万２０００棟を上回っています。
死者数も２万６６２３人と人口に対する割合は東京よりも深刻だったといえます。

横浜公園で多くの人たちが九死に一生を得たのは、
（１）樹木が多く火災の熱や火の粉を防いだこと
（２）水道管の破裂により水溜まりが生じ熱や火の粉を防いだこと
（３）持ち出す時間的余裕がなく、避難場所に燃えやすい家財が持ちこまれなかったこと
（４）周囲の各所が燃えさかるタイミングに差があったこと

などが要因と考えられています。

私がもうひとつ注目したのが、横浜公園の歴史です。

横浜公園は、幕末の１８６６年に発生した横浜の大火を受け、防火道路と一体的に計画され、イギリス人技師ブラントンが設計したものです。
火災をきっかけに、防災を意識したまちづくりにより誕生したのが横浜公園だったという意味では、過去の災害の経験が生かされたのかもしれません。

横浜公園をあとにすると、海の方へ向かう日本大通りは、イチョウの並木道になっています。

イチョウは火に強いことから、防火対策として街路樹によく使われています。この道を少し行くと、年季の入った建物が見えてきました。

この建物は、横浜地方裁判所です。
入り口の脇に「慰霊碑」と刻まれた石碑があり、この碑にも関東大震災の記憶が記されています。

慰霊碑には「死者の多きこと全市中首位にあり」との記載があり、建物の倒壊で９４人もの死者を出す悲惨な現場となったことが刻まれています。

このように、横浜の街を歩いていると、関東大震災の記録の一端が至るところに残されているのに気づきます。