自然災害の歴史から防災を学ぶ、「災害遺構プロジェクト」。
あなたの地域で、過去にどんな災害が起きたのか?全国の災害遺構をめぐり、先人たちが遺したメッセージや災害の爪痕から、社会科の教員免許をもつ、フジテレビの上垣皓太朗アナウンサーが災害の歴史を解説。
今回は、森高千里さんの名曲『渡良瀬橋』の舞台 栃木・足利市の災害遺構をテーマに防災士の視点から、防災に役立つ知識も紹介します。
渡良瀬川で起きた台風による大規模水害
みなさん、こんにちは。上垣皓太朗です。
今回は、森高千里さんの名曲「渡良瀬橋」の舞台になった街、栃木県足利市の災害遺構を紹介します。

以前、視聴者の方から「渡良瀬橋の夕日を見に来てください」という趣旨のお葉書をいただいたことがあり、ずっと気になっていた場所が栃木県足利市です。
調べてみると、この街にも災害遺構があるということで、訪ねてきました。

場所 栃木県足利市岩井町
森高千里さんの「渡良瀬橋」といえば、1993年リリースの名曲ですが…この美しい曲が生まれた街にも、災害の歴史がありました。
足利市を流れる渡良瀬川。
川のほとりを歩いていると、ひときわ目立つオブジェが見えてきます。

災害名 カスリーン台風 (1947年9月)
死者・行方不明者…利根川水系で1100人
今から78年前の初秋に、関東地方などに接近し、大雨を降らせた台風がありました。
「カスリーン台風」です。
戦後間もない時代とあって、台風にはアメリカの名前がつけられています。
足利市の災害遺構の近くには、この「カスリーン台風」についての説明を記した看板も立てられています。

「カスリーン台風」は、勢力が最大の時で、中心の気圧は960hPa。中心付近の最大風速は45m/sの「非常に強い」台風。房総半島をかすめていきますが、このときは勢力が弱まり、最大風速は20m程度になりました。
風による被害以上に、雨による被害が顕著だったことが特徴で、いわゆる「雨台風」の典型とされます。
停滞していた秋雨前線が影響して、豪雨になったと考えられています。

足利市の雨量は、9月中旬の3日間で385ミリ。
この集中豪雨により、渡良瀬川の堤防が決壊するなどして、足利市で319人の死者を出しました。看板には、市内の被害が写真つきで説明されており、当時の悲惨な様子が伝わってきます。
戦後復興の時期に、1つの街だけで300人を超える死者が出た災害だけに、毎年の供養、地域での対策や、災害を伝えていく取り組みが積極的に行われてきたそうです。
街の中には、氾濫状況を実感してもらうための看板が。

住宅街の中にあった浸水実績看板には、私の背丈を超えるほどの浸水があったと記されていました。
これほどの浸水被害となると、車はもちろん…家も1階部分はほとんど水没してしまうほどです。早めの避難が大切だと、改めて思います。

こういった慰霊や看板の設置には、地域のみなさんの「渡良瀬川とそこに住む人々がひとつになった水害のない明るい未来」への願いが込められているそうです。
「渡良瀬橋」に歌われているような川辺の美しい風景が、いつまでも平穏に続きますように…。

お葉書をくれた視聴者の方、素敵なお便り、ありがとうございました。