――役のビジュアルでこだわった点を聞かせてください。

女形をやるときは、まず白塗りをしてお化粧をする。長襦袢(ながじゅばん)を着て、着物を着る。最後にカツラを被る。そういう段階があるから、女性の気持ちになれる瞬間があるんです。(最初から)おばあちゃんだと、どこで女性になればいいのかな…っていうのがありましてね(笑)。

でも、専属のメイクさんがついてくれているので、顔色をもうちょっと白くするかとか、ドーランがちょっと白すぎたとか、試行錯誤しながら松子が完成しました。自然な顔に作るというのが難しかったですね。

梅沢富美男 浅草と言えば下町、人情!「なかなか面白そう」

――所作などで意識していることはありますか?

僕は、舞台で女形をやっているので、体つきを女性らしく見せることができるんです。具体的にいうと、肩甲骨をゆっくり背骨に寄せて、内側に入れていく。そうすると、なで肩になって肩幅も狭くなる。それで洋服を着ていると、おばあちゃんに見えるんです。

手の動き、足の動き、肩、腰なども女性らしさを意識する。長時間撮影していると疲れるからイライラしますけどね(笑)。

舞台だと4分間くらい、踊る時間だけでしょう?しかも、終わったらパッと暗くなりますから、戻ることができる。でも、ドラマは何時間も撮影していますからね。だから、より集中してお芝居をしています。

声の高さも変えています。地声は太いのですが、おばあちゃんの声を出すときは、「あいうえお」の「あ」を、音符でいうとドレミの「ミ」の音から始めるんです。

そういう細かいことも含めて勉強中。おばあちゃん役を演じられてよかったなと思っています。

――舞台となる浅草についてはどんなイメージを持っていますか?

やっぱり下町というイメージですね。そして、下町といえば人情ですよね。

下町の人って、お節介な人が多いんですよ。戦前戦後、下町には長屋がたくさんあって、“向こう三軒両隣”っていう言葉が根づいたように、お醤油がなかったらお隣から借りることも、用事がある時には「ちょっと子どもを預かってくれるかい?」「いいよ」なんてことも日常だった。

そういう人情が下町にはあるもんですから、浅草という土地柄をテーマにした本作は、なかなか面白そうだなと思いました。

――演じる松子はどんな人物ですか?

「石の上にも3年」っていう言葉がある通り、辛抱するうちに花が咲くのが人生。松子は、そういう人生経験をたくさんしてきたおばあちゃんだと思います。

そして、自分が経験したことを、今の若い人たちに少しでも教えたいと思っている。なぜなら、世の中のいろいろなことを先輩たちに教えてもらって、とてもうれしかったから。

だから、自分も「こういうことがあったら、こういうふうにしな」とか、「それは違うよ、こういうことなんだよ」なんて、つい言ってしまう。松子の世代の人は、先輩から言われたことは、「ありがとうございます」って素直に受け入れたからね。

『浅草ラスボスおばあちゃん』第1話より

ところが、今の若い人たちは考え方が違う。そんなものは大きなお世話。いちいち教えてくれなくてもスマホで調べられる。わからないことがあっても、調べればすぐに答えが出てきますから。

1+1=2なんです、学校で教えてくれる計算は。スマホも1+1=2と答えを出します。でも、世の中は、1+1=2じゃないときがある。3になることも、1になってしまうこともある。それが人生です。それを経験しているのが、この松子だと思います。

そういう若い人たちとのギャップもたくさん出てくるので、このドラマを見て勉強してくださるとうれしいです。