江戸時代から続く歌舞伎の大名跡のひとつ「尾上菊五郎」を襲名し、尾上菊之助改め、八代目 尾上菊五郎。

祖父、父、義理の父が人間国宝という“歌舞伎界のプリンス”は、6歳で初舞台を踏み、18歳で五代目 尾上菊之助を襲名。
約300年続く音羽屋一門の伝統を守りながらも、宮﨑駿原作の「風の谷のナウシカ」や、シェークスピア作品の歌舞伎化など、革新的な舞台にも挑戦してきました。
今回の襲名披露公演では、江戸時代から繰り返し上演されてきた、音羽屋の家の芸を演じ、伝統を守りながら未来に向けて歌舞伎の可能性を広げていく、“新たな菊五郎像”を示しています。

そんな、大名跡を襲名したばかりの八代目 尾上菊五郎さんが、『サン!シャイン』のスタジオに生出演!気になる襲名後の心境や変化について聞きました。
「歌舞伎を多くのお客さまに伝える菊五郎に」
――子どもの頃から襲名するということは分かっていたと思いますが、襲名して改めて今のお気持ちは?
八代目 尾上菊五郎さん:
初代が菊五郎を名乗りまして、約300年なんです。いつかは私も継ぐであろうとは思っていましたが、非常に先人たちが名人であるが故に、私が継いでもよいものかというのは常に思っておりました。

今回、父が七代目菊五郎のまま、私が八代目として菊五郎を襲名させていただくということで、父の厳しい目の下、古典歌舞伎はもとより、新作歌舞伎も作り上げ、そして、今途絶えている演目を復活しながら、歌舞伎の演目を多くのお客さまに伝えていきたいと思います。

――襲名のタイミングは「いまだ」と?
八代目 尾上菊五郎さん:
いやぁ…、今から2年くらい前なんですが、ファイナルファンタジーⅩという新作歌舞伎の千穐楽を迎えた時に、父から「お前 継げよ」と告げられました。私は果たして今のタイミングで継いでいいものなのかというのは、悩みましたけども、父が決断致しましたからには、その責任を全うしようと。同時にせがれも「菊之助」を襲名させないか?ということを父が言ってくれましたので、親子揃っての襲名披露になりました。
――七代目と八代目が同じ時代にいるのは初めて?
そうです、史上初めてのことでございます。

――周りの人は「どっち?」とはならないんですか?
そうなんです。まぁ父のことは七代目さん、私のことは八代目と呼んでいただければと思います。
――襲名後、周囲で変化は?
楽屋に敷くカーペットが新しくなりました。
――八代目といえば「美しすぎる女方」ですが、どのように培っていったのですか?
八代目 尾上菊五郎さん:
私は…「努力」しかないと思っております。
先人たちが残してきたたくさんの女方の型や日本舞踊を勉強することで、女方のしぐさを体に入れて、役の心情になりきって演技をするというのが、歌舞伎の女方の演技の手法です。実際に現代の女性が女方のしぐさをすると、突拍子もないように見えてしまうんですけれども、男がいかに女性らしく見えるかということを追求したのが、女方でございます。
息子 六代目 尾上菊之助との向き合い方…サプライズも
――七代目と八代目の親子としての向き合い方と、息子さんとの向き合い方は違う?
八代目 尾上菊五郎さん:
時代に合わせてだと思うのですが、変わってきました。私の小さい頃は古くからいるお弟子さんがいらっしゃって、そのお弟子さんに多く稽古をつけていただいて、その仕上げを父が見てくれるという稽古方法だったのですが、今は私が直接せがれに指導するという方法に変わってきました。
(指導する際は)気分転換を心掛けています。やはり詰め込みすぎてもいけないですし、どうしても厳しくなってしまうので…。失敗することもたいへんな財産だと思うのですが、自分が経験してきたことや、自分が失敗したことをせがれにさせないようにと思って、今はとにかく私が知っている限りのことを伝えるということをしております。

――歌舞伎から離れたときの息子さんは?
ゲームが好きで、あとはMrs. GREEN APPLEさんが大好きです。

『サン!シャイン』は、八代目へのサプライズとして、息子である六代目 尾上菊之助さんから、父へのメッセージを頂きました。

六代目 尾上菊之助さん(11):
やっぱりお父さんですね。
稽古では厳しいですけど、家では多分、普通の一般家庭とかにもいるお父さんです。
優しいお父さんです。本当に色んなことを…風邪ひかないように気遣ってくれたり、夜にマッサージとかしてくれたり、ゲームとかもつきあってくれたり、ご飯連れて行ってくれたりもそうですけど、優しいところいっぱいありますね。
いつもありがとう。大好きだよ。
そんなメッセージ動画を見て、笑顔がこぼれる八代目菊五郎さん。

八代目 尾上菊五郎さん:
サプライズでしたね、本当に驚いちゃいました。いつ撮ったんだろう…。
本当に稽古は厳しくしてしまうんですが、二人で旅行したりとか、食事行ったりとか、短い時間でも気分転換をしつつ、楽しく舞台を務めてもらうのが一番だと思います。襲名興行はこれからも続いていきますので、二人で頑張っていきたいと思います。
歌舞伎を100年…200年後も残していくために
八代目 尾上菊五郎さんに向けて、『サン!シャイン』の視聴者からたくさんの質問やメッセージが寄せられました。

――伝統芸能を100年・200年残していくために必要なことは何だとお考えですか?(50代)
八代目 尾上菊五郎さん:
伝統芸能といわれて、約400年近く続いているわけですけれども、はんこを押したように先人たちがやってきたことをマネしているわけではありません。毎日が革新の連続です。先人たちが残してきた工夫を自分がいかに演じるか、毎日演技を工夫していることや、アニメやゲーム、漫画作品とコラボレーションをして、広く若い世代の方にも歌舞伎を知っていただくという、新作歌舞伎をたくさんつくるということもしています。それと同時に、歌舞伎の本道を守る、古典の魅力をお客さまにお伝えするのが何よりも必要だと思っております。その「古典」と「新作」の両輪をなすのが歌舞伎の魅力だというふうに思って…。これがまさに100年200年残して行くには必要なことなのではないかなと。

――團十郎さんとの思い出、エピソードを聞きたいです(50代)
八代目 尾上菊五郎さん:
同い年ですし、学校も同じで部活も一緒だったんです。彼とは幼い頃からいろんなところで一緒で、稽古も共に通いましたし、プライベートでも團十郎さんのお父さまが私たちが小さい頃スキーに連れて行ってくださったりとか、家族ぐるみでお付き合いをさせていただいておりました。

――メイクで肌荒れはしないのですか?お手入れはどうしていますか?(50代)
八代目 尾上菊五郎さん:
本当に睡眠の質を上げることと、食べ物はバランス良く食べるということしかないですかね。肌荒れってあんまりないんですよね。歌舞伎役者全般的に肌荒れというのをあまりみたことがなくて…なんでですかね?

――最後にファンの皆さんに一言
八代目 尾上菊五郎さん:
5月の團菊祭はありがとうございました。6月2日からまた歌舞伎座におきまして、襲名披露興行が始まります。時代物、世話物、そして舞踊と歌舞伎の魅力が詰まった公演になっております、ぜひ劇場にお越しください。
(『サン!シャイン』 2025年5月30日放送より)