――親交の深い研ナオコさんが、松子の親友・土井梅子を演じますが、自身の主演作で共演するお気持ちは?
オファーをいただいたときに、松子の親友がどうしても必要だとうかがって、初めに研さんの名前が浮かびました。
研さんのお母さんは、99歳で亡くなりましたが、白黒はっきりした意志をお持ちの方でした。ナオコさんはその血を継いだ娘さんですから、松子のお友だち役には最高の人材かな、と。
これまで、研さんと一緒に舞台もやっていますが、大スターなのにまったく偉ぶらないんです。どんなに年下のスタッフでも、どんなに偉い人でも同じように接する人。
梅子は、松子よりももっと若い子たちに寄り添っている役柄ですから、松子と若者の間を取り持ってくれるという役目があって、それに研さんは最適だと思いました。それで、僕から研さんにオファーしたら、すぐに承諾してくれたんです。
梅沢富美男「僕らは“人生大学”に通っている」優秀なのは人生経験豊富な人間
――松子さんは、苦労して生きてきたにもかかわらず、75歳で人生崖っぷちに追い込まれます。高齢者の生きづらさのようなものをどう感じていますか?
そういうことも打ち合わせのときにお話しました。松子の仕事がなくなるのは、仕方がないこと。定食屋さんをカフェにするなら、店員は若い人のほうがいいですからね。
でも、75歳といってもまだまだ元気ですから、仕事ならいくらでもありますよ。僕らは全国で公演していますからわかるんです。ホテルのお掃除、朝食会場でのお仕事…そういう仕事をしている友だちはたくさんいます。
仕事がないという人は、何かと理由をつけてやらないだけ。自分が嫌だと思わないでやる気になれば、いくらでもやっていけますから。
そういう意味でも、松子が生きるためにはどうしたらいいかということを考えて、行動していく本作は、希望が持てるいいドラマだと思います。

――元気がもらえるドラマですね。
そうです。人生、若者だけで生きていけるんだったら、こんな簡単なことはないですよ。優秀なのは、人生経験豊富な人間ですから。
だって、僕らは“人生大学”に通っているんですよ。生きることに関しては、東大出た若者よりもずっと頭いいに決まっているじゃないですか。こっちは、酸いも甘いもかみ分けて生きてきたんですからね。
親のすねかじって学校に行って、いいところの会社に勤めて、それで学んだと思っているような若者が多いわけでしょ。どんなにすぐ答えが出るとしても、「今言えばいいってもんじゃないんだよ」っていうのがわかっていない。だから、言ってしまう。わかれば言わないんです。
人生経験が少ない若者に、「それも勉強だよ」っていうことを、このドラマで楽しみながら知っていただければいいですね。