今年に入りエレベータ―の事故が相次いでいます。
国交省によると去年のエレベーター事故の件数は、前の年と比べ2倍以上。私たちは、安心・安全なエレベーターをどう見極めればいいのでしょうか?
点検の不備・老朽化で起きる事故
エレベーター事故の主な原因は、点検・管理の不備(整備・検査ミス、誤った報告など)や不適切な利用(無理やり乗り込む、ドアに物を挟むなど)。
今後増加する可能性があるのが、設備の老朽化により安全装置や制御装置に不具合が起きる事故だといいます。
エレベーターなど昇降機に詳しい
日本大学 青木義男特任教授:
エレベーターが公共の施設など多くのところに設置されるようになってから約25年~30年たっている状況です。そもそもエレベーターの対応年数というのは約20年から25年。
いわゆる老朽化が進んでこれから故障、場合によっては事故つながるようなケースが増えてくるという予測があります。
エレベーターは安全確保のため、有資格者による1年に1回の定期検査が法律で義務づけられており、怠った場合は100万円以下の罰金となります。
未然に事故を防ぐ「エレベーター点検」
10月27日、『サン!シャイン』が訪れたのは、事故を未然に防ぐために欠かせないエレベーターの点検や保守作業を行っている「京都エレベータ」。
22年間、現場で働いてきた松本さんにメンテナンスの様子を見せてもらいました。
まず手にしたのは私たちにも馴染みのある「点検中」と書かれた札。
京都エレベータ 松本浩さん:
異音がしてないか、振動がしてないかと確認しながら、「点検中」の札を貼っていきます。
合わせてボタンの確認もしていきます。動作確認ですね。
点検作業に入る前から常に感覚を研ぎ澄ませ、異変がないかチェックしながら札を全部の階数に貼っていきます。
そして最初に向かったのがエレベーターの制御盤。
京都エレベータ 松本浩さん:
人間でいうところの脳みそですよね。エレベーターの動きを制御している部分。モーターの回転だったり。
ドアの開け閉めやかごの昇降、その速度の制御など、運行全体をコントロールする重要な装置です。
京都エレベータ 松本浩さん:
こういうビス(ネジ)の増し締めだったり。定期的に締めてあげないと緩んでくることもあるので。
最悪、乗ってる途中に何か不備が発生してしまうと閉じ込められたりっていうこともあるので、きちんと見ないといけない部分ですね。
続いて点検に向かったのは私たちが普段乗っているかごの上。
京都エレベータ 松本浩さん:
昇降機自体の扉まわりだったり、エレベーターをつってるロープ。汚れてないかだったり、長年使ってくるとどうしても摩耗してきたりすることがあるので、そういった部分を確認します。
「命綱」となるワイヤーロープの確認。エレベーターをつるワイヤーロープは複数本あり、安全上最も重要な部品の一つ。ロープに切れ目や異常な伸びがないか、目と手で細かくチェックしていきます。もし1本でも切れ目があれば、安全基準に満たないと判断され、取り換えることになるといいます。
続いては、エレベータ―最下部の検査。
京都エレベータ 松本浩さん:
油が付着してたら滑っちゃうので。これがブレーキで左右についてるんですけど、油が付着していないかだったり、床の掃除だったり。
お客さまが何かしら落とし物をされている可能性もあるので。
エレベーターの隙間に物を落とした場合、そのほとんどが最下部で発見されるので、見つかる可能性は高いといいます。
エレベーターの安全を確かめるには?
私たち利用者が、エレベーターが安全かどうかを見極めるポイントはあるのでしょうか?
チェックポイント① 定期検査報告済証
操作ボタンの上などに掲示されていることが多い「定期検査報告済証」。年1回の定期検査を受けた証しです。
掲示なし・有効期限切れの場合はビルやマンションの管理会社などに相談してください。
チェックポイント② 不自然な音・動き・臭い
金属がすれる・ぶつかるような「異音」
開閉時にスムーズではない、昇降時に大きな揺れなど「異常な動作」
ゴムや油が焼けたような「異臭」など
1つでも異常に気づいたら管理会社などに報告・相談してください。
チェックポイント③ 非常ボタン
エレベーター内部に設置されている非常ボタンは5秒以上長押しするのがポイント。
押すとまず音が鳴りすぐにメンテナンス会社や管制センターに直接電話がつながります。
非常ボタンの他にもエレベーターによっては、メンテナンス会社のシールが貼られているので、携帯電話がつながる状況であればそこに直接電話をして助けを求めることも可能です。
また、正常に非常ボタンが作動するのか、管理会社などに「通報テスト」ができるか確認をすることもポイントです。
チェックポイント④ リニューアル確認
建物が築20年以上の場合、管理会社などにエレベーターの交換時期、またはその予定があるかを確認することが重要です。
エレベーター1基をリニューアルする場合、約700万円~かかります。
視聴者の方からもエレベーターで怖い思いをしたという体験談が寄せられました。
「扉が開いたので乗ろうとしたら床が不自然に低かったので乗らなかった」(60代)
「半分ぐらいずれて停止…その後、扉が開きおそるおそる降りた」(50代)
日本大学 青木義男特任教授:
こういう状況の時はすぐにでも管理会社、場合によっては製造メーカー等に連絡をしてください。普段使っている方たちが不具合を肌感覚で伝えることが非常に重要です。年に1回とか月に1回という点検だけでは、その間にこういったことが起こる可能性も十分にありますので。
特に古いものに関しては使っている方が日頃から五感を使ってチェックし、それを申し出ていただくことが非常に大事だと思います。
(『サン!シャイン』2025年10月28日放送より)
