10月11日『サン!シャイン』が取材したのは宮崎県内の今にも崩れ落ちそうな住宅です。

その原因となったのが擁壁の崩落。

「擁壁」とは周囲と高低差がある土地に住宅などを建てる際、土台の土が崩れることを防ぐ壁のこと。

擁壁の崩落を巡っては9月30日、東京・杉並区の住宅密集地で木造2階建ての住宅の倒壊事故が発生。
大量のがれきが、隣のマンションへとなだれ込みました。
住宅は擁壁ごと崩れ落ちたとみられています。

崩落発生8日前撮影 大きくひび割れ、中が見えている

崩落の8日前に撮影された写真には、大きくひび割れた裂け目から中が見え、壁も一部が変形している様子が写っていました。

建造物の構造などに詳しい東京理科大学の高橋治教授に話を聞きました。

東京理科大学・髙橋治教授:
高度成長期時代にだいぶマイホームとかの土地開発が進んだと思うんですよ。
それで老朽化が心配になった擁壁は増えていると思います。

髙橋教授によると、擁壁の多くが1970年代に作られ現在50年以上が経過し老朽化。
寿命を迎えた擁壁が推計で全国に200万カ所以上存在するといいます。

実際に擁壁ごと崩落した住宅は…近隣住民語る“困惑”と“恐怖”

宮崎県・国富町の擁壁が崩落してしまった現場。
すぐ下には畑があり、付近にはコンビニエンスストアがありました。

崩落した家のすぐ下には畑、近くにはコンビニがある

ここは7年前に擁壁が崩落。
しかしその後修繕されることなく家が崩れ落ちそうな状態が続いています。
崩れ落ちた擁壁は全貌が確認できないほど草が生え、家全体が斜面側に傾いているようにも見えます。

地面にできた大きなひび割れ

許可を得て隣の敷地から撮影すると、地面に大きなひび割れができていました。

付近のディスカウントストア 副店長:
台風が来る度に本当にダメージを受けていますよ。
本当に、台風が来るたびに本当に怖いですもん。

崩落した家の下で暮らす住民:
(所有者に擁壁の残骸を片付けてと)言ったけど、ダメですよ。
「土地が売れたらそのお金で処理します」っていうことだったから…、もう買う人おらんわね。

現在、崩落した住宅の所有者は住んでおらず、空き家状態。
売却の相談を受けた不動産業者は所有者に対し、売却するには擁壁の修繕が必要で高額な費用がかかると伝えましたが、その後進展はないといいます。
国富町によると、所有者事情により撤去が進んでいない状況で、所有者に対してはお願いすることしかできないということです。

200万カ所超の老朽化した擁壁…危険の兆候は?

全国に200万カ所を超えるともいわれる老朽化した擁壁。
“危険の兆候”とはどういったものでしょうか。

渡辺和洋アナウンサー:
まずはひび割れそして歪みや変形、もう一つ水漏れも実は危険な兆候であるということなんです。

水漏れというのはどういう状況で起こる危険な兆候なのでしょうか?

東京理科大学・髙橋治教授:
建物や土側はやっぱり水分を含んでると思うんです。
そうするとひびが入った時に、壁の厚さ分貫通すると水が漏れてくる。水漏れは「貫通してますよ」という予徴でいいと思います。
五感で感じてもらうといいのですが、耳でちょっと音がするとか、かなり傷んでちょっとにおう土が多いかと思いますので、「ちょっと臭いな」とかですね。

渡辺和洋アナウンサー:
このような状況があるときは業者に相談したり、自治体に通報するということが重要になってくるんです。

1000万円超も…擁壁の修繕にかかる費用

渡辺和洋アナウンサー:
杉並の崩落事故では区が改善に向けて11回もの指導をしていたが、修繕は行われなかった。
行えなかったのではないかという背景があります。
というのも費用面の負担が非常に大きいそうなんです。
状況により費用は変わってきますが、数百万円、場合によっては1000万円を超えるという可能性もあるということです。

ひび割れなどの修繕責任は所有者にあり、崩落が起こってしまった場合の賠償責任も当然所有者が負わなければなりません。

ひび割れの部分補修の場合は最大で150万円。
「これでは修繕が効かない」という場合は全面的な補修になりますが、そうすると最大で300万円。
さらに擁壁を取り壊して新たな擁壁ということになると、合計1500万円を超えてくるというような金額になるわけなんです。

東京理科大学・髙橋治教授:
多分その金額の計算は、擁壁の面積あたりでおそらく50㎡ぐらいで出していると思います。
100㎡だったら倍になります。

佐々木恭子アナウンサー:
擁壁を「数年おきにチェックしなさい」というような義務はあるんですか。

東京理科大学・髙橋治教授:
特に大きな義務はないんです。
本来は住んでいる人が1年に1回ぐらいしっかり見るとか(した方がよい)。

渡辺和洋アナウンサー:
土地を買うときに擁壁の補修まで想定して買うということも非常に重要です。

自治体からの補助は自治体によってかなりばらつきがあることが分かりました。
例えば東京・港区の場合、地理的にいろんなところに高低差があるということから、上限はありますけれど工事費の3分の2までも補助が出ます。
杉並区は融資を受けた場合その利子分の補助があり、今後はさらに補助の充実を検討していくとのことです。
もちろん、全くこういった補助がない場合もあります。

200万カ所超が、これから老朽化が進んでいく中、個人だけに押し付けていいのかというところが課題ですよね?

谷原章介キャスター:
ただ、個人の所有財産じゃないですか。これを公的なお金でどこまでやっていくのかすごく難しい。

渡辺和洋アナウンサー:
今後(土地を)買う場合どういう点に注意が必要か。
擁壁がある住宅の売買契約をする前に、自治体の擁壁の「確認済み書」「検査済み書」をしっかり確認することが重要だということです。
ただこれが必ずあるわけではない。

東京理科大学・髙橋治教授:
基本的には全部「確認済み証」「検査済み証」がなきゃいけないのですが、10年20年前の書類が残っているかというと、ないことも多いです。

渡辺和洋アナウンサー:
まずは身近にある擁壁についてぜひチェックをしていただきたいと思います。

(『サン!シャイン』2025年10月13日放送より)