今、全国で財政難を訴える自治体が増加しています。
『サン!シャイン』は2つの街を取材。私たちの生活に与える影響が見えてきました。

埼玉・飯能市 公的施設で修繕工事できず

埼玉・飯能市。市の職員に案内され向かったのは、公民館。

築53年の施設の壁には大きなひび割れが至る所に…。

さらに、天井に穴が開き雨漏りするといいます。

埼玉・飯能市 吉澤財務部長:
公共施設も今の財政状況で同じように維持管理・運営していくのはなかなか難しい状況になっている。

飯能市では今年度の予算編成で社会保障費の増加などの影響で支出が収入を上回り、8.5億の赤字になることが判明。
今年度は市の貯金にあたる財政調整基金を補填して赤字を回避。しかし、来年度も同じように赤字を出すと残りが5000万円になる財政危機を迎えるといいます。

そのため、老朽化している複数の公的施設で修繕費用の予算がなく工事ができていません。
飯能市では「緊急財政対策」に取り組み、福祉分野の補助金など22事業を来年度からの廃止を決めました。今後は公共施設の統廃合も視野にいれて財政改善を目指すといいます。

北海道・北見市 保育園閉鎖…施設やごみ袋値上げも

一方、すでに財政難で公共施設が続々廃止となった街も…。
番組が取材したのは、カーリングの町としても知られる人口約11万人の北海道・北見市。
北見市では来年度から毎年30億円以上の財源不足の見通しとなり、財政危機に陥っています。

北見市は2006年に4市町が合併し北海道で最も広い街となった影響で、市が管理する上下水道や道路が膨大な長さになり、管理・維持の負担が増加していました。
去年11月には財政健全化計画をまとめ、公共施設やサービスの廃止が決定。
60年以上続いた保育園は今年3月に閉鎖。今後さらに、図書館の分館なども閉館予定です。

そして30年以上続いた植物園も来年度末での閉館が決まっています。

北見市緑のセンター 長部こずえさん:
生活に必要ない場所と言われればそれまでなんですけど、心の癒やしのこういう場所がなくなるのは本当に悲しい。

施設の廃止だけでなく、サービス面でも住民の負担が増えていくといいます。

北見市では市民プールや遊園地、家庭用ごみ袋などが値上げ。無料だった火葬場も10月から8500円に…。

増加する財政危機の自治体

地方自治体の行政に詳しい大正大学の江藤教授によると、少子高齢化による税収減少や社会保障費の増加、インフラ老朽化による整備費、人件費・物価などの高騰によって財政危機の自治体が増えているといいます。

自治体にどれくらい借金があるのかを示す「実質公債比率」という指標のデータを見ると、約1700ある自治体の中で4つに1つの自治体が財政危機にひんしているということがわかります。

大正大学 江藤俊昭教授:
以前から財政は危なかったが、コロナ禍に出た補助金で一時的に潤った。それがなくなり今後は財政危機に直面する自治体が増えてくる可能性があります。

谷原章介キャスター:
住んでいる方にとってはいろんなサービスが値上げ・廃止されて困るし、そうなると自治体の魅力が下がる。そうすると入ってくる人も減る、出ていく人も増えていくかもしれない。そうなった時にはさらにまた市の行政としての財政は圧迫されていくじゃない。
この「負のスパイラル」からどうやって抜け出せばいいんだろうね。

高市首相は所信表明演説でガソリン暫定税率の廃止、年収103万円の壁引き上げに取り組む考えを示しましたが、これらは地方にとっては大幅な税収減少につながります。
高市首相は支援策として「自治体向けの重点支援地方交付金の拡充」についても言及しました。

大正大学 江藤俊昭教授:
大事なことは、もう少し自由に使える財源を増やしていく。こういう現状の中では、それぞれの自治体が今の状況をチェックする。負のスパイラルを正の方に転換させるときに、まずは現状を知るということが大事なことかもしれないですね。

財政破綻した北海道・夕張市の今

2007年、353億円の赤字で財政破綻した北海道・夕張市。
20年で借金を返済するというプランの中で、現在19年目を迎えています。
そんな北海道・夕張市は現在どうなっているのか、『サン!シャイン』が取材しました。

当時は観光業に力をいれており、市営の遊園地やホテルなども売却や閉鎖となり、市営だった遊園地は、現在も一部の施設が当時のまま残されていて、廃墟のような状態に…。

破綻の影響で人口は半分以下にまで減少。シャッターが閉まっている場所も多くありました。

一方で、新たな施設も誕生していました。

ゆうばりの「り」+駅(station)の「すた」で「りすた」と名付けられた、図書館や行政窓口、子育てスペースなどが集まった複合施設。

夕張市民(70代):
今は(街が)コンパクトに、ずいぶんこまい感じになったなっていう気がしますね。この辺にある程度集約したから意外に住みやすいですよ。

市役所の移転なども計画され、コンパクトな街作りが進められています。
7年前に新規開店したイタリア料理店は…。

イタリアン「空」シェフ:
ちょっとでも街を元気にしたいっていう思いはありましたね。
夕張だからこそできることとか、そういうところをなんとか見つけて、市内の方もそうですし、市外の方にももっと知ってもらえるようにやっていきたいなとは思っています。

大正大学 江藤俊昭教授:
現状を知ってこういう危機だっていうのと同時に未来を作り出していくという…、そういう意味では財政危機っていうのは自治の問題でもあるっていうことです。

――今後、各自治体にとって重要なことは?
行政改革も目いっぱいやっているんですね。だからふるさと納税というのも大事な視点だとに思います。
ただ、みんな横並びですから、これだけじゃダメだという意味では、国・地方の財政の改革というのは必要だし、自治の問題というのは今まで監査や議会のチェックが弱かったんですね。これを充実させる。
同時に、住民自身がそれに関わるために、その危機というか状況を知るために、分かりやすい財政白書なんか必要なんでしょうね。
そして中長期の展望と同時に未来を作り出していくような新しい「自治」を作って、自治の問題として捉えていただきたいなと思います。

(『サン!シャイン』2025年10月27日放送より)