2024年の年末年始には、帰省や旅行など約100万人が利用した日本の「空の玄関口」成田国際空港。

『サン!シャイン』は、年末年始を控える中、飛行機を安全に、そして快適に利用できるよう支えている点検や清掃のプロフェッショナルたちを取材。

真夜中の空港作業員たちに密着しました。

わずかなキズやよごれも見逃さない 飛行機洗浄作業

夜の巨大格納庫。準備運動を終えた作業員がこれから行うのは、飛行機の洗浄作業です。

滑走路からの泥汚れや、エンジンから出る油などによって機体が汚れるため、約3カ月に1回、機体全体の清掃作業を、深夜から明け方までの限られた時間内で行っています。

機体をきれいにするだけでなく、隠れたキズの発見や腐食を防ぐなど、乗客を安全に旅先へ届けるためにも欠かせない仕事です。

この日洗浄するのは、世界最大の旅客機「エアバス A380-800」。
全長約72m、高さは約24mと8階建てのビルに相当します。タイムリミットは約4時間。しかも、この巨大な機体の洗浄を手洗いで行うというのです。

飛行機の清掃を行うには機体ごとに清掃資格が必要で、資格習得後も一人前と認められるには、約1年の修練が必要だといいます。

そんな修練を経た13人の精鋭が、まずは分担されるそれぞれの持ち場を確認。午前1時にいよいよ清掃作業が始まりました。

匠の技で、高さ約24mの飛行機の翼をブラシで磨き上げていく作業員たち。機体にキズをつけないよう、機械は一切使わず手作業で入念に洗っていきます。

羽田空港グランドサービス 佐藤皇太さん:
飛行機の細かい凹凸部分だったり、あとセンサーとか突起物には注意しなければいけないっていうところでは、やっぱり手作業でやるのが一番現実的かなっていうふうに思います。

長さや形状の違う3種類のブラシを使いこなし、順調に洗浄を進めていく作業員たち。
中でも最も汚れがひどかったのは、機体後方、胴体の下部分です。

この部分の洗浄を担当するのは、清掃歴12年のエース・佐藤皇太さん(31)。

清掃歴12年のエース 佐藤皇太さん:
やっぱり、前側より後ろの方が。
主翼の可動部から出る油汚れだったり、タイヤから巻き上がる泥汚れとかがどうしても後ろに行くので、後ろの方が汚れやすいっていうのが特徴になります。

機体汚れ専用の特殊な洗剤を、汚れがひどい部分になじませていきます。

清掃歴12年のエース 佐藤皇太さん:
頑固な油汚れとかだと、柔らかくならないと汚れが落ちないので、まずは、洗浄剤を塗って、塗り置きっていう時間を作ってから力を入れてこすると汚れが落ちるっていう。

洗剤をなじませたら、繊細かつ大胆にモップでこすりあげるとみるみるうちに汚れが落ちていき、約20分でかなりきれいになりました。
しかし、佐藤さんは細かい汚れも見逃しません。

清掃歴12年のエース 佐藤皇太さん:
ちょっとした、なんかまだら模様に見えたりとか、あと細かいあの黒い線みたいなのがよく見ると残っているので、そういうところをまたこすっています。
結構しんどいです。肩とか首ですかね。

この日の成田市の最低気温は氷点下3.6℃。胴体の下部分の洗浄が終わった後も、佐藤さんは休むことなく別の作業のフォローに入ります。

洗浄開始から約4時間経過した午前5時。全ての作業が終了しました。
作業前と比べると、くすんだ色になっていた搭乗口はまるで新品のように。

飛行中に付着した泥や、油で汚れていた車輪周りも白く、輝きを放ちます。

一番汚れていた胴体の下部分も、見違えるほどきれいになりました。

清掃歴12年のエース 佐藤皇太さん:
全ての人に綺麗な飛行機を見て、わくわく感だったりを感じてもらえたらと思います。

パイロットの“道しるべ” 航空灯火の点灯・清掃

飛行機の運航が終了した、午後10時半過ぎ。
作業着に着替えた渡辺和洋アナウンサーを迎えてくれたのは、“光の番人”と呼ばれる2人の作業員です。

これから、滑走路や誘導路など、空港全体で1万5000個にも及ぶ航空灯火の点検作業に入るといいます。

夜間や悪天候の際に、パイロットの「道しるべ」として大事な灯り。
万が一ライトが切れたり、汚れにより十分な光量がないと、安全な運航に支障をきたし、事故などのリスクが増加するため、点検作業を飛行機が運航しない夜間にほぼ毎日行っているのです。

まず、作業員が行ったのは、約1200個のライトの目視点検。
車両に乗り、片道4kmにも及ぶ滑走路上のライトを1つ1つ確認します。

ライトに問題がないことが確認できたら、今度は設置されたライトの清掃作業に入ります。清掃で使用するのは、「グラスター」と呼ばれるスプレー状のクリーナー。

ライトのガラス面に吹きかけると、先端がブラシになっている特殊な機械を使って丁寧に磨き上げます。
清掃前と比べてみると、角にへばりついていた、汚れはきれいに落ち、くすんでいたガラスの面は見違えるほどクリアになっています。

今年4月に入社 有馬英志さん:
1日65灯くらいを、担当のチームがプリズム(ガラス)を拭くようにしています。

滑走路上に15m間隔で設置されたライト65個、距離にして約1kmを走りながら清掃していきます。全ての作業を、空港が動きだす朝5時までに終わらせなければなりません。
なれた作業員は、ライト1つあたり10秒以内に磨くといいます。

特別に渡辺アナウンサーも清掃作業を体験させてもらいましたが、なんとかきれいにはなったものの、目標の10秒には届きませんでした。

今年4月に入社 有馬英志さん:
若干押しつける形でやった方が。

渡辺アナ:
なるほど!取れてる、取れてる!
本当だ、全然違う!全然違いますね、急にぱっと明るくなりましたね!

アドバイスをもらいながら清掃を行っていきますが、来年50歳を迎える渡辺アナは、わずか3カ所の清掃でヘトヘト…。

入社5年目 関根大亮さん:
スピード感としては、慣れてない部分とかもあったと思うんで、十分かと思います。

その後、作業員たちはライトの交換作業や、ライトが正常に点滅しているかなど点検を続け、最後に滑走路上に工具などの忘れ物がないか厳重にチェックし、午前3時半ごろに無事作業が終了しました。

渡辺アナ:
普段どういった思いでやられているんでしょうか?

入社5年目 関根大亮さん:
成田空港を利用するお客さま方も見えるものなので、それを点検しているっていうのは、やりがいというものはありますね。

(『サン!シャイン』 2025年12月16日放送より)