医学の分野でノーベル賞受賞者を数多く輩出する日本の研究ですが、世界を驚かす研究を行い、未来のノーベル賞候補といわれている日本人がいます。
『サン!シャイン』は、普段見ることができない最先端の研究を密着取材!
「シリーズ ニッポンの最先端研究に密着」私たちの未来を大きく変えるかもしれない、世界が注目する日本人。その研究や素顔に迫ります。
体の「防御システム」を解明し未来の病気予防につなげる研究
今後、ノーベル生理学・医学賞の受賞が期待される研究者の一人、東北大学の山本雅之教授(71)。

山本教授が現在行っている世界トップレベルの研究、それが…「病気にならない予防」。
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 山本雅之教授:
病気にならない予防をする。それから早期発見をする。なるべく軽いうちに介入する。
私たちの生命を脅かす「環境ストレス」から身を守る体内の仕組みを、世界で初めて解き明かしたのです。

山本教授:
最初は酸化ストレスを感知するような、制御するようなメカニズムを見つけ出したいと思って、Keap1-Nrf2システムを見つけた。

ヒトの身体は、空気中の汚れや紫外線など、環境の中にある様々な要因によって日々ダメージを受けています。これが、身体の「サビつき」と言われる「酸化ストレス」で、がんや生活習慣病、老化の引き金になるとされています。
山本教授は、この「酸化ストレス」を感知し、修理する「Nrf2」というたんぱく質を世界で初めて発見!さらに、その仕組みを解明することに成功したのです。

これにより、がんや生活習慣病の予防薬、心筋梗塞などを軽減させる薬の開発などが一気に加速したといわれています。

つまり、山本教授が言う「病気にならない予防」が近い未来に実現する可能性も。

そんな山本教授は、日本政府が「世界トップレベルの研究力」と認定した国際卓越研究大学の第1号、東北大学に所属。
東北大学は、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏を輩出するなど、日本の学術研究をけん引する一大拠点です。

山本教授:
私は生化学、バイオケミストリーって学問をやっているんですけど、歴史からずっと現在までで世界で4番目に(論文)引用されています。東北大ではもちろん1番なんですけども。

山本教授は、これまで1000を超える論文を発表し、科学界に与える影響力と貢献度を示す指標とされる論文の引用回数は世界トップレベル。
2012年にはその功績を評価され、科学技術分野で権威ある紫綬褒章を受賞しています。

山本教授:
さびない体を作るということを非常に重要に考えていて、そんな研究をしてるんですね。
ここがスーパーコンピューターの部屋になるので少しうるさいですけど…。

一般に流通するパソコンの2000倍以上の情報処理能力を持つ「スーパーコンピューター」を使い、約12万人分のデータをもとに研究を続けています。
さらに、山本教授の相棒ともいえるのが…全国で10台ほどしかないという超高性能な顕微鏡。

山本教授:
クライオ走査型電子顕微鏡。いろんなタンパク質の構図を決めてるんですけど、特にKeap1の構図を決めようと思ってですね、すごく一生懸命この機械を使っているんですね。
しかもこの相棒は、細胞を急速凍結し、生きた細胞に近い状態で撮影もできるといいます。

山本教授:
化学の研究っていうのは巧妙に隠された仕組みなり真実なり真理なりを解き明かしにいく学問なんですよね。
なるべく工夫して、最短距離で巧妙に隠された工夫を明らかにした時に、やっぱりエンドロフィンっていうか幸せホルモンが出るわけですよ。そういうところを一緒に体感してあげたい。

真実を解き明かした時に「幸せを体感する」という山本教授。
趣味は「野球観戦」
日々、難しい研究を続ける山本教授ですが、その趣味を聞くと、テンションが急上昇!

――休みの日には何をしている?
山本教授:
週に7日、大学に来てますよ。
平日はだいたい朝7時半に来て、夜7時半ごろに帰りますから。うちでちゃんとゆっくり寝て。
この間、ちゃんと大谷の3本のホームランをリアルで生放送で見ましたから。野球(観戦)は大好きです。野球はもう本当大好きです。

――好きな球団は?
(研究で)シカゴに行ってたので、シカゴ・カブス。(ポストシーズン)負けちゃったんで、今はドジャースを応援してますよ。
(2016年にカブスが)ワールドシリーズ勝ったんでね。正座して見てましたね。
――なぜ正座?
緊張して正座して見てましたね。冗談ですよ(笑)。
でも、カブスが勝った時はうれしかったですね。
大好きな野球の結果も気にしながら研究を続ける山本教授。
学生たちとも積極的にコミュニケーション
ともに研究する学生たちは…。

東北大学大学院 佐藤美羽さん:
廊下ですれ違った時にいつも話しかけてくださって、「最近、どう?」っていっぱい聞いてくれて学生もすごく気にかけてくれてます。
人をすごく大事にされているのかなって印象を持っていて、学生の名前覚えてもらってますし。どこの高校出身でとか、そういうところもしっかり覚えてくださって。
世間話とか、そういう人柄をよくわかるようなところもしっかり見てくださっているのが私としてはすごくうれしいです。

約50歳も離れた学生たちとも積極的にコミュニケーションをとっているという山本教授。
研究室の学生たちの名前はもちろん、出身高校や人柄も頭に入っているといいます。
実は、出会ってわずか30分ほどの『サン!シャイン』スタッフの名前も、すぐに覚えて名前で呼んでくれました。
次の目標は?
現在71歳の山本教授。次なる目標は…。

山本教授:
科学の研究とか、科学を支える体制を整備していくって、ゴールなんてないですよ。
永久に走り続ける感じですね。一つ目標があって成し遂げると、すぐに次の目標が現れる。
やることはたくさんありますね。あんまり長く生きていられないからな~早くやらないと(笑)。
最後にノーベル賞について聞いてみました。

山本教授:
私ですか?(ノーベル賞が)視野に入っているか?それは難しい質問ですけど、(本来)ノーベル賞をもらってもいい人、本当にもらう人の十倍とか百倍とか、ノーベル賞もらってもいいだろうって人がいて、その中で運がいい人がもらうわけなんですね。
取れる取れないはやっぱり分野だったり、時の運だったり、いろんなことがあるので、だいたいノーベル賞とかあおっちゃダメですよ。(笑)
(『サン!シャイン』2025年10月21日放送より)