1日に63万人あまりが利用する都営バスが、業務委託先の会社の運転手不足により、10月のダイヤ改正で、206便の減便を行いました。

さらに、民間のバス会社3社でも、運転手不足などの理由で、路線バス150便以上が減便に。運転手不足による減便は、確認できる2002年以降初となります。

都営バスで減便対象になったのは、新宿駅や品川駅など発着の19路線。
新宿区の住宅街にあるバス停では、主な移動をバスに頼っている高齢者たちが、困惑した顔でバスを待っていました。

持病を抱える男性(70代):
バスがないね…。へたすると1時間待つからさ、歩くと息苦しくなるからなるべくバスを使う。

毎日バスを利用している女性(80代):
家の周りがお店が少なくなって、バスはほとんど毎日手足のように使わせていただいて。
足を痛くしているものですから…。しょうがないから歩くこともあります、時々。でも家に帰ると足が痛いって言っていますけど。

別のバス停では、免許を返納してしまったため、長距離の移動手段がないと話す60代の女性もいました。

働く人や学生だけでなく、高齢者にとっても日常生活に欠かせない路線バス。

都営バスでは、約2000人の運転手のうち、50代以上が約6割を占めており、定年退職も近いため、将来的に運転手不足はさらに深刻化する見通しだといいます。

運転手確保に新たな取り組み

深刻な運転手不足に悩む都営バス。東京都交通局は運転手確保のため、10月4日にバス運転手の体験会を初めて開催しました。

参加者の中には、バスの運転が初めてだという30代の女性の姿もありました。

バスの運転は初めて(30代):
緊張しました。やること多いなと思って。ミラーが11個ついていたり、自分にできるかな…。車の運転が好きってだけでは中々大変な仕事だと思いました。

運転だけでなく発車前の点検など、多岐にわたるバス運転手の仕事。
東京都交通局・運転手歴25年の早川さんは、「今後バスの運転手になりたい方がたくさんできるよう、局をあげて取り組んでいきたい」と話しています。

“バス減便”の流れを止めるために

運転手不足による減便は各地に広がっており、交通政策に詳しい桜美林大学の戸崎肇教授によると、今後“減便の流れ”はさらに深刻になるといいます。

交通政策に詳しい 戸崎肇教授:
都会ではバスの需要が多いので順調に運営されていると思われがちだが、地方と同じように運転手不足が深刻で急速に事態が悪化してきています。
都心部、東京以外でも大都市ですでに減便が始まっていますので、これからさらに深刻になっていくことが考えられます。

――今後どのような対策が必要なのでしょうか?
まず、大型バスが本当に必要なのかということを考える必要がある。特に高齢者が住んでいる地域は路地裏が多いんです。そうすると、大型バスが入っていけないので、より柔軟性の高い小型化をすると。そうすれば、2種免許もいりませんので、中型免許で移動できるのがひとつ。もう一つは、女性労働者をもっと活用する。かなり拘束時間が長いので、利用客が多い時間だけ活躍していただくとか、そういう形で柔軟に運転手さんを確保する必要があると思います。

さらに、運転手不足を加速させているのが、バス運転手の“転職”です。
タクシー業界への転職を支援するWill&J株式会社「プロタク」の藤野洋一社長によると、タクシーは働いた分だけ収入として返ってくるので、それを期待して転職を希望する人が多いといいます。

実際に、今年(2025年)7月にバス運転手からタクシー運転手に転職した20代の男性は、「2024年問題」で約1年前から長時間勤務ができず、給料が減り勤務時間も不規則だったのが、転職により給料は20万円台前半から現在30万円台前半にアップしたそうです。

交通政策に詳しい 戸崎肇教授:
以前はもう少し安定した収入で、規則正しい生活をしたいと、トラックやタクシーからバスの運転手に転職していたのですが、今は逆になっていて。
バスというのが非常に朝から晩まで拘束時間が長いんです。ところが、昼間の時間はほとんどなくて待機したりして、実質的に払われる賃金がそれだけ安くなってしまう。
そういうところがあって、かなり難しい状況になってきています。
まずは、町の在り方が変わってきていますから、今の路線が本当に正しいのかもう一度見直す必要があると思います。例えばスマホの行動履歴からお客さんはこういうふうに動いているんだと路線を組み直し、そして、本当に大型バスは必要なのか、あるいは本当に必要なのであればそれを公的に支えていくシステムを作っていかなくてはいけないと思います。

(『サン!シャイン』 2025年10月6日放送より)