俳優・仲代達矢さんが、肺炎のため、11月8日に亡くなっていたことがわかりました。92年の生涯でした。
“生涯現役”…最後まで役者魂を貫き通した仲代さん。
仲代さんの役者人生は、1952年、俳優座養成所に入った時から始まりました。
その後、セリフなしの浪人役として、黒澤明監督の映画「七人の侍」で映画デビュー。
さらに仲代さんが主演を務めた黒澤映画「影武者」は、カンヌ国際映画祭の最高賞である「パルム・ドール」を受賞。日本を代表する役者として活躍しました。
“仕事の相棒”であり最愛の妻・恭子さん
その役者人生になくてはならないのが、俳優座養成所の先輩で、舞台の共演をきっかけに結婚した妻・宮崎恭子さんの存在です。
1975年には、演出家でもある恭子さんと共に俳優を育成するための養成所「無名塾」を設立。
おしどり夫婦としても知られていた仲代さんと恭子さんでしたが、1996年、恭子さんは 膵臓がんを患い、65歳という若さで帰らぬ人に…。
仲代達矢さん(当時63歳):
実に根が明るくて前向きな人ですから、どうせ人間は一度は死ぬんだから。ただ、「仲代さんを残して死ぬと後の処置が大変だろう」と「死ぬのは仲代さんが先で、一日でも私が後に死ぬから」というのが口癖だったんですけど、世の中皮肉なもので私が残ってしまいました。
密着映像に残る“役者魂”
恭子さんが亡くなってから13年後の2009年。フジテレビは、仲代さんの生活に密着。
「無名塾」で、役者の育成に励む姿がありました。
仲代さんの部屋の壁には、無数の文字が貼られていました。
これはすべて仲代さんの台詞を自らの手で書き写したもの。そうやって覚えるのが“仲代流”だったといいます。
一方、普段の生活はというと…恭子さん亡き後、1人でコンビニエンスストアに弁当を買いに行き、1人で食事をする姿がありました。
2009年9月27日放送「ザ・ノンフィクション」
仲代達矢さん(当時76歳):
二人三脚でやってきた片割れが亡くなったわけですから。亡くなった時は無意識のうちに後追いを考えましたね。2年間くらいかな。いざとなったら消えてやろうとね…。
仲代さんが50年通った行きつけの店を取材
11月11日、『サン!シャイン』は、仲代さんが妻の恭子さんと共に通い続けた、横浜市にある日本料理店を取材。
今は亡きオーナーが修行していた店に仲代さんが通っていたことから、関係が続いているというこの店。
味の道「すだち」 木村順子さん:
主人が若造だったので「応援してやらなきゃ」って仲代さんが。それが開店の時からずっとつながっている。
店内には、たくさんの思い出が大切に保管されていました。
味の道「すだち」 木村順子さん:
仲代さんのだけちゃんと整理してるんですけど。
店を始めた50年前から現在に至るまで、撮りためた仲代さんの写真。その中には、1975年に妻の恭子さんと共に来店した時の写真も。
味の道「すだち」 木村順子さん:
これ仲代さん。奥さんと鍋を召し上がってて。
2人が開店当時から決まって注文していたのは、だしが自慢の「よせ鍋」。
さらに、仲代さんのサイン色紙も。横に添えられたイラストは、恭子さんが描いた仲代さんの似顔絵です。
そして、3カ月前の2025年8月に撮影された写真。これが最後の来店となりました。
味の道「すだち」 木村順子さん:
この間いらしたときも、仲代さんが私に「生涯現役でやるんだよ」とおっしゃってくださったので「一緒にやりましょうね」と。「僕だってまだこれからだよ。来年の舞台も…」みたいにおっしゃっていたので、きょう(11日)まだ(訃報を)信じてない…。
“役者”から見る仲代達矢さん
谷原章介キャスター:
僕は27年ほど前に仲代さんと共演させていただいていて、ちょうど奥さまの恭子さんを亡くされた後でしばらくお仕事されてなかった後の復帰作だったんですけども、「あの仲代さんとご一緒できる」っていうのにすごく緊張し気負って現場に行っていたのを今でもよく覚えています。
現場では多弁な方ではなくて、物静かに、じーっとしてるんですよ。無駄な力も使わず。「何か盗みたい」って思いで本当に挙手一投足、僕はじっと見つめていたんですけれども。
仲代さんの磁力っていうんですか。お芝居をしてない時でも本当にお芝居をしているかのような人の目を引きつけるとても強い魅力がある方でした。
佐々木恭子キャスター:
武田さんは、仲代さんご自身が「俳優」ではなく「役者」と呼ばれたいとおっしゃったことをどう受け止めますか?
SPキャスター 武田鉄矢氏:
俳優っていうのは頭からセリフから役を作っていくんですけど、役者っていうのは足元から作っていくっていう。正確にセリフを伝えようとする俳優さんに対して、役者さんというのはうめき声でさえも、吐息でさえもその人のセリフにしてしまうという。その違いが役者にこだわられた言葉一つに表れているんじゃないですかね。
谷原章介キャスター:
だからこその存在感と説得力。何も言葉も発さなくても仲代さんがじっと何かを見つめているだけで何かこちらは引きつけられるじゃないですか。
本当に日本にとって希有な素晴らしい役者さんでした。改めてお悔やみ申し上げます。
(『サン!シャイン』2025年11月12日放送より)
