秋田市民「クマの動物園の中にいる感じ」
こう語るのは、クマの人身被害が相次ぐ秋田市の住民です。
秋田県では、地元の要請を受けた陸上自衛隊がクマ捕獲のための支援活動を開始。
さらに、11月13日から警察によるライフル銃での駆除も開始されることに。
クマによる被害が全国で相次ぎ、今年度、11月5日現在でクマに襲われて死亡した人の数は13人にのぼり“過去最悪”となる中、
この“災害級”とも呼べるクマの被害に、対策は新たな局面を迎えています。
『サン!シャイン』は市街地でのクマ出没が多い秋田県をこの週末に緊急取材。
日常生活に大きな影響を及ぼしている「現状」が見えてきました。
秋田県を緊急取材 一変した日常「外で遊べない」
11月だけで793件のクマの目撃情報が寄せられている秋田市。
11月7日、秋田市の住宅街にはクマが出没し警察などが出動。近隣住民が撮影した映像には地上にいる人たちのはるか頭上、カキの木の上にいるクマの姿が映っていました。
クマは捕獲されましたが、近くの小学校では放課後、迎えに来た保護者と下校する子どもたちの姿が。
さらに、秋田駅から徒歩で約10分の千秋公園は、クマ出没の影響で現在も封鎖されています。
公園に隣接する商店街は、人影もまばら。
近くのドラッグストアでは、店の自動ドアを手動で開けて客を案内するスタッフの姿が。
ツルハドラッグ秋田泉南店・店長代行:
自動ドアだとお客さんが怖がっちゃうので。こっち(手動)のほうがお客さんも安心するかなと思って。
自動ドアから店舗内などに侵入するクマが各地で出没していることから、秋田市内では、自動ドアを手動に切り替えて対策する店舗が増えているといいます。
ホームセンターではクマ対策グッズを求める住民の姿がありました。
買い物する秋田市民(50代):
防げるかわからないですけど、何もないよりかはいいかなと思います。
スーパーセンターアマノ 御所野店・齊藤知聡マネージャー:
ちょうどクマよけの鈴が入荷したばかりで商品はいっぱい入ってきているんですが、おそらく今日、明日ですぐ全部売れてしまう。
クマよけのスプレーもあるんですが、そちらの方は全然商品が入ってこない状態です。
子供たちの生活はクマ出没でどう変わった?
気軽に外出もままならない状況の中、秋田市では屋外で遊べない子供のために、週末限定で市営施設の無料開放が開始されました。
5歳の娘がいる櫻庭さんは、外で散歩する機会が減ってしまったことから、今回市営施設に足を運んだといいます。
櫻庭さん(30代):
外で遊べないので…。ね、ハルちゃん、クマがいるもんね。
保育園の近所にもクマが出没して。せっかく田舎に住んでるし(娘を)外でいっぱい遊ばせたいと思っているんですけど、田舎が故の(クマ出没の)障壁が立ちはだかるとは思いませんでした。
櫻庭波琉ちゃん(5):
(クマは)おっきいからこわい…
秋田市の住宅街で暮らす薄田さん家族の自宅を訪れると、リビングで過ごす子供たちの姿がありました。
2人の子供の母(30代):
外で遊ばなくなりましたし、放課後も友だちと遊ばなくなりました。
小学3年生の息子が遊んでいたのは、家で遊べるようにと買ってもらった誕生日プレゼントのパズル。
息子(小学3年生):
ボール遊びとかチョークで遊んだりしたいです。(外で遊ぶのは)ちょっと怖い。
2人の子供の母・薄田さん(30代):
「いざここにクマがいたらどうするの?」っていうのを子供たちとしゃべっています。
もしクマが自宅のベランダに現れたら、自宅内でクマから逃げるときの段取りを細かく決めているといいます。
薄田さん(30代):
まず携帯持ってでしょ。
娘(小学6年生):
ここの戸を閉めて、こっち(子ども部屋)行って戸を閉める。
薄田さん(30代):
(クマは)きょうまでいなくても明日は出るかもしれないし、出ない場所がない感じしますね。
「東北の小京都」でもクマ出没…キャンセル続出も
さらに取材したのは、秋田県仙北市角館。角館は「東北の小京都」とも呼ばれ、武家屋敷通りは人気観光スポットです。
しかし11月5日、武家屋敷通りから100mの美術館の敷地内に入ってくるクマの姿が防犯カメラに捉えられていました。
周辺の店や宿泊施設にも影響が出ていました。
唐土庵・佐藤勇取締役:
(クマの出没で)観光客の皆さんが来なくなるという懸念は感じています。
宿泊施設でも…、
縁 Enishi・吉見梓オーナー:
(2週間で)クマが怖いからキャンセルするという方は10件くらい。
――去年は?
まったく1件もないです。
クマの人的被害が拡大した10月末からキャンセルが続出しているといいます。オーナーは犬の散歩が毎日の日課ですが…、
縁 Enishi・吉見梓オーナー:
クマスプレーを常に携帯して歩いています。ストッパーを外していつでも噴射できる状況で。今までこんなことをやっぱりこの街の人も経験したことがないなという感じになってきましたね。
武家屋敷度通りからすぐのところにある木には、よじ登ろうとしたのか生々しいクマの爪痕がありました。
近隣住民:
これがクマの爪痕だって。怖いな。(人なら)骨までぐしゃぐしゃになる。
災害級の脅威となっているクマ被害。専門家によると、冬を迎えてからもクマへの注意が必要だといいます。
(『サン!シャイン』2025年11月10日放送より)
