スマートフォンや、電気自動車のモーター、LEDなど私たちの生活に欠かせないものに使用されている、希少な金属「レアアース」

世界生産量の約7割を占める中国が、日本への輸出規制の強化を発表している中、2月1日、試験採掘を行っていた海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が、世界で初めて深さ6000mの海底から、「レアアース」を含む泥の回収に成功しました。

今回、採掘を行ったのは、本州の東京から約2000km離れた、日本の東の端、南鳥島の近海。今回の主な目的は機器の動作確認で、本格的な採掘試験は2027年になるといいます。

新たに見つかった4つの鉱物 発見者は“アマチュア”鉱物研究家

世界初の試みが成功し、国産レアアースへの道が前進し始める中、1月にレアアースにまつわる新たな発表がありました。

山口大学と東京大学などの研究チームが、日本国内で、レアアースを含んだ新たな鉱物を4種類発見したというのです。

『サン!シャイン』が尋ねたのは、東京大学・物性研究所の浜根大輔氏。見せてくれたのは、黒い棒状の鉱物…。

東京大学物性研究所 浜根大輔氏:
今ここに映っていうのが「セリウム赤坂簾石」という鉱物です。共通して含まれる元素があって、それはいわゆる“レアアース”というものです。

新たに見つかった4つの鉱物。実は、これらのレアアースが含まれた鉱物を最初に見つけたのは、意外な人物だったといいます。

東京大学物性研究所 浜根大輔氏:
いつも僕の研究に協力してくれる、年期の入ったアマチュア鉱物研究家の方がいて、その方が私のところに「これ何か少し変じゃないか?」という形で、調べてみてほしいというふうに話を持ちかけてきたものです。

新鉱物発見のきっかけとなった人物である、アマチュア鉱物研究家の原田明氏(75)。

原田さんが新鉱物を見つけたのは、群馬県桐生市の山中にある、茂倉沢鉱山。古くから乾電池などに使われる「マンガン」が採掘されていた場所でした。

大小様々な石が転がる、険しい山道を歩くこと30分。到着したのは、かつてマンガンを採掘するために掘り出された石などが残された場所でした。

アマチュア鉱物研究家 原田明氏:
例えばこれ!たたくと…ピンク色のが出てくるんですよ。こういう中にセキエイが入っていると。小さな金属鉱物が入っているんですけどね。
(石の中に)何か心に引っかかるモノがあったので、それを採ってしばらく持っていたんです。ところがその当時は色々分析をやってくれる先生が、博物館の移転やら何やらで忙しくて取り合ってもらえなかった。

この場所から、気になった石を採取しては、持ち帰っていたという原田氏。
しかし、なかなか分析が進まないため、浜根さんと飲み会をしているときに、半ば強引に調査を依頼したといいます。

そして、その結果、レアアースを含んだ4つの新鉱物の発見に至ったのです。

アマチュア鉱物研究家 原田明氏:
この茂倉沢というのは、珍しい石を探す人には有名な鉱山。
ただし、私が石を始めた頃には「もう何もとれませんよ」というのが相場だった。私そういうのを、「そうか」ときくのは、どうもへそ曲がりなので。
そんなんだったら、まだ何かあるんじゃない?と思うたちなので。そのあと、何回か来たときに、“人がとるものと違うものを拾うのが私”の信条なので、他のものを探していたんです。

独自に鉱物を研究して25年以上という原田氏。とにかく人と違う物を粘り強く求める、自称“へそ曲がり精神”が大きな発見につながったようです。

今回、日本国内で見つかった、レアアースを含んだ4つの鉱物。
しかし、その実用化については、現状採取できる量が少なく、国内産業に生かすことは「現実的ではない」といいます。

一方で、こんな希望も…。

東京大学物性研究所 浜根大輔氏:
(新鉱物は)茂倉沢という“マンガン鉱床”で見つかった。
そこから、いま、日本の地質環境はどうであるか、それがかつてどこにあったか、そういうことを考えて、「マンガン」というものを指標に探していくのは、いいアイデアだと思います。

実用化に向けて…迎える大きな“ヤマ場”

日本における「レアアース」市場は今後どうなっていくのか。世界初の海底6000mからレアアース泥の採取に成功した、内閣府のプロジェクトリーダー・石井 正一氏に詳しくお話を聞きました。

まず気になるのは、実用化に向けて。レアアースの実用化には三つの山があると言われており、一つ目が「資源の有無を確認」、二つ目は「採取が可能か」、この二つをクリアした日本が次に目指すのは、「レアアース泥から分離・精製できるか」になります。

内閣府SIPプロジェクトリーダー 石井正一氏:
実は日本は30年前までは、レアアースを精製・精錬するプロセスで、多くの特許を取っていました。そのとき中国の方に工場なども行きまして、やっているうちに、特許が20年で切れてしまって。あとは、中国がそれを囲い込んで特許を出さない。ですから、ノウハウとして囲い込まれています。
そういう状況の中で、いま日本には精製・精錬工場が全くなくて、技術者もいません。これをクリアするというのは、大きな3つめの山として、私たちも挑戦しなくてはいけない。

佐々木恭子キャスター:
元々日本が特許を持っていたということは、昔はできていたということですか?

内閣府SIPプロジェクトリーダー 石井正一氏:
昔はできていましたし、技術者もたくさんいました。今では、世界の精錬・精製ノウハウの90%以上が中国に占められています。
もうひとつ違うことは、海底の泥からこのようなプロセスをするというのは、世界で私ども初めての挑戦をしているんです。レアアース鉱石から放射性物質を除去するというプロセスとは異なるわけで、異なる部分だけ、私どもとしては新しい研究開発として挑戦していくことになる。

国産レアアースの実用化に向けては、2027年2月から本格的な採掘を開始。
そこから海水を脱水する機械装置を南鳥島に設置し、2028年3月までに、価格や採掘コストを踏まえて採算性について報告書を作成する予定となっています。

内閣府SIPプロジェクトリーダー 石井正一氏:
現在の国際的なレアアースの状況を見ますと、供給途絶を覚悟するような事態も想定されるわけですので、まずはコストがどうより、ちゃんとしたルートを築くこと。サプライチェーンに貢献できるルートがあるのかないのか、それは政府全体として、2010年の尖閣諸島問題の時の2カ月の教訓から、調達源の多様化と共に、特定国に過度に依存しないと、これで当時9割くらいの依存率を今は7割から6割近くまで落としているわけで。
ここに、いま主要国と協調して、重要鉱物の供給源の多様化に取り組んでいるので、そこに貢献できる形に持っていきたい。そのときには、経済性という問題より、サプライチェーンがあるかないか(が重要になる)。
次に、なんとしても経済性というのも一つの魅力になるので、来年の試掘が終わりましたら、しっかりと2028年の3月までに1年かけて経済性と成分を。そのためには中に入っている成分がどういうレアアースの種類が入っていて、何%入っているか。今回、トランプ大統領が重要鉱物を備蓄するという話になって急騰していますし、いまの値段よりもっと高騰する可能性がある。

現在、中国が独占しているといわれている「重レアアース」
しかし、今回採取されたレアアース泥には、この貴重な「重レアアース」が含まれている可能性があるといいます。もし含まれていた場合、世界のレアアース市場にどのような変化をもたらすのでしょうか?

内閣府SIPプロジェクトリーダー 石井正一氏:
「重レアアース」につきましては、世界のサプライチェーンの100%、中国が支配しております。そういう意味ではそこに1%でも供給を調達できるルートを作ることは、0から1ができると。

(『サン!シャイン』 2026年2月5日放送より)