人と同じく、時間を選ばないペットの緊急事態。
ペット需要の増加と共に、動物の診療施設数も増えていますが、獣医師不足の問題などから夜間診察に対応できる動物病院は多くありません。
『サン!シャイン』は、ペットの命をつなぐため、“24時間体制”で奮闘する動物病院を取材。奮闘する獣医師たちに密着しました。
真夜中に運び込まれる動物たち
東京・渋谷区にある「日本動物医療センター」。
昼間の診療に加え、夜8時以降も獣医師と看護師が常駐し、夜間の外来に対応しています。
渋谷の街も寝静まった午前1時過ぎ、緊急外来で訪れたのは、トイプードルのココアちゃん(17)。人間でいうと84歳くらいの高齢のワンちゃんです。
医療の進歩などで、犬や猫の寿命が延びる一方、病気のリスクも高まっています。
飼い主さんの話によると、ココアちゃんは血尿が出ているといいます。
日本動物医療センター 獣医師:
尿の赤みが強い事を考えると膀胱からの出血、膀胱炎とか。原因は感染・結石ができているなどが考えられます。
まずは、ココアちゃんを看護師が支えながら、獣医師がエコーで膀胱の状態を確認。さらに、膀胱から尿を採取します。少し不安そうな表情をしながらも、採尿中もおとなしいココアちゃん。
採取した尿には、やはり血液が混ざっていたため、遠心分離機にかけ下にたまった赤い液体を顕微鏡で確認すると、細菌が見つかりました。
診断結果は、「細菌性膀胱炎」。
抗生剤を含む点滴で処置を行いました。
日本動物医療センター 獣医師:
はーい、大丈夫だよ…。
即入院も「24時間安心」
明け方の午前5時。獣医師たちにつかの間の休憩が訪れます。
軽食を食べながら談笑する獣医師たち…しかし、息つく暇もなく緊急外来の電話が鳴り響きます。
運ばれてきたのは、発作の症状を起こしているチワワのモカちゃん(5)。
病院に到着してからも発作は治まらず、口から泡を吹いて危険な状態です。
獣医師2年目 小嶺詩乃さん:
普段飲んでいるお薬の、注射バージョン入れさせていただきますね。
てんかんの持病があるというモカちゃん。発作を抑える薬を投与、脳の興奮を抑え、入眠を促します。
獣医師2年目 小嶺詩乃さん:
ここまで(発作が)起きてしまっていると、すぐ入院下でお薬の追加とかしつつ、発作のコントロールを推奨する状況かなと思うんですけれど。
モカちゃんの飼い主:
分かりました。
神経系に異常をきたし、呼吸や心臓が止まってしまうという万が一のケースに備えて、モカちゃんは入院となりました。日本動物医療センターでは、集中治療室も完備。24時間体制で看護にあたっています。
モカちゃんの飼い主:
きょうは、たまたま(近くの病院が)やってない時間帯に発作が起きちゃったので。24時間(診察してもらえるのは)安心ですね。
家族の意志を尊重しながら
時間外料金がかかる夜間診療。しかし、家族の緊急事態に訪れる飼い主は後を絶ちません。
パジャマ姿で緊急外来に訪れた女性が連れてきたのは、犬のココちゃん(11)。
お腹に巻かれた包帯の下には、乳腺に大きなできものが…。以前から治療はしていたものの、突然、破裂し出血したといいます。
ココちゃんの飼い主:
なんか破裂しそうな感じの気配は、夜ちょっといやだなぁと思ってはいたんですけど…。
獣医師歴3年目 藤原正博さん(27):
まず、ちょっと緊急的な処置をとらせていただきながら、その中でまたできることだったりとか、相談させていただければと思いますので。
こらえられず、涙を流す飼い主。
避妊手術をしていないメス犬の場合、乳腺に腫瘍などができることが多いといいますが、ココちゃんは心臓に持病があり、「できもの」の切除手術には、命に関わるリスクが伴うといいます。
傷口を洗浄した上で消毒。さらに薬の塗布を丁寧に行います。処置を終え飼い主の元へ。
ココちゃんの飼い主:
手術をできない状態だから…しない場合、ココちゃんは…もう長くないんでしょうか。
獣医師は治療方針について、家族の意志を尊重しながら選択肢を提示します。
獣医師歴3年目 藤原正博さん(27):
ご家族様が選択された方法で、一番いい方法をご提案するっていうところを考えていくのが役割なのかなと思います。
『エンゼルケア』きれいな姿でお見送りを
緊急事態で訪れる動物たち。中には、救うことができない命もあります。
おなかが張って、ぐったりとした姿で運び込まれたのは、ウサギのエビちゃん(1)。
獣医師歴4年目 岩橋史奈さん(32):
体の中の血の巡りが少し悪くなってしまっていて、心臓のドキドキがゆっくりになっちゃっているんですね。なので、今そのドキドキを頑張れるような、お薬を入れさせてもらいました。
ウサギは換毛期に自分の毛を大量にのみ込み、消化管が閉塞することがあるといいます。酸素吸入器をつけ、点滴などの処置を続けますが…。
獣医師歴4年目 岩橋史奈さん(32):
心臓のマッサージをさせてもらって、心臓がんばってもらう薬をもう一度入れていきます。ただかなりですね、状況としては厳しいと思ってください、危ない。
頑張れエビちゃん、エビちゃーん、頑張ってね。できるかな…できるかなエビちゃん。頑張って、頑張って、頑張れ頑張れ!
必死に声をかけながら懸命の措置を行ったものの、最後は飼い主の腕の中で息を引き取りました。
中国からの留学生だというエビちゃんの飼い主。今年4月から飼い始め、1人暮らしの部屋で一緒に寝ていたといいます。
エビちゃんを胸に抱きながら、涙が止まりません。
エビちゃんの飼い主:
私がうまく…、お世話できなかったから病気になった…。
そして、息を引き取った動物たちは、愛玩動物看護師の元へ。
愛玩動物看護師は、診療補助や飼い主への助言などを行う国家資格で、「エンゼルケア」と呼ばれるペットの体をきれいにして、お見送りの準備をすることもあります。
愛玩動物看護師:
最後亡くなっちゃった子が、結構体が汚れちゃったりするので、お体きれいにして、なるべくふかふかにしてあげて。
ふわふわのきれいな姿になったエビちゃん。ケアの際に抜けた毛は袋に包み飼い主に渡します。飼い主はまだ目に涙をためながらも、「ありがとうございます」とつぶやき、病院を後にしました。
真夜中、ペットたちの命と向き合い続ける動物病院のスタッフたち。
獣医師歴3年目 藤原正博さん(27):
感謝の気持ちをいただけた時っていうのは、本当にやっていてよかったなというか、自分も心が温かくなる瞬間だなとは思うので、そういう場面を結構大切にしています。
(『サン!シャイン』 2025年12月15日放送より)
