ややもすれば食べ合わせが悪い物語を丸く収めてしまうマジカル!!

今回、「介護スナックベルサイユ」に訪れるのは、当然“ワケあり”の土木会社社長の本多伸夫(柄本明)と、新聞社で論説委員として活躍した飯田園子(かとうかず子)。

で、そのワケありのワケが導入から興味深くて…引き込まれて…なおかつ会話もオシャレで…ラストはおかしい…だけどそれが美しい…と思える珠玉のエピソード(公式ページに掲載されているあらすじを見てください?ほぼ、あらすじ書いてないですから。それほどの自信。書けばすべてがネタバレになってしまうから、あえて書かない!という自信!!)。

で、僕はこのドラマの視聴の仕方、スタイルをようやくつかんだような気がしたのです。

それというのも、僕が生まれる大昔(テレビ創成期?)は、今のような文字通りの“連続”ドラマばかりではなく、毎回異なるエピソードが短編で紡がれるオムニバスのドラマも多かったと聞きます(たぶん)。

で、この『介護スナックベルサイユ』は、そんな濃密なオムニバスの再現のようなもので、だけど、連続ドラマとしての体裁を保つために、ツッコミどころ満載の設定を用いているだけ…ツッコミどころ満載…それは、とてつもなく凝りに凝った、とも言い換えられるわけだけど、そんな作りこまれた設定(かつ、タイトル)を用いるからこそ、自然とさまざまな人情オムニバスが繰り広げられるという、そういうドラマってわけ。ね?ね?(誰に!?) 

いやそんな、僕の視聴スタイルとか、つかんだ!とか、そんなの実際問題どうでもよくて(そらそう)、この令和の時代に「土ドラ」という片隅枠で(片隅言うな!)、こんなにも上質なオムニバス人情ドラマが繰り広げられているという奇跡。

で、散々オムニバス!オムニバス!と言ってますが、これまで同様、今回も2人のお客さまが訪れて、そのふたつの濃厚過ぎるエピソードに挟まれる縦軸の連続要素…。

福祉タクシーの運転手・神代(杢代和人)のエピソードもなんだかとてつもなく社会性を孕(はら)んだエピソードで、こっちもずいぶん濃厚で、濃厚なオムニバスに加えて、濃厚な縦軸…。

濃厚に濃厚をサンドして、ややもすれば食べ合わせが悪い物語ばかり…だというのに、スナックのママ・まりえ(宮崎美子)が、ナレーションで「ま、そんなことはいいとして、次のお客さまは…」(そうとは全然言ってないけども)と、丸く収めてしまうというマジカル!!

あまりに濃厚エピソードのサンドイッチで胃もたれしかけそうになってるのに、その不思議過ぎるナレーションによって、すべてを奇跡的に融和させてしまう、それどころか、このドラマはまりえママによって支配されている!!とすら思わせる、俳優・宮崎美子の凄(すさ)まじさ。

うん、もう、次のエピソードが気になって仕方ないし、それを宮崎美子さんのまりえママにうまいこと収めてもらいたい!!