宮崎美子さん主演、土ドラ『介護スナックベルサイユ』は、魔法のワインを飲むと会いたい人に会えるという不思議なスナックを舞台に展開するヒューマン・ファンタジー。
<試写室>『介護スナックベルサイユ』第1話
突然ですが、2025年10月秋クールの、主なフジテレビ系ドラマのタイトルを見渡してみましょう。
『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』(月9)、『終幕のロンド ーもう二度と、会えないあなたにー』(月10)、『新東京水上警察』(火9)、『娘の命を奪ったヤツを殺すのは罪ですか?』(火ドラ★イレブン)、『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(水10)、『小さい頃は、神様がいて』(木曜劇場)、『介護スナックベルサイユ』(土ドラ)。
うんうん、そうだね…。おなじみのシリーズに、哀切感やわかりやすさ、センセーショナルだったり、詩的だったり、静謐(せいひつ)さもあり…と、うんうん、どれも素敵なタイトルだね?と来て、ラストの、介護・スナック・ベルサイユ…介護?スナック?ベルサイユ!?介護で?スナックで?ベルサイユですって!?介護?スナック?ベルサイユ!?(何回言うねん)どういう?どういうことなの?
介護×スナックがそもそも、そもそもなのに、それに加えてベルサイユでしょう。なぜ?なぜなの?なぜ、介護がスナックで、何の因果で、ベルサイユとか言ってんの!?
…と、今年3月にスペシャルドラマとして2週にわたって放送されてからというもの、そのタイトルの不思議さをずっと噛みしめ続け、いまだに咀嚼(そしゃく)完了できず、そんなこんな、相当なしこり(?)が残ったまま、まさかまさかの連ドラ版スタート!という衝撃に慄(おのの)いていたそこのあなた(っていうか、僕)。
いや、そんなスペシャルドラマすら何も知らず、唐突に、新秋ドラマ情報でこのタイトルに触れ、困惑してしまったそこのあなた。うんうん、どうかご安心ください。そんな邪念、そんな無駄な想像力は、ドラマ開始中盤過ぎに、強引に説得にかかってくるので、どうかご安心ください。それというのも「深く、考えすぎちゃダメ…それが、ここのルール…」。
う…うん…。ふ…深く…深く、考えてはダメ?…こ…この僕に(どの僕にだよ!)、深く考えるな、ですと?う…うぉぉおおおおおおーーーーーー!そ…それは、それは不可能。

だってだって、このドラマのあらすじってのがさ…。
元看護士から現役看護師、はたまた介護士資格を持ったスタッフが常駐している謎のスナックベルサイユ。そこへ訪れるお客さまは、大半が要介護認定を受けていて、血圧測ったり、点滴打ったり、リハビリなんかも当たり前。
なかには、誤嚥(ごえん)を防ぐためにビールにとろみをつけて提供しているお客さままでいる有様。で、その点滴ってのもかなり特殊で、ボトルキープのようにお客さま専用に調合された特別な点滴で、それを打つとたちまち元気になってしまう。
そんな不思議なスナックベルサイユでは、飲めば最期に会いたかった人に会えるという「SEE YOU IN MY DREAMS」なるワインがあり、それとともに思い出の料理…まさに最後の晩餐が用意され、それを求め毎夜、さまざまな事情を抱えた、死を目前にしたご老人たちがやって来る…。
「誰もが持つ大切な思い出に寄り添うファンタジー、いよいよ開店!(←公式から原文まま)」
ね?ね?すさまじくない?あらすじがもう、すさまじすぎない?まずもって、タイトルから咀嚼できてない、まだ味わう段階に入ってないのに、スナックでありながら看護師らが常駐とか、とろみビール提供とか、やって来るお客は要介護認定とか、なんだかとてつもなく怪しい点滴があるとか(しかもボトルキープ方式)、しまいにゃ会いたい人に会えるとか言っちゃってる謎ワインに(「SEE YOU IN MY DREAMS」というネーミングセンス!)、最後の晩餐…って、公式の謳(うた)い文句における“ファンタジー”の範疇(はんちゅう)に収まる気がしない。徹頭徹尾衝撃ワード連発のあらすじ。こ…これを、深く考えるなだなんて、不可能でしかありませんよ。
