大相撲九州場所で、ウクライナ出身力士では初の優勝を飾り、大関昇進を確実にした安青錦。その強みは、前傾姿勢でしつこく前に出る相撲。
どんな力士なのでしょうか?
『サン!シャイン』は安青錦関の“恩人”、関西大学相撲部コーチの山中新大さんに話を聞きました。
ウクライナから日本へ きっかけは?
ウクライナ出身の安青錦。本名は、ヤブグシシン・ダニーロさん、現在21歳。
まず驚くのは、日本語のうまさです。
安青錦関:
ちょっと自分が相撲をはじめたきっかけをお話ししたいと思います。
スポーツをやり始めたのは6歳のとき。最初は柔道を始めましたけど、正直に言うとあんまり楽しくなかったです。
勝負つくのが早くて、ルールもわかりやすかったので、これは面白いなと思って、お母さんが来たときは、柔道じゃなくてこっちをやってみたいなと思って、それが相撲との出会いですね。
初めて見たのが貴乃花関と朝青龍関の気合いが入った取組で、それを見てからいつか自分もプロになりたいと思ってそこからプロを目指し始めました。
6歳で相撲に出会った安青錦少年。
そして15歳の時、世界ジュニア相撲選手権でウクライナ代表として3位入賞。
この時、安青錦関に声をかけ、帰国後もメッセージをやりとりするようになったのが山中新大さんでした。
そんな中…ロシアによるウクライナへの侵攻が始まります。この時、安青錦関は17歳。18歳になると徴兵の可能性もあり、そうなると、夢だった力士になれないかもしれない…。そこで安青錦関は、当時、関西大学の相撲部だった山中さんにメッセージを送ったのです。
山中新大さん:
2022年3月8日、彼の方から「日本へ避難できますか?」っていうふうにメッセージが来て。僕の家族を頼って勇気を出してメッセージくれたんで、何かできることがあったらサポートしたいという思いがあって。
そして2022年4月に来日した安青錦関。
山中新大さん:
関西大学に、こういう子が来るっていうふうに相談したら、相撲道場もトレーニング施設も使用できるように大学側もすぐに動いてくださって、練習生として受け入れることができました。
山中さんの自宅に下宿しながら稽古に励んだといいます。
山中新大さん:
ヨーロッパの選手って強引な投げにいったり、本当にレスリングスタイルみたいな相撲が多いんですけど、彼の場合は本当にしっかり前に出ようとする意識があって、それこそ今と同じく上体が低く、前に落ちない相撲。
日本に来てからは、前に出る力を意識して、毎日練習してて。
来日から1年余り、ついに各界入りを果たします。
四股名は「安青錦新大(あおにしきあらた)」。「新大(あらた)」は山中さんの名前から取られました。
山中新大さん:
僕の下の名前を彼がつけるって決めたみたいで、特に事前に使うとか(連絡)はなかったので。
その後は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。
2024年11月に新十両昇進を決めると、2025年9月にはウクライナ出身力士では初となる三役・小結に昇進。
そして来日からわずか3年半あまり、関脇で迎えた今場所。横綱・豊昇龍と12勝3敗で並び行われた優勝決定戦を制し、初優勝しました。
山中新大さん:
今、前に出る力もついて、相手を起こすようになっているので、本当に彼の自分の相撲だと思います。迷いなく自分の相撲を取り切っているので。
大一番でも、得意とする低く前に出る相撲で挑んだ安青錦関。
安青錦関:
自分らしく下から相撲とれたらいいなと思って頑張りました。
まだもう一つ上の番付があるので、そこを目指していきたいです。
「相撲大好き」安青錦の素顔
来日後、相撲に全集中していたという安青錦関。山中さんによると、常にスマホで相撲の動画を見て研究していて、2人で並び布団を敷いて寝ていたが、動画を見てなかなか寝ない安青錦関に山中さんはちょっと困惑していたそうです。
トイレから「ハッケヨイ!」という声が聞こえてびっくりすることも!?
そんな安青錦関について、九州場所を取材してきた、相撲ジャーナリストの横野レイコ氏は…。
相撲ジャーナリスト 横野レイコ氏:
本当に明るくて真面目ですね。こんなに日本語のうまい外国人力士というか、流ちょうで発音がすごくいいと思います。会話の中でのちょっとしたウィットに富んだ冗談とかもセンスがあります。安青錦関の周りで笑顔が絶えないという感じです。
――土俵を離れたらどんな性格?
明るくて真面目なので、ばーっとはしゃぐということはないんですけれども、ジョークも言いますし。とにかく相撲が大好きなんです。来日3年ですけど、音楽は河島英五さんが好きとか、昭和の歌手じゃないですか。日本のことを知り尽くしてる。相撲のことも3代目若乃花、お兄ちゃんのビデオをものすごく見ているそうなんですよ。暇があると相撲の動画を見ていると。
初めて来日して親方がスカウトに行ったときも「安治川親方だ」というよりも「安美錦がいる!安美錦と一緒に車に乗っている!」という感じでものすごく“相撲オタク”ではあります。
――自分で動画を見ながら安治川親方とともに今のスタイルを作り上げていった?
安美錦関というのはけがで大関にはなれなかったですけれども、けがさえなければ大関になれたんじゃないかと思うファンも多くて、横綱キラーでもありました。その親方が大切に育ててきて、真面目な安青錦関は相撲界の分からないところとか何でも納得するまで2人で話し合うんです。
(『サン!シャイン』2025年11月24日放送より)
