信用ある著名人になりすまし、“偽の投資話”に誘導して金をだまし取る「SNS型投資詐欺」が急増しています。

警察庁によると、7月ごろから増え始め8月末の時点で今年(2025年)の認知件数は4700件以上、被害額は605億円以上となっています。
10月に入ってからも全国各地で高額な被害が相次いでおり、中には1億5000万円を超えるケースも…。

実際に、何者かが自身の動画を勝手に作り替え、SNS型投資詐欺に悪用されたと話すのは、経済アナリストの馬渕磨理子氏。

経済アナリスト 馬渕磨理子氏:
私と全く関係ない人が、私が過去に喋った動画を取り入れて、それを彼らが勝手に編集して、あたかも私がしゃべっているように、「これから株価が3倍になります」みたいな形でAI動画が作られている。やはりすごく驚きましたし、それによってだまされている方がいるということに、すごく心を痛めています。

さらに、馬渕氏によると、自民党・高市早苗新総裁の経済政策スタンスへの期待もあってか、日経平均株価が連日“史上最高値”を更新している今が、特に注意が必要な時期だといいます。

経済アナリスト 馬渕磨理子氏:
“高市トレード”といって、株に皆さまの関心が高くなって、周りが株によってもうかったみたいな話を見聞きしますと、やっぱり皆さん焦るんですね。
詐欺活動っていうのが盛んになると考えられます。そうした焦った心につけ込むようにおそらく広告を出してきたりとか、活動を頻繁にして、DMを送ってきたりとか、LINEに誘導したりってことを十分に考えられますので。

自身が詐欺に利用されたことについて、深く心を傷つけられたという馬渕氏…。

経済アナリスト 馬渕磨理子氏:
気持ち悪いですし、ショックですし、初めて見たときはこれまで自分が大事にしてきたものを全て奪い取られた感覚になりましたし、これによって被害を受けた方がいると思うと、夜も眠れないくらいしんどいですし、自分自身が存在しない方が良かったのではないかと思うくらい、結構追い詰められます。
一部まだ勘違いをされて、私にだまされていると思っている方から脅迫の電話がかかってきたこともありますので、身の危険を感じているので、防衛したりせざるを得なくなっている。

――広告に対して何か対応は?
広告を止めることができないんですね。X(旧Twitter)などでなりすましアカウントが100以上あるんですけど、それを通報することはできても、このように勝手に出てくる広告に対しては、対応が難しいです。

子供の学費も…未来への投資のはずが1000万円の被害

実際、どのような手口を使って詐欺に誘い込むのでしょうか。
『サン!シャイン』が取材したのは、SNS型投資詐欺で1000万円を超える被害にあったという、40代の男性。

政府がNISAなどを積極的に勧めていることを受け、投資に興味を抱くようになった男性が、将来に備えた資産形成のため投資先を探しているときに出会ったのが、SNSの広告でした。

1000万円を超える詐欺被害に遭った男性:
老後が心配っていうところもありますし、年金は私の世代では(多くは)もらえないっていうのがあったので、蓄えはあったほうががいいかなというのはありました。
Facebookの広告をみると、投資系の広告が増えてきたと。広告をクリックして、無料で勉強できるということだったので、そこで勉強しようかなと…それが一番のきっかけですね。

とある著名人が使われた広告を信じ、SNS上のセミナーなどに参加。
そこには、他の参加者たちから「利益目標300%ですか!?」「先生から投資を学ぶことができて本当によかったです!」と絶賛する書き込みがあり、男性も少額から試してみることに…。

詐欺被害に遭った男性:
10万円振り込んで、それがお試し期間1週間をやることによって、1万円ぐらいプラスになったんですね。その以降は、お金を入れてあげないと、継続出来ませんというふうに、いついつまでにって。そうすると、もうちょっとやってみようかなって。

その後も、100万、200万と振り込みを続けた男性。画面上では、利益がどんどんふくれていったといいます。

詐欺被害に遭った男性:
その時はもう、もう安泰。すごい宝くじを引いてしまったんだな私は、みたいな。ハッピーですね、ああ、もう働かなくていいのかなとか、ちょっとこう…よぎりますよね。

男性は、投資を始めて3カ月ほどで、合計1400万円を振り込み、ネット上の口座にあるとされたお金は、約4000万円にまで増加しました。
ところが、そのお金を使うために、1000万円を引き出そうしたところ、出金できない状態になったというのです。

詐欺被害に遭った男性:
出金ができなくなります、税金がこれぐらいかかります、手数料これぐらいかかります。600万出してくれっていうふうに言われ、そうじゃないと出金できませんと。で、目が覚めて。あ…これはもう詐欺なんだと。

結果、だまし取られた総額は1250万円。中学3年生だった子供の進路にも影響が出てしまいました。

詐欺被害に遭った男性:
私立の(高校の)内定が決まっていた状態だったんですよね。私立だとお金かかってしまうんで、辞退させてもらいたいと。子供ですけど頭下げてですね。やっぱ泣かれましたよね。

被害に遭った男性は、送金を繰り返してしまったことを「洗脳されているようだった」と話しています。

明星大学心理学部の藤井靖教授によると、通常、投資などが連続で成功することはなく、一度失敗したところで冷静になり、落ち着いて判断できるようになりますが、連続でお金が増えているように見えると、感情が歓喜している状態が続き、冷静な判断ができなくなってしまうそうです。

詐欺を見抜くためのポイントとは

手口が巧妙化し続ける“SNS型投資詐欺”。偽物の広告を見分ける方法はあるのでしょうか?詐欺や悪質商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏は…。

詐欺や悪質商法に詳しい 多田文明氏:
最近は動画というものも多いのですが、動画ですと“顔を出しているから”信じるという人が多いのですが、よく見ると口と言葉が合っていなかったり、日本語が少しおかしい部分があったりしますので、そういうところで気づくと。
あとは、「無料でもうかる方法を教える」ということは、まずあり得ないと思った方がいいですね。

谷原章介キャスター:
スマホの中に入っているものは、完全にまるまる信じちゃいけないと思いますし、もし入金するならその事業者がきちんと金融取引の免許を持っているかどうか、それが1000円でも1万円でもそうですよね。

詐欺や悪質商法に詳しい 多田文明氏:
事前に調べてから、お金を出すというふうなことをしなくてはいけない。

谷原章介キャスター:
例えばそれが金融の勉強の会だとしても、そこでお金を渡して運営をしてもらったら違法な行為になるということは、きちんと理解していただいたほうがいいと思います。

(『サン!シャイン』 2025年10月9日放送より)