止まらない物価高の中、“質店に品物を預けてお金を借りる”という人たちが増えているといいます。リユースショップや、リサイクルショップが増える中、なぜ「売る」のではなく「預ける」のでしょうか?
『サン!シャイン』は、質店を取材。モノを預けお金を借りる、“今どきの事情”が見えてきました。
食費とたばこ…お気に入りの腕時計を質に
川崎市にある「楠本質店」にやってきたのは、市内に住む70代の男性。
1年ほど前に中古で買ったというブランド品の腕時計をその場で外し、質入れの鑑定を依頼します。男性のお気に入りだという腕時計。希望額は6000円だといいますが…。
店員:
これは取れちゃったんですか?こういう石が付いていたと思うんですけど…。ちょっと厳しいと思いますね。
本来、腕時計に装飾されているはずの物がなく、店員も少し困った表情です。
査定中になぜ質店を利用したのか聞いてみると、急な出費がかさんだことで年金の受給日を前に足りなくなった生活費をまかなうため、この日、初めて質店を利用したといいます。
腕時計を質に入れた男性:
食費、食べないときついから...。あとこれ(たばこ)やるから、やめられないから。
査定の結果は、希望額の3分の1となる2000円。やはり、あるべき装飾品の一部がかけていたことと、盤面が少し汚れていたことが響いたといいます。
とはいえ、男性にとっては生活する上で必要なお金。
手にしたお金は『食費』に使うと話していましたが、査定を終えた男性に同行すると向かったのはコンビニエンスストア。
――何を買ったんですか?
腕時計を質に入れた男性:
タバコ2箱。(残り)1100円。
――残り1100円で今後の生活は大丈夫ですか?
いや今月だけマイナスだから、もうすぐ来月じゃない12月になれば年金が入るから。
年金受給日までの、ほんの少しのぜいたく。
通常、質店で借りられるお金は、リユースショップなどでの買い取りに比べ、安くなる場合も多いといいますが、なぜ男性は“質入れ”という形を選んだのでしょうか?
腕時計を質に入れた男性:
好きなものだからさ、なかなか売りたくない、死ぬまで残したいよね。
靴でもなんでもそう、好きな物を買ったから手放したくないし。
少しのぜいたくと食費のために質には入れたものの、大切な品。
男性は笑顔で、「腕時計は必ず迎えに行く」と話して去って行きました。
夫に先立たれ…生活費足りず
続いてやってきたのは、年金が少ないためお金が必要になったという70代の女性。
査定に出したのは、大手メーカーのワイヤレスイヤホンです。
イヤホンを査定に来た70代女性:
お金に困っているから。お金が足りなくなった時とか、年金が入るまでの間とかそういう時です。それ(物価高)も一番なんだけど、二番は年金が少ない。
今年、夫が亡くなって…、まだ2人のときには余裕があったんだけど、1人になったらガンッと1人分がなくなっちゃったわけよね、年金が、それで。
――このイヤホンは、ご自分のものですか?
いいえ、息子のです。いつでも使っていいよって預けられています、親孝行の息子で。
売るんじゃなくて預けるんです。それは、まだとっておきたいから、自分のところに。そのまま売るっていうわけじゃなく。
――基本は預けて、後日取りに来ると
そうそう、年金が入ったら引き取りにきます。だから、助かっています。ここがあって。
借り入れた額は7000円。次の年金受給日まで、生活費にあてるといいます。
年金だけでは生活できない。そんな高齢者たちが、思い出の品を手に質店を訪れているのです。
(『サン!シャイン』 2025年11月18日放送より)
