近年、外国人旅行者の増加などにより、日本の医療機関で治療を受ける外国人が増加しています。

今年(2025年)7月に公開された医師へのアンケートによると、回答した1029人の医師のうち約9割が「外国人の患者が増えている」と回答。

しかし、厚生労働省が行った「外国人患者の受入に係る実態調査」によると、回答した約9割の病院が、外国人患者の受け入れ体制を「整備していない」回答するなど、増加する患者に対して、受け入れの体制が整っていない状態が続いています。

『サン!シャイン』は、外国人患者に向き合う医療現場を取材しました。

受付も医師も英語で対応…それでも困惑することも

東京・日本橋にある「メトロポリタンENTサージクリニック東京」。
この日、診察に訪れていたのは、システムエンジニアとしてマレーシアから来日している男性。鼻炎の手術を受けるといいます。

男性と流ちょうな英語で、手術の打ち合わせをするのは、東家完院長です。

「手術中のBGMもリクエストできますよ」と終始なごやかなムードで話は進み、男性も笑顔。最後には握手をして診察室を後にしました。

東家完院長:
海外の方というのは日本に不慣れですし、雑談から入ってその後徐々に核心の症状についてお聞きして、検査を進めていくというケース多いです。
しっかりコミュニケーションを取っておくことで、相互理解が足りなかったということにはならない。

「メトロポリタンENTサージクリニック東京」では、受付にも英語が話せるスタッフを配置。外国人患者の緊張を解き、意思疎通を図ることでその後のトラブルも防ぐことができるといいます。

――外国人患者の割合は?
東家完院長:

ここ1年で10倍程度に増えていると思います。トラブルや文句というのは幸い経験することはほとんどありません。

しかし、これほど対策を行っても、時には術後の注意点を守ってくれないなど、困惑することも少なくありません。

東家完院長:
鼻の手術、鼻の中にこういう止血剤を入れたりする。止血剤を入れて数日後に取り出すんですけど、取り出すまでは鼻かんじゃダメだよって言っても平気でかんだり…。

英語でのやりとりに苦慮

一方で、英語でのやりとりに苦慮するクリニックもありました。
千葉・浦安市の「浦安ツバメクリニック」にやってきたのは、来日してから9カ月だというアメリカ人夫婦。

医師の診察が始まると、初めのうちは英語で問題なくやりとりを行っていましたが、「UIBC」という血液中のある成分を示す数値の話になったとき、医師が頭を抱えました。

坂井正弘院長:
UIBC、UIBCとは…。うーんとね、これは難しい。

専門的な医療用語は説明も困難。パソコンを使って、コミュニケーションを図ります。

坂井正弘院長:
やっぱりちょっとうまく聞き取れなくて、ニーズがちょっとつかめていなかったりとか。
本当は、全部(英語で)話せればいいんでしょうけど、医学的な病態の説明だったりとか、検査値の意味合いを説明するのって、個人的にもそれを英語で説明するというのは経験がないので。

診療後、医師の対応について感想を聞いてみました。

日本に来て9カ月 エドワードさん:
医師はとても敬意を持って接してくれました。プロらしく接してくれたことに感謝しています。

――説明は理解できましたか?
私は日本語がわからないので、少し難しいです。
私がしてほしいことを理解してもらえるか…、こちらも理解できないのではないかという不安はあります。

外国人患者の未払い問題

外国人患者の増加によっておこる問題は、“言葉の壁”だけではありません。

厚労省の調査によると、2024年9月1日~9月30日の調査期間中に外国人患者を受け入れた実績のある病院のうち、16.3%(470病院)が未払いの被害に遭っており、1カ月でひと病院あたりの未払い総額は平均49.8万円。1件あたりの未払い額の最高は1187万円でした。

20年前から、外国人の患者対応に取り組んできた、りんくう総合医療センター・国際センターの南谷かおり医師も…。

南谷かおり医師:
やはり最初の頃は慣れていないものですから、こういうことが起こっていましたね。
日本は後払い制度なんですが、海外の場合は先にいくらぐらいかかるとか、費用の概算を伝えたりするんです。なので、患者さんも大体どのくらいかかるのかとか、例えば支払えない場合はお互いに話し合ってどこまで治療するかとか、そういうことをするのですが、日本は全部、皆保険制度でカバーされるようになっていますので、普段からそういう話をしないですよね。

スペシャルキャスター 武田鉄矢氏:
日本の事情を旅で来られる方もわかってほしいですよね。日本には日本独特の習慣がありますので、病院もその手のことを説明してもいいんじゃないですかね。

谷原章介キャスター:
でも、こちらが押しつけるだけでも駄目ですから、やはり歩み寄りですよね。
せめて、お金を回収することができないのを回避するためにも、例えばパスポートを登録するとか、クレジットカードを登録したりはできないんですか?

南谷かおり医師:
一応、国もそういう未収金に対しては対策を講じていまして、厚労省の方で、例えば未収金が20万円以上発生した場合は、国に報告すると、次に入国しようとしたときにビザの発行を難しくするとか。そういった対策は講じていますが、なかなか…二度と来ない人もいるかもしれませんし。

谷原章介キャスター:
外国の方だって困っている人がきちんと治療を受けるのは当然なことだと思うんです。ただ、国がこれだけインバウンドだと行って外国の方を呼び込むのであれば、医療の方も外国人の方が受けられるような態勢を整えてほしいと思いますよね。

(『サン!シャイン』 2025年10月1日放送より)