シニア世代の起業家が増えています。
2024年に設立された法人の中で、代表者が60代以上の割合は18.6%と、2000年以降で過去最高に。

シニアの起業支援を行う「銀座セカンドライフ」の片桐実央社長によると、「老後も社会とつながりがほしい」という気持ちや、「老後に対する不安」などが、増加の理由ではないかといいます。

『サン!シャイン』は、新たなスタートを踏み出した2組を取材。シニア起業の実態に迫りました!
孫のための洋服作りが仕事に
山梨県昭和町にある、洋服のお直しの店を経営するのは、谷田部真弓さん(70)。

お店の開業にあたって、テナント探しから、事業計画、銀行の融資など一人で行い、2024年の12月に個人事業主として起業しました。

谷田部真弓さん(70):
朝から晩までのお掃除から閉めまで、全部一人でやっています。

バリバリ仕事をしてきたのかと思いきや…、谷田部さんは元々は専業主婦。
50代で孫に恵まれ、共働きの娘夫婦に代わって、よく世話をしていたといいます。

谷田部真弓さん(70):
私が全部(孫2人の)洋服を作って、小学6年生まで作ったもの着ていました。上から下まで全部。
孫ちゃんたちの手が離れると、やっぱり自分の手も空いちゃうので、じゃあ何をするか、っていう時にたまたま求人ですよね。

孫の服作りがきっかけで洋裁好きになったという谷田部さん。孫育てが落ち着いた63歳の時に、洋服お直しの大手チェーン店でパートタイムとして働くことに。
しかし、67歳のとき“ある事実”に直面します…。

谷田部 真弓さん(70):
(定年)退職が70歳っていうことがわかって、70歳…あと3年しかないじゃん、みたいなことを思ったんで、すごくそこで悩みました。
老後…70歳で終わって何するのっていう時に、何もないじゃないですか。働かせてくれるところもないし、じゃあ、自分でやるしかないって思いました。

こうして、70歳の定年を前に開業を決意。3年間にわたる入念な準備に取りかかりました。
まず、行ったのは地元の商工会が主催する起業家のための勉強会に参加。開業資金の工面にも奔走しました。

谷田部 真弓さん(70):
地元でいう大手の銀行にまず、一人で相談に行きましたね。「私に融資できますか?」って。即答はもらえなかったですね、ヘヘヘ。

そこで、商工会と相談し、事業計画書を作成。県が行う、シニア向けの低金利での融資支援も利用したといいます。

こうして、2024年の12月、無事に自分のお店を開業。
「スピード」と「価格」をセールスポイントに、大手チェーン店だとお直しに数日かかるところ、谷田部さんのお店では、その場で少し待ってもらい仕上げることも。

さらに、1人で運営しているため人件費はかからず、大手より2割ほど安い価格でサービスを提供しています。

そんな努力もあって、開業から半年ほどで黒字化に成功。当初は月に40人程度だったというお客さんも、今では120人を超えるようになりました。

谷田部 真弓さん(70):
売上的には、お家賃が払えて、経費(精算)ができて、自分のお給料もいただけるって感じですかね。充実していますよ、もう本当に。自分のお店を持てたっていうことは最高の財産ですよね。
70歳の今も、一人で何でもこなすことができる谷田部さんですが、心の支えとなっているのが、大きくなった孫たちです。

孫は大学で経営学部に通い、経営について勉強中。そんな、かわいい孫たちの手本になることが、谷田部さんの原動力になっているといいます。

――うれしそうですね。
谷田部 真弓さん(70):
そうですね、跡継ぎがね。
コンテストでW受賞「自分で作ってしまおうと」
様々な形で起業を目指すシニア世代に対して、国や自治体も支援を始めています。

日本政策金融公庫では、55歳以上を対象に融資を実施。東京都も55歳以上向けの創業サポート事業を行っています。

さらに東京都は、シニア起業の後押しを目的に、毎年、55歳以上を対象とした「ビジネスプランコンテスト」を開催。
2025年1月のコンテストで、見事、グランプリとオーディエンス賞のW受賞に輝いたのは、東京・中央区に住む57歳の直井美穂さんでした。

お祭り好きをターゲットにした、お祭り関連アイテムの専門ショップ「日本橋丸直商店」をネット上で経営している直井さん。お祭り用品を販売しようと思ったきっかけは…。

直井美穂さん(57):
実は夫が無類のおみこし好きでして、それで好きが高じて、このお仕事を始めました。

夫の人士さんは、幼いころからみこしが大好き。人士さんが欲しいものなら、他の人も欲しがるのでは?と考え、ネット販売を始めたといいます。

夫・人士さん(51):
うちでオリジナルというか、他のお店とかでないものは、こういう「ももひき」をですね、ストレッチ性の素材にして。あとズボン式にしました。
みこしを担ぎ、激しい動きにも耐えられるストレッチ素材を採用した商品を開発。
さらに、帯や小物などに、今風のオシャレなデザインを加えた、オリジナル商品も販売。みこしを担ぐ人が喜ぶ機能性と、他にはないデザインで“粋な着こなし”を提案しているといいます。

夫・人士さん(51):
こういうものがあったらいいなっていろいろ探しても、あまり売っていなかったので、であれば自分で作ってしまおうと思って作っちゃいました。

会社は現在、夫婦2人で経営。もちろん一緒に働くのは初めてです。

2024年6月に起業してから1年余り。
来年(2026年)2月には、お店もオープン予定と、事業も軌道に乗ってきた2人に、第2の人生を決断した時の心境…そして、気になる現在の収入を聞いてみました。

夫・人士さん(51):
月商がだいたい300万~400万円くらいですね、今、平均で。本当に右肩上がりでうまく行き始めているので、自分でもビックリしていますけども。
そんな直井さん夫婦が考える、シニア世代での開業とは?

直井美穂さん(57):
50歳ってまだまだ余生を過ごすには長すぎるって思うんですよね。一歩踏み出してみると二歩目三歩目ってスムーズに出るなって。

夫・人士さん(51):
これ勝手な僕の夢なんですけども、自分のビジネスなので定年はないじゃないですか。
日本橋人形町のお店前で江戸前の服を着て、粋な服を着て、店の前でお茶を飲むっていうのが、僕、夢なので。おじいちゃんになって。
あとは、ずっと死ぬまで仕事をしているっていう感じかなって思っています。
(『サン!シャイン』 2025年9月11日放送より)