市街地でのクマによる被害が、各地で急増しています。
環境省によると、今年(2025年)1月から5月のツキノワグマの出没件数は、全国で3700件以上と過去最多のペースで推移。

そのうち出没件数が792件と、もっとも多いのが岩手県です。
7月4日には、岩手県北上市で81歳の女性がクマに襲われ死亡。周辺でも被害が相次ぎました。

クマ被害に遭った女性(78):
クマが田んぼのあぜを歩いているのが見えたんで、「あ、クマだ!」ってみんなで見たら。

『サン!シャイン』の取材にそう話すのは、8日の早朝に、クマによって自宅の倉庫を荒らされたという女性。家族が撮影した映像には、隣の畑で何かを探すように歩き回るクマの様子が捉えられていました。

クマを目撃した後に、自宅の倉庫を確認すると、2台の保冷庫の一つは倒され、もう一つはこじ開けられたような爪痕が残っていました。

クマ被害に遭った女性:
これ(保冷庫)がガバッとひっくり返されてて…。ここ(扉)に爪を入れられて、ここも壊されちゃって。

クマ侵入後に撮影した写真 保冷庫が倒され床にはコメが散乱している

保冷庫の中にはコメ袋が入っていましたが、クマが食べたのか、袋にはキズがつき、周囲にはコメが散乱していました。

被害はこれだけはありません。倉庫が荒らされた日の夜、警戒のために倉庫につけていた鈴が突然鳴りだしたのです。

クマ被害に遭った女性:
ここに鈴をつけて吊るしていたの。クマが来て入ろうとしたら鈴が鳴るから、「クマだ!」と思って。ドンドンドンドンたたかれて、ものすごく中に音が。

再び現れたクマは、車庫のシャッターを激しく揺らし、シャッターの横にできた隙間から倉庫に侵入。

家族が通報し警察官が現場に到着した時も、クマは倉庫内にとどまっており、その後逃げていったといいます。

クマ被害に遭った女性:
まさか、民家にね…(シャッターを)突き破って中に入るというのはびっくりした、本当に。夜来たときは、シャッターとか、鈴をたたくから、外には出られない。

「クマと目が…」民家や学校にも出没

6月1日から7月9日までの間に、岩手県北上市和賀町周辺では12カ所、15件のクマによる被害が報告されています。

7月6日に自宅の敷地内に侵入してきたクマと「目が合った」という80代の男性は、そのときの恐怖をこう話します。

窓の外にはクマの姿があり、こちらを見ていたという

自宅の敷地内にクマが侵入した男性:
電話をかけていたら、「何か音するな」って感じたんですよ。
フッと見たら(窓の外にクマが)立っていて。うわっ!て思って、そしたらクマが私の方を見たんです。目がバッチリ合いました。(そこで)「おらっ!」て叫んだんですよ、そしたらクマが逃げていきました。

窓ガラス一枚隔てた距離で、クマと向かい合うことになった男性。そのときは大声を出して撃退することができましたが、クマは翌日も姿を現し、保管していたコメを食べてしまったといいます。

クマの目撃情報は、車で30分ほど離れた、北上市の市街地でも…。
6月27日、高校の敷地内にクマが出没。当時、校舎内には多くの生徒がいました。

専大北上高校 事務職員 渡辺一平さん:
クマがちょうど芝生のところにいたのですが、あちらに向かって走っていく姿が…、駐車場のところをかいくぐって出ていった。大きくて迫力あって、怖いなって印象は持ちました。

校内の防犯カメラには、門から入った後に、駐輪場付近を徘徊。その後、校庭横の芝生を走る様子が映っていました。けが人などはいなかったということです。

なぜ北上市でこれほどクマの出没が相次いでいるのでしょうか?パトロールを続ける地元の猟友会の鶴山さんは…。

わなの準備をする鶴山さん

和賀猟友会 鶴山博 会長:
冬眠から覚めたクマが、餌がないと。こういうふうに家に入られてという被害はないですね、今まで。(山に)餌が残っていれば食べたと思うんですけど。

また、クマの生態に詳しい森林総合研究所の大西尚樹氏によると、「今の時期はクマの繁殖期。メスを求めてオスが活動的になり、行動範囲が広くなることで市街地に出てくることがあり、また、夏はエサが少なく、木イチゴなど求めて人里に出てくる」ことがあるそうです。

(『サン!シャイン』 2025年7月11日放送より)