6月30日、全国で真夏日は634地点、35℃以上の猛暑日は118地点と、いずれも今年最多を記録しました。

総務省消防庁によると、6月16日からの1週間で、熱中症による救急搬送は全国で8603人。これは、去年の同じ時期と比べて約5倍の数値。今年の6月がいかに異常な暑さだったかを物語っています。
これから夏本番を迎える中、医師が警鐘を鳴らすのは「熱中症に似ている」という別の危険な症状です。

埼玉慈恵病院 藤永剛副院長:
夏の暑い環境で夏になると血液がドロドロしてきて、流れが悪くなって、流れが悪くなると血のかたまりができやすくなりますね。それが血管を塞いでしまって起こる症状が「夏血栓」ですね。

「夏血栓」とは、夏に起こりやすい血栓(血のかたまり)による病気や症状です。
脱水などにより体内の血液がドロドロになり、血のかたまりができやすくなり、脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓などの病気を引き起こします。
若くても発症するリスクがあり、30代以上は要注意だということです。
夏血栓で命の危険も
『サン!シャイン』は去年の夏、“夏血栓”で命の危険に直面したという50代男性に話を聞きました。

去年「夏血栓で脳梗塞」と診断を受けた 細川博司さん(51):
(当時)友人と一緒に倉庫の整理をしていて、その時になんか、やたら汗かくし、体が冷たいというか、力入らなくて歩行もままならへんみたいな感じになって、まさに熱中症やと思いましたね。
ベッドから起きようとしたら、右手右足に力が入らなくて、無理やり立ったんですけど(体の)右側が動かなくてバターンって倒れてしまったんですよ。
そのまま意識を失いましたが、数時間後には少し動けるまで回復。しかし…。

細川博司さん:
どうも口の右側も動きが鈍い、その様子を見て母親がちょっと気づいて「あれ?あんたおかしいな」ってなって、慌てて救急119に連絡してくれて。
CT撮られたら「血栓ができてます」と。1cmの結構でかい血栓ができていて、これはすぐ入院が必要ですってそのまま集中治療室に入れられて。
(医師から)「まひは残るかもしれません」って言われました。ちょっと指先がうまく動かなくなるとか…。
男性の頭には1cmほどの大きな血栓。診断は“血栓による脳梗塞”で、2日間、集中治療室で治療したといいます。
男性はその後、投薬などの治療で回復。幸い、後遺症もないといいます。

細川博司さん:
熱中症やからほっときゃ治るだろうって(自分自身が)思っていたのは怖いなって思いました。たぶん1人だったらそのまま家でいわゆる孤独死をしていた可能性もあるんちゃうかなって思います。
命をもおびやかす危険のある“夏血栓”。暑い夏のリスクに私たちはどう備えるべきなのか?
埼玉慈恵病院・藤永剛副院長に解説していただきました。
夏血栓と熱中症

夏血栓と熱中症は、だるさ・吐き気・意識もうろうなど、初期症状が似ていて見分けがつきにくくなっています。
異なる症状としては、
熱中症…発熱・大量の汗、筋肉痛・こむら返り
夏血栓…胸痛・呼吸苦・言語障害・片方の手や足のしびれなど
酒主義久アナウンサー:
見分けるポイントはどういうところなのでしょうか?

埼玉慈恵病院 藤永剛副院長:
例えば一つ、力が入りにくいという状態になって、脳血栓、血栓が頭にできた場合は、片方だけ症状が出る変則性のことが多いので、そこが一つの判別ポイントですね。
例えば、両手を上げると片方だけが下がってしまうとか、それぐらいでも判別になります。

藤永剛副院長:
夏血栓には怖い落とし穴があります。
夏血栓は、頭に起きたら最終的に脳梗塞になるということです。
だけれども、一過性に起こる一時的な脳梗塞に似た症状というのがあるんです。
TIA(一過性脳虚血発作)といって、一時的な血栓の詰まりです。
これは血栓が自然に溶けたり飛ばされたりすると、症状(片方の手や足のしびれ、まひなど)が数分から数時間で治ってしまうので、その後医療機関を受診しないで様子を見てしまう方も意外と多いんですね。
でも実は、脳梗塞の前兆でもあるので、その症状があったら必ず医療機関を受診していただきたいです。
“魔の時間帯・曜日”

心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高い“魔の時間帯”は、朝6~10時です。
朝起きて1時間から2時間後は自律神経が活発に活動を始める時間帯。交感神経が働きすぎると血管が収縮して血行が悪くなり血栓ができやすくなります。
藤永副院長によると、朝は一日で一番脱水症状になっていることも理由の一つだといいます。
さらに、要注意なのが月曜日です。

藤永剛副院長:
月曜日ってストレスや生活リズムの乱れがあったり、あるいは土日にお酒飲みすぎたりして脱水気味になっている方もいらっしゃいます。
ストレスそのものは血栓を作りやすくするんです。ストレスがあると交感神経にスイッチが入りすぎちゃって、心拍数が上がり血圧も上がり血管は収縮して血行も悪くなります。
また、ストレスホルモンは血液を固まらせやすくするので、それも血栓を作りやすい原因の一つになります。

藤永副院長がおすすめする夏血栓の簡単な予防法があります。
朝・昼・夜にかかとを10回上げ下げする運動です。
立ってやるのが難しい人は座りながらでもOK。

藤永剛副院長:
不安定な方は机などに手を添えても大丈夫です。
筋肉を動かして筋肉を収縮させてほしいので軽い負荷でも意味があります。
(『サン!シャイン』2025年7月1日放送より)