いまだ高止まりが続いている、コメの価格。
全国のスーパーで扱われた最新のコメ平均価格は、5kg4312円と、過去2番目の高さとなりました。
コメ価格の高騰を受けて、国民食として愛される「カレーライス」にも影響が出ています。
帝国データンバンクが11月に発表した、原材料や水道光熱費をもとに独自に算出する
「カレーライス物価」。
1年前と今年9月を比べると、肉や野菜の価格は微増にとどまっていますが、ご飯は約50%アップとなる、1食あたり193円に。
10月には、カレー1食の値段は460円を突破し、過去最高の水準になると予測しています。
消費者:
1週間お米を食べない時もありました。代用する物がありますから、パスタとかパンとかうどんとかおそばとか。
東京・板橋区にあるスーパーマーケット「マルヤス高島平店」では、コメ価格高騰により新米の売れ行きが悪いことから、やむを得ず、11月下旬から約400円の値下げに踏み切りました。
マルヤス高島平店 堤 諒太郎 店長:
お米の高騰が影響で、例年よりも新米の売れ行きがちょっと下がっている状況ですね。
売る側・買う側どちらにも負担を強いられる中、高市政権は補正予算案に物価高対策として、自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」に2兆円を計上。
そのうち、約4000億円が食料品への価格高騰対策として確保されています。
具体的な使い道は自治体に任されていますが、農水省が支援策として推奨している方法のひとつが、今、話題の「おこめ券」 。
農水省は、独自の政策として10月下旬から「おこめ券」を配布している板橋区の事例などを参考に、自治体向けの説明会を実施。「おこめ券」の活用を積極的に呼びかけていますが、それに対して真っ向から「おこめ券は発布しない」とSNSで発信しているのが、大阪府交野市の山本景市長です。
大阪・交野市 山本景市長:
(おこめ券)私はもちろん反対です。
まず経費率が高い、おこめ券を発行する場合、発行するための経費が約12%かかりますし、それを郵送とか必要なので、そこにも高い経費がかかると。従ってトータルすると高い経費がかかる。
おこめ券は1枚500円で一般にも販売していますが、経費として60円が引かれ、購入できるコメは1枚あたり440円。
そのため交野市では、おこめ券の代わりに、経費がほとんどかからないという「上下水道基本料金の免除」や「給食費の無償化」に交付金を使用する考えを示しています。
さらに、山本市長は「おこめ券」の別の問題点も指摘…。
大阪・交野市 山本景市長:
おこめ券自体を発行しているのが、実質的には2団体なので、かつ農水省と関わりが深いところなので、物価高騰と言っていますけど、実質的には単なる利益誘導ではないかと思っています。
経費がかかる「おこめ券」を、農水省が物価高対策として推奨するのは、あまりも利害関係がありすぎると思う。
このような「おこめ券反対論」に対して、鈴木農水相は「各自治体においてできる限り負担感が少なく速やかな実施がおこなわれる方法を選択して進めていただく」と回答しています。
また、農水省は交付金を利用したおこめ券について、早期の利用を促すため、「使用期限」を設ける方向で調整していることが、新たに明らかとなりました。
どうなる「おこめ券」コメ高騰対策の打つ手なし?
コメ価格の高止まりで消費者が苦しむ中、やまない「おこめ券」論争。
流通経済研究所の主席研究員である折笠俊輔氏は、政府がおこめ券を推奨する理由について、こう推察します。
流通経済研究所主席研究員 折笠俊輔氏:
ぶっちゃけて言うと、農水省的に他にもう…金券がないんです、農水系の。
コメの高騰対策を考えたときに、言っちゃうと「おこめ券」ぐらいしか打つ手がない。今更備蓄米出すわけにもいかないですし、というのが現状なんだと思います。
コメの現物給付よりは時間がかからないと思うのですが、そもそもおこめ券は年間何億枚も出ている券ではないので、多分追加で刷るのは大変だと思います。
――利益誘導の可能性については?
そういった意味ではあまりないというか、利益誘導というよりは、農水省として「おこめ券」ぐらいしか打つ手がなくて、変な言い方をすると、何も考えずおこめ券と言っているだけな気がします。おこめ券くらいしかないのが正直なところ。
――1枚500円のものに60円(12%)の手数料がかかることについては?
普通の金券として考えると(経費が)12%というのは高いですよね。
もともとギフト用につくられた仕組みなので、今回のような生活支援みたいなところに使われるのを考えると、割高な感じになっちゃいますよね。
交野市長の話にもありましたが、実際には事務局を自治体に設置する費用、郵送する費用とコストがさらに追加される部分もあるので、より割はよくないですよね。
実際に2025年10月までに「おこめ券」を配布した、兵庫県尼崎市を例に見てみると、予算約8億5000万円のうち、約2億3000万円が窓口設置や郵送費などに当てられ、そこからさらに「おこめ券」の経費が差し引かれ、市民に届いた金額は、5億5000万円にとどまりました。
谷原章介キャスター:
3割近くが手数料で消えていくじゃないですか、そう考えると、使い勝手や手数料、スピード感を考えると、現金の方がいいとは思うんです。
スペシャルキャスター カズレーザー氏:
(おこめ券が)加盟店制度ではないなら、そもそも今までおこめ券に対応していなかったところ、対応する店舗も多分増えると思うんですよ。それって、今まで見たことがないものが急に流通して、管理も難しいとなると、偽造とかやり放題にならないですか?
流通経済研究所 主席研究員 折笠俊輔氏:
その辺までいくと分からない。偽造の可能性もあるし、金券ショップに大量に流れる可能性もある。そういった意味では、管理はめちゃめちゃ大変なんですけど、どこまで管理しきれるかという課題も出てくると思います。
谷原章介キャスター:
実際におこめ券が配布されて、家計の助けになることは間違いないと思うんですが、何かモヤモヤするよね、このおこめ券の問題って。
10割税金がかかったうちの7割くらいしか結局は国民に還元されないっていうのはちょっと効率が悪い気がしますね。
カズレーザー氏:
交野市長の水道料金減額、確かにすごく即効性もあるし、全員共通だなという意味では理にかなっている気がするし。だとしたら、国が国民全員に同じ額だけ減税なり還付をしたらいいなと思いますね。
お米が本当に特別なら、現物を渡したほうがいい。でもそんなにお米が特別じゃないという人も結構多いと思う。
(『サン!シャイン』 2025年12月5日放送より)
