眠らない街、新宿・歌舞伎町。そのすぐそばにあるのが、「患者を断らない」を理念に24時間365日、急病の患者らを受け入れている春山記念病院。

都内の救急出動件数は3年連続で過去最多を更新。2024年は93万人を超えました。

1年で最も搬送が多くなるこの時期。『サン!シャイン』は繁華街ならではの患者が続々と運ばれてくる病院で救急医療の“最後の砦”として最前線で奮闘する、医師と看護師たちに密着しました。

落ち着くのは「一瞬」

11月24日、3連休の最終日。午前11時ごろ、運ばれてきたのは、歩行中に転倒し、右眉のあたりに深さ2cmの傷を負ったという80代の男性。
男性は5針を縫うことになりましたが、ほかには異常は見つかりませんでした。

年末年始が近づき、搬送が増えるという患者。特に12月は救急出動件数が多くなります。

休日のこの日、院内が落ち着いたのは正午ごろ。副院長の藤川翼医師が「今一瞬だけだと思いますよ」と語る中…また電話が鳴ります。

57歳男性 飲酒後に自転車で転倒

〈午後4時 密着開始から7時間〉

歌舞伎町に近いということもあり、夜が近づくにつれ増えてくるのが飲酒後の事故やトラブルによる救急要請です。

隊員「57歳の男性です。本日13時から飲酒後、帰宅途上に自転車で転倒いたしまして」

この男性は友人と酒を飲んだ後、自転車に乗り帰路に。途中で転倒し、その際に割れたメガネで目の近くを切ったといいます。男性は8針を縫うこととなりました。

男性:
(メガネが)こんな感じになっちゃって。これで血が出て、通りかかった方に本当にお助けいただきまして、本当にありがたかったなと思います。
(この後)どうも警察…警察に行くことになるんで。

取材スタッフ:
飲酒運転的な感じになるんですか?

男性:
いやちょっと分かんないです。

「記憶がない」と話す20代女性

次に病院にやってきたのは…。

看護師「本当だ。どういうこと?」

医師「どういうこと?まじで。記憶がないんだって」

「記憶がない」と話す女性。一体、何があったのでしょうか?

女性:
お風呂上がりにのぼせてそのまま倒れた感じです。
頭も・・・体もぶつけた感じですかね。記憶は断片的にない感じで…。

女性はすぐさまCT検査に。

医師「頭の中に出血はなかったです」

女性「よかった」

医師「もしかしたら頭をぶつけちゃった影響で脳振とうとかになっちゃってるかもしれないね」「記憶は無理に思い出そうとしても思い出せないと思う。基本的には様子を見るという形になっちゃう」

幸い、脳に異常は見つかりませんでしたが、額には大きな傷が。女性は20代、気になるのは“傷跡”です。

医師「縫ってもいいような傷だけどどうする?」

女性「えーーー」

医師「麻酔して何針か、数針だと思うんだけど2~3針かな。もうちょっとかな」

女性「どっちの方が傷は残らないですか?」

医師「縫った方が傷は寄ると思う。テープの方が固定力は弱いから」

テープで止めるか、針で縫うか。悩んだ末に、女性は3針縫うこととなりました。
ひっきりなしにやってくる患者に対し、手際よく治療を施していく医師。

藤川翼医師:
似たような患者さんを散々見てきているから、慣れっていったらおかしいですけど、分かるようになってきましたね。

咳や高熱を訴える20代ギリシャ人女性

インフルエンザの患者数が警報レベルに達している都内では、咳や高熱を訴える外国人観光客の姿も。
ギリシャから来た20代の女性は「インフルエンザA型」と判明。翻訳アプリを使って、慣れない吸入タイプの薬についても説明しながら、やりとりします。

翻訳アプリで外国人観光客に説明する看護師

看護師「息を吐いて思いっきり吸ってください。ストップ!ソーリー。OK」

ギリシャ人女性「私は血管がかなり細いので、点滴の際はよろしくお願いします」

医師「ここね、細いのね、OK、OK」

カップラーメンにジンクスが…?

年齢、国籍を問わず、様々な症状で搬送されてくる患者たち。
食事休憩も、わずかな隙を見つけて取るしかありません。

看護師「私は今日はゆで卵です(笑)。ゆで卵を吸うように。麺はダメだからね」

看護師「麺は食べられないですね」

看護師「カップラーメンにお湯を入れると電話が鳴るんです。だから3分でできても食べられない。救急車が来ちゃうので」

処置室に笑いが起きたのも、つかの間。すぐに電話が鳴り、緊張が走ります。

医師「もげた…?」

看護師「骨まで見えた?えっと…」

「骨まで見えた」40代男性

午後11時過ぎ、歩いて病院にやってきた男性。「骨まで見えた」とは、どんなケガなのか?

男性(40代):
フットサルやっていて、ゴールキーパーをやっておりまして、その時におそらくですけど、来たシュートを止める時に指が。最初、突き指をしたと思っていて気にしてなかったんですけど、ふと見た時に指がこういうふうにこっち(横)にいってちょっと骨が見えていて、ちょっと慌てて勢いで、ぐっと元に戻したんですよ。

フットサル中の大けが。すぐさま小指の傷口を縫い合わせる治療を開始。3分ほどで縫合は無事完了しました。

男性の治療中、別の受け入れ要請が。

看護師「通行人から駅員さんに通報が入ったってことですか?少々お待ちください。先生、飲酒酩酊、19歳です」

運ばれてきたのは、酩酊した19歳の女性でした。

隊員「19歳の女性の方です。飲酒後おう吐ですね。本人談なのですが、19時ごろから飲酒。ウーロンハイを飲まれて杯数は不明です。22時ごろ新宿駅で暴れていたところ警察官が保護。警察署内でおう吐を繰り返していたため、警察署からの救急要請になります」

医師「分かります?ん?わかる?気持ち悪いかな?」 

女性「ウーロン茶とウーロンハイ、間違えちゃった。飲んじゃった…未成年なのに」

間違えて酒を飲んだと弁明する女性。おう吐を繰り返しているため、点滴を打つことになりました。

全身傷だらけの30代女性

朝が近づくにつれ、一層、混沌を極める院内。

〈午前8時 密着開始から23時間〉

救急車で搬送されてきたのは、飲食店勤務の30代女性。
仕事を終えた後、車で迎えに来た彼氏と車内で口論に。顔を殴られたうえに、ペットボトルを投げつけられ、さらに足首を噛まれたといいます。全身傷だらけの女性。中でも足の痛みを訴えます。

女性「めっちゃここが痛い。めっちゃ痛いんすよ、かまれたんすよ私。やばくないすか、普通に人として」

噛まれた足首を消毒し、その後、打撲の治療も行われました。

丸一日の密着の間に、診察を受けた患者は51人。そのうち、救急搬送されたのは30人でした。
激動の一日を終えた藤川医師。断ることなく診療を続ける思いとは…。

春山記念病院 副院長 藤川翼医師:
困っていたりとか、やっぱり不安で救急車を呼んでる方がいっぱいいると思うので、少しでもその不安を減らすためにやってるという感じですかね。
特にこれと言って・・・いや、頑張ってるのがでかいのかな。怖いですけどね。何がくるかわからないから。なんかここでやらないと、またみんなが・・・って思うと頑張れるというか。

(『サン!シャイン』2025年12月4日放送より)