2025年5月26日、農林水産省に「コメ高騰」に対応するチームを発足させた、小泉進次郎農水相(44)。コメ価格高騰に対する切り札として「政府備蓄米の随意契約」を示しました。

年間のコメの取り扱いが1万t 以上の大手小売業者のみが対象で、備蓄米の随意契約を行い、全国のスーパーで販売されているコメの平均価格4285円の半額、5kgあたり2000円ほどで店頭に並ぶことを目指すといいます。

現在、「ドン・キホーテ」や、「アイリスオーヤマ」、「イトーヨーカドー」などが名乗りを上げています。

高騰前の価格で買えるかも知れないというニュースに、喜びの声が上がる一方で、「備蓄米は“におう”という話があるから買わない」といった、品質や価格に対する不安の声も。

さらに、不安を訴えるのは今回の随意契約の対象とならない、中小規模スーパーです。
都内にある「スーパーたなか三丁目店」では、江藤前大臣が放出した備蓄米を、6月から5kg3000円台で販売することが決まったばかり。

スーパーたなか三丁目店 田中達人店長:
(備蓄米が)うちの規模のスーパーにまで届くようになったのが、つい最近です。
6月に入ってくるものは、その以前放出されたものが、ようやく精米が追いついてきて、うちに流していただけるものだと思っています。
大手が優先なのはしょうがないのはあるのですが、やっぱり広くどこのスーパーにも揃えられるようにしてほしいなという気持ちはあります。
お客さまに備蓄米を届けられるっていう点では、うれしいところがありますけども、やはり市場が2000円台が普通になってしまうと、今持っている備蓄米が在庫になってしまうという恐れはあるので。

さらに備蓄米の入荷がない、都内の別のスーパーも…。

スーパーイズミ 五味衛社長:
結局大手しか(小泉)大臣も見にいってなかったしね。大手しかできないことしか考えてないのか…ちょっと悔しいですよね。
安ければお客さん喜ぶからね、当然、こんだけ高いと。やっぱお客さんもずっと我慢していますから、当然(備蓄米の)安いのが入るなら売りたいですよね。

5kg2000円台は農家にとって「本当に厳しい価格」

備蓄米の価格に不安を抱いているのは、販売店や消費者だけではありません。

『サン!シャイン』は、千葉県柏市でコシヒカリを中心に生産している「柏染谷農場」を取材しました。

柏染谷農場 染谷茂社長:
農家から見れば、この値段(5kg2000円)っていうのは、農家がやりくりできる値段じゃないんですよね。できれば、2500円…3000円近くになってくれれば。

作り手側としての適正価格は3000円前後だと話し、燃料費など経費が上昇する中での大幅な価格の引き下げには不安を感じると言います。

柏染谷農場 染谷茂社長:
今回、5kgが2000円だよとなったら、消費者が「じゃあ5kgが2000円当たり前でしょ」ってなっちゃう。
やっぱりそれが、農家にとってみれば本当に厳しい価格なんですよね。コメってその辺のところもしっかり考えていかないと、やっぱりもう作る者がいなくなっちゃうんですよ。
ただ、自分らとしてみれば、そんなに高くなってほしいとは思ってないですよね。高けりゃいいんじゃなくて、やっぱり自分らが再生産できるその価格を維持してほしいっていう、それだけですね。

「コメだけ上がらないのもおかしな話」コメの適正価格は?

小泉農水相は、コメの適正価格について、「お米に関心が集まっている中で、しっかり適正な価格に抑え込むことができれば消費者と生産者の一致する思いの中、正しい値付けが議論できるスタートにできるのではないか」と話していますが、MCの谷原章介は長年、コメの価格が“変わっていなかった”ことに疑問を呈します。

MC谷原章介:
(コメ価格)2000円の根拠って、実はお米って過去数十年ほぼ2000円前後で推移してきているじゃないですか。去年の夏手前くらいまでは2200円前後で売れていた。だからこそそこに戻したいと思うのですが、そもそも長いスパンで他の物価は上がっているのに、コメだけ上がらないのもおかしな話ですよね。

JA全中常務理事 福間莞爾氏:
お米というのは日本の食料品の中でも、主食ですから、日本の文化そのものを作っているといっても過言ではない。しっかりと生産の体制を作っていくのは、日本人全体の願いではないかと。
この問題は要するに、国の政策を批判するわけではありませんが、小泉農水相に今度の参院選挙の顔になってもらいたいという自民党のあれもあって、結構パフォーマンス的に思い切ってやったというのが、私的にはちょっとあるんじゃないかと思っています。

MC谷原章介:
2000円という価格は、福間さんから見て今後、持続可能だと思いますか?

元JA全中常務理事 福間莞爾氏:
これはごく一時的なもので、(備蓄米)30万t ですから。これが全体に影響したら、今の半値ですよ。それでは農家の人はコメ作ることやめますよ。

さらに、大ヒット映画『侍タイムスリッパー』の監督で、実家のコメ農家を継いだ安田淳一氏は、コメ農家の現状をこう話します。

安田淳一氏:
現実に、コメを作ったら赤字になるという状況の中で、お米を作る人がいなくなってコメ不足が起きているわけですから、選挙までの一時的な人気取りでこういうことをされてもですね、根本的な生産者側の問題が解決されないまま、うやむやにされていくというのが、一番…私、逆にそこは心配しております。

スペシャルキャスター 武田鉄矢:
そこは、コメを食べる私どもも自覚しなければならないところですね。今は“緊急事態”なんですよね。

元JA全中常務理事 福間莞爾氏:
そうですね、緊急措置だということをご理解いただきたいです。

(『サン!シャイン』 2025年5月27日放送より)