第三者が不正なアクセスで証券口座を乗っ取り、勝手に株などが売買される“証券口座乗っ取り”被害が相次いでいます。

金融庁によると、2025年1月から4月末までに不正に売買された金額は約3049億円

2025年5月9日には、加藤勝信財務相も「不正取引の被害が拡大している」として、改めて注意喚起を行いました。

知らぬ間に株が…被害者語る

『サン!シャイン』が取材したのは、何者かに口座を乗っ取られ、株を売買される被害に遭ったという人物。

見せてくれた証券口座の明細には、一株185円の株を23万株、約4300万円分購入したことが記載されていました。

被害に遭った人:
特に取引もしていなかったので、おかしいぞと。持っていた株が売られたかたちになります、1000万円ぐらいです。
(すぐに証券会社に)電話していたんですけど、なかなか電話がつながらなくて、その間に信用取引で(別の株を)4500万円分買われたと。混乱しましたね、冷や汗も出ました。

口座を乗っ取られたことを伝えるため、証券会社に連絡をしますが、連絡している間にも別の日本株を4500万円分購入されてしまいました。
不正に買われた株を売却し被害を最小限に食い止めようとするも、その後も同様の売買が繰り返され、最終的に約1300万円の損害を受けたといいます。

被害に遭った人:
資産形成ですね、老後も(影響が)大きいです。冗談じゃないっていうところで、大分パニックにはなりました。

さらに、別の被害者は乗っ取られた証券口座で、中国株を勝手に購入されたといいます。

中国株を勝手に購入された人:
残高いくらかな?と確認したら、入っていたはずの41万円が全額なくなっていて、ゼロだったので、調べると持っているはずのない中国株を持っていることが発覚したと。
フィッシング詐欺にはめちゃくちゃ気をつけていたので、絶対にメールに載っているURLからは飛ばないようにしていたので、そこに引っかかった記憶はないのにやられたな…なんでだろうというのが。

海外に拠点を持つ大規模詐欺グループが関与か?

犯人たちは、何のために他者の口座を不正アクセスしてまで株の売買を行うのか。

その目的は、あらかじめ購入しておいた安い株を乗っ取った口座を使い大量購入させることで株価をつり上げ、価格が上がったところで高値で売り抜けて利益を得ることにあるといいます。

詐欺や悪徳商法に詳しい 犯罪ジャーナリスト多田文明氏:
今回、中国株や香港株などが取引されている、しかも3000億円の株の売買がなされているということは、非常に大規模な組織。ということは、国内というより海外の大規模な組織だと推測できます。
外国に拠点を持つ販売グループで、さらに日本株の売買もしていて日本の証券会社に精通していますので、もしかすると国内の犯罪グループも関与している、あるいは日本人が海外の詐欺グループにいて仕掛けているということも十分に考えられます。

では、被害に遭わないためにはどうすればいいのか。サイバーセキュリティー会社「トレンドマイクロ」の成田直翔氏によると、最低限、以下の対策を行う必要があるといいます。

・メールのリンクは押さない
証券会社から通知が来たと思っても、普段使用しているブックマークやアプリを立ち上げてアクセスする。
・2段階認証を必ず設定すること
・約定通知メールをオンにする

株の売買が行われた時にメールが届く機能をオンにしておく。
・セキュリティソフトを入れる

こうした口座の乗っ取り手口に対し大手証券会社10社は、被害状況に応じて補償する方針を決定しました。

――どこまで補償されるのでしょうか?
トレンドマイクロ 成田直翔氏:

どこまでが被害範囲かを突き止めるのが非常に難しいので、証券会社側もどこまで補償すべきかを非常に議論しているのかなと。

犯罪ジャーナリスト 多田文明氏:
いずれにしても証券会社としては、このような事態は全く想定していなかったので、相当内部でもどうしようかと、全額補償なのか、補償の対象をどのように決めるのかなど、大変な状況になっているかと。IPアドレスをたどれば、不正アクセスでということはある程度分かるとは思いますが。

警察庁によると、被害に遭った際は、メール等の保存やスクリーンショット、不正ログインのIP履歴や取引明細を用意。証券会社のサポートセンターに連絡し、警察に被害届を出す。ログインのパスワードを変更、口座の一時凍結手続きをするという「証拠」「通報」「申請」の3つを行うことが必要です。

スペシャルキャスター カズレーザー:
全員がセキュリティーレベルを上げるしかないんです。全員がセキュリティーレベルを上げれば、悪いことをするやつは「これは割に合わない」と動き出さなくなるので、少しでも上げないと。

トレンドマイクロ 成田直翔氏:
詐欺グループがなぜこれをやっているかというと、詐欺グループからするとコストパフォーマンスがいい詐欺なのでこれだけ増加していると。
なので、詐欺グループからして“日本の顧客全員が対策していてなかなか引っかからない”と思わせれば、日本に対してこういうフィッシングサイトを立ち上げなくなるので…。
全員で底上げしていくというのは非常に有効な対策です。

(『サン!シャイン』 2025年5月12日放送より)