2025年4月15日、都内の銀行には、支給日で年金をおろしに来た多くの高齢者の姿が。

物価高騰で生活が苦しい…スーパーで買いだめ

老後の生活を支える上で欠かせない年金ですが、物価高騰のなか、聞こえてくるのは「生活が苦しい」との声。

足立区のスーパーでは、年金支給日の15日に特売セールを開催。特売品のお米は、普段より約600円も安くなっていました。

取材スタッフ:
あちらの男性、かなりの量の商品をかごに積み込んでいますね。

そんな中、『サン!シャイン』が出会ったのは、このスーパーの近くで1人暮らしをしているという77歳の男性。

1人暮らし 年金約7万円/月 77歳男性:
(年金は)7万ちょっともらってるかな。年金じゃあ、あんたやっとこさだぞ。

数年前に糖尿病を患い、それ以降、視力の衰えや手足の不自由さに悩まされているそうです。
自宅にお邪魔すると…。

取材スタッフ:
たくさんコーヒー牛乳ありますね。コーヒー牛乳お好きなんですか?

77歳男性:
コーヒーだけじゃなく、コーヒーとこれ(乳飲料)とね。低脂肪のものが120円なんぼで一番安いのよ。

買った商品の中には割引シールの乳飲料。
また、冷蔵庫の中にも同じく割引シールが貼られたお肉が買いだめされていました。野菜も安い時にまとめ買いしているそうです。

77歳男性:
やっぱり食べ物が高くなった。野菜ものが高くなったよね。
ブドウも旬の時だったら買ってたけど、やっぱり高くなってる。

約7万円の年金うち、光熱費等で4万円ほどの出費。残った3万円で食費などをやりくりしているといいます。

年金支給額は4月以降、1.9%引き上げられたものの、2024年の物価の上昇率はそれを上回る2.7%です。
今年は“5年に一度の年金改革”の年。政府では「国民年金を底上げするため、厚生年金の積立金を活用する」などの改革案が浮上するも、進展がないまま課題が山積みとなっています。

1人暮らし 年金6万円/月 パート74歳女性:
年金だけじゃとてもじゃないけど(やっていけない)。朝の早い時間3時間しか働いていない。今働いているところは75歳雇い止めだから、これ以上(働くことは)望めないかも。

一方、条件を満たした場合、人によっては年金額が増えるケースも。
専門家によると、申請しないともらえない“隠れ年金”と呼ばれているといいます。
一体どんな制度なのでしょうか?

中央大学商学部客員講師でマネーコンサルタントの頼藤太希氏に解説していただきました。

申請しないともらえない“隠れ年金”「加給年金」とは?

今年65歳で年金受給開始となる元会社員Aさんのケースでみていきます。

厚生年金が月額10万5000円で、基礎年金が月額6万9000円。
Aさんの妻は60歳で、妻の年金受給開始までは5年あります。
ここで、申請するともらえるのが「加給年金」です。金額は5年間で約200万円。

加給年金は、申請すれば年間約40万円受給することができます。
その条件は…

・受給者が65歳以上で厚生年金と共済制度等に20年以上加入している
・配偶者が65歳未満
・生計維持関係にある(配偶者が扶養に入っている)
・配偶者の厚生年金の加入期間が20年未満で、前年の年収が850万円未満

加給年金の申請方法は?

まず、年金受給開始の65歳になる3カ月前に届く年金請求書の中に、加給年金に関する書類があります。そこに必要事項を記入。
戸籍謄本・世帯全員の住民票の写し・配偶者の所得証明書などを年金事務所に提出。
すでに年金を受給している方でも受給条件に該当していた場合、5年前まではさかのぼって請求が可能です。

一方で、加給年金は厚生年金に追加で支給されるため、厚生年金の繰り下げ期間中は支給されません。

年金額をアップするには?

マネーコンサルタント 頼藤太希氏:
65歳で年金を受給する場合、加給年金をもらうポイントは「繰り下げ支給は基礎年金だけにする」ことです。
加給年金は厚生年金にひも付いているということなので、基礎年金を繰り下げしても加給年金はもらえます。厚生年金を繰り下げてしまうと加給年金がもらえないのは、扶養者の生活手当にあたるものと考えられているので、厚生年金を繰り下げ受給するということは、それがいらないというふうにみなされてしまうわけです。
厚生年金は基礎年金の前からあって、その時は夫が働いて家計を担って、妻と協力して生活を送るというのが時代背景としてありましたので、2人分の年金制度をまかなうような制度が厚生年金であり、「夫が年金生活者になったらなかなか生活が厳しくなるので奥さんが65歳になるまでは加給年金を支給しましょう」という古い制度の設計なんですよね。

マネーコンサルタント 頼藤太希氏:
加給年金は年上が年下を養っている時しかもらえないというところで、なぜ年下の夫が年上の奥さんを養うときは出ないのかとか。
夫婦の年齢差が大きい方がたくさんもらえるというのも不公平感がありますよね。
そして今は女性も働く人が増えているので、厚生年金20年以上加入するとなると該当しなくなりますから、ゆくゆくは加給年金制度自体の存続について話し合われています。

年金に関する不安や疑問

『サン!シャイン』には視聴者の方から年金に関する様々な意見や疑問が届きました。

「きのう(15日)はどこの金融機関も人が多かった。 将来、年金もらえるかなぁ?」(40代女性)
「年金は何歳からもらうのが得なのか?65歳?悩んでいます」(60代男性)
「年金は“積み立て”だと思っている人が意外と多いように感じています。周知が足りないのかな…」(60代女性)
「加給年金の受け取り、女性が年上の場合はどうなるの?」(50代女性)

マネーコンサルタント 頼藤太希氏:
基本的に、年上が年下を扶養しているという条件なので、年上が男性でも女性でも大丈夫です。
例えば、年下の男性が年上の女性を養っているということではもらえないということです。
今は70歳くらいまで働いている人が増えているので、働いている間は年金は繰り下げていいのかなと思っています。「平均寿命」という言葉と「平均余命」という言葉がありますが、平均寿命は男性が81歳で女性が87歳ですけども、65歳まで生きた方の「平均余命」で考えると、男性は2人に1人が85歳まで生きて、女性は2人に1人が90歳まで生きています。68際~70歳くらいまでは繰り下げておいて、そこから受け取れば十分元は取れると思います。

(『サン!シャイン』 2025年4月16日放送より)