米の価格高騰が止まりません。
農水省は2025年4月14日、全国約1000店のスーパーで、3月31日から4月6日までの間、販売された米の平均価格を公表しましたが、5kg当たり4214円と14週連続で値上がりし、過去最高を更新しています。

4月に入ってから本格的に備蓄米の販売が始まっているものの、値上がりは続く結果になりました。

漫画家の赤塚不二夫さんも足繁く通ったという、東京・新宿区の人気洋食店「ぺいざん」では、12年前から続けてきた定食のご飯大盛りサービスが、2024年12月から50円の有料に。

洋食「ぺいざん」 高木啓司オーナー:
お米も備蓄米とか出ても、現在4月半ばになってもまだ値上がっている状況なので、不安でしかないですよね。
さすがにちょっと、お米の値上がりが倍以上になっちゃったんで、大盛50円いただく感じで値上げさせてもらいました。いままで、安くておなかいっぱい食べられるっていう感じでやってきたんで、ちょっと苦しかったんですけどね。お店を継続させるためにはという感じで。

米の価格高騰による余波は、飲食店だけではありません。
大阪府交野市は10日、市内全12小・中学校でこれまで週3回提供していた「ご飯」を週2回に減らし、パンに替えると発表しました。これは、2学期分の米1kgあたりの値段が2024年と比べて2倍に跳ね上がる見込みのためだといいます。

食卓に並ぶお米だけでなく、飼料用の米も不足しており、千葉・神奈川で養豚場を経営している「有限会社 ブライトピック」は、飼料用米の約4割をトウモロコシに置き換えました。
しかし、本来は飼料用米を食べさせることで肉の口溶けがなめらかな食感になるということで、これ以上えさの置き換えが起きると、「ブランド豚」として危機的状況になるところに来ているといいます。
米農家は「対岸の火事」解決のカギは“直接支払”?
政府が備蓄米を放出したにもかかわらず、止まらない米の価格高騰。
元バレーボール日本代表で、現在、福井県で米農家を営んでいる中垣内祐一氏は、“米農家の目線”で、現在の高騰をどう見ているか話してくれました。

中垣内祐一氏:
農家の大半は、去年秋に出荷業者なりJAに出荷してそのときに収入を得ているんですね。ですので、この今の値上がりというのは、どちらかというと自分たちがあずかり知らぬところでの値上がりで、対岸の火事のような目で見ていると思うんです。
こうやってどんどん上がっていく金額がある一方で、秋に農家が売った金額より多く入ってくるということはないですから、これはもう農家の収益とは関係ないところで上がっていると。ですから、そういう意味で「農家の人はこれで十分な収益を得られるだろう」と思われているかも知れないが、必ずしもそうではないと。
さらに、キャノングローバル戦略研究所、研究主幹の山下一仁氏は、現在の米価格高騰の抜本的対策は、生産調整の廃止だと話します。

キャノングローバル戦略研究所 山下一仁氏:
減反(生産調整)で、本来ならば一俵(約60kg)あたり1万5000円に大体ターゲットを絞っていたんです。それが猛暑などで不足したので、価格が一俵あたり2万6000円まで、最高の値段になってしまったと。
中垣内祐一氏:
いくら米を作っても価格が上がっていかない、昔のような価格で毎年農家は売らざるを得ない時代が長く続きましたので、減反政策に関しても、補助金は一部もらえるものの、本当に農家が意欲を持って取り組めたかは疑問ですね。

――農家の人たちは今、十分な収入を得ている?
中垣内祐一氏:
これは、農家の置かれた環境によりけりで、例えば大規模農家でもメガファームと呼ばれるような農家であれば十分な収益を得ていると思いますけども、日本の8割の農家は3ヘクタール以下の小規模な農家であって、そういった人たちがお米だけで収益を得られるかというと、そうではない状況が続いています。
そんな中、10日から北海道・東北を除くイオン、ダイエーなどでは、カリフォルニア産の米と、国産の米をブレンドしたブレンド米「二穂の匠」の販売が開始されました。
価格も現在の平均価格より抑えられており、カリフォルニア産8割、国産2割というブレンド率で、カリフォルニア産の軽やかさと国産のふっくら感がどちらも楽しめるお米となっています。

――作っている立場からして、海外の米が入ってくることに抵抗感は?
中垣内祐一氏:
実際に僕もアメリカに住んでいたときに、カリフォルニア米がどれだけおいしいかというのはわかっていますけども、あれが安い値段で入ってくると、日本の農家には恐怖はありますが、カリフォルニアに何かあれば全く入ってこなくなるので、そういう意味では一国に依存するのも危険なことだと思いますし、米の値段を守るためにも、一定程度にとどめておくべきなのかなと思います。
それから、作り方も農薬をいっぱい使っているのではないかとか、遺伝子組み換えではないかとか、そういった懸念もないわけではないと思いますし、品質については日本米の方が安心なのかなと。

――米の価格が下がれば農家は苦しむし、今の価格を維持されたら家庭が大変だしどうすれば?
キャノングローバル戦略研究所 山下一仁氏:
それを解決しているのが、米国やEUがやっている「直接支払」という制度です。
農家には高い価格を保証します、市場には安い価格で供給します、その差は直接支払という交付金で埋めますと。
日本はこれまで、米の消費量が減りました、それに合わせて減反をして米の生産も減らしてきたんです。一方、EUは日本と同じように供給過剰となったときに、供給量はそのままにして、(残った)その分を輸出したわけです。国内の需要が減っても輸出をすれば、自給率というのは、国内の消費を生産で割ったものですから、消費する以上に生産して輸出するということは、自給率が100%を超えてくるんです。だから、フランスの自給率は100%を超えていると。
MC谷原章介:
日本にとって米は主食ですから、このままでは主食が贅沢品になってしまいますよね。これまで米農家皆さんの苦労のおかげで、僕たちは安く食べられていたわけですから。
(『サン!シャイン』 2025年4月15日放送より)