2022年に「十三代目市川團十郎白猿」を襲名してから2年以上。歌舞伎の未来を見据え、今新たな挑戦を始めている團十郎さんに、『ノンストップ!』がインタビュー。
子どもへと受け継ぐ「伝統」と「親の愛」、そして亡き妻・麻央さんへの思いを語ってくれました。
「市川團十郎を受け継ぐ使命」と「時代の“あり方”」
江戸歌舞伎の礎を築いた人物として、歌舞伎の歴史において最も重要な大名跡として知られる、“市川團十郎”。
市川宗家の長男は代々「新之助」「海老蔵」「團十郎」と、その名を、後世へと継承していきます。
團十郎:
"市川團十郎家"に生まれたということで、新之助を名乗り、いつか海老蔵になるだろうし、いつか團十郎になる可能性があるということで、小学3、4年生の頃からシミュレーション済みではあるじゃないですか。
幼くして自身の使命を知り、その重責を受け入れてきた團十郎さん。
そして2022年に自身が「十三代目市川團十郎白猿」を襲名すると、息子も、自らと同じ道を歩みはじめました。
團十郎:
父もそうですし、七代目、九代目とさまざまな團十郎がいた中で、やっぱり“團十郎という教育”…
それはおそらくありますね。それを父・十二代目は私に幼少期からやっていた。
その荷物はもらっているので、それを彼(息子)に環境の中で教える。
歌舞伎の世界は、一子相伝。厳しい稽古を重ねて、家の芸を継承する使命があります。
しかし一方で、時代の流れと共に、その“教えのあり方”も変化していると言います。
團十郎:
1985年、1986年ぐらいが、新之助としてちょうど彼(息子)と同じぐらいの年齢だったんですけど、(当時は)色んなものがイケイケドンドンの中で子供生活を送っていたので、歌舞伎役者になることはもう当然であり、歌舞伎で有名になりたい、歌舞伎で何かを届けたいっていうような幼少期の感情を持っておりました。
(しかし)私が子供の時代の考え方と、今の彼(息子)が同じ考え方で生きていていいかっていうと、そこは同じでいいよっていう程、親の無責任さはないと思うんですよ。
それはやっぱり親としても無責任なことはできないので、(子どもたちは)多面的に生きるべきだという風に思いますね。
「伝統を継続させていく使命」と「時代が求める“あり方”」。
子どもたちに対して、その両方を両立させる難しさも。
團十郎:
今やはり「こうしなさい」「こうしないといけない」というようなことが許されない時代になってきちゃった。(その感情を)私は出さないですね。父も出さなかったですね。祖父は出していましたね。それは時代ですよね。
だからと言って(生半可な気持ちで)伝統芸能を継続できるのかって言ったら出来ない。
團十郎:
ある程度厳しく、ある程度しっかりと。「それはダメなんだ」っていうことと「それでいいんだ」っていうことを明快にしていかないと難しい。
多分、各々の歌舞伎の家の中で行われているのだと思うので。
私もあくまでも子どもには、(伝えるべきことは)はっきりと「そういう方向だよね。その方向は違うよね」っていうことを話します。