40代から50代にかけて誰でも直面する可能性があるという、ミドル世代のメンタル不調「ミッドライフクライシス」
前編では、49歳女性が子育ての終わりに直面した、「自分って何だろう」という“存在意義”の悩みについて取材し、専門家に向き合い方を聞きました。
この後編では、キャリアの転換期にまさに「ミッドライフクライシス」に直面した60歳の男性と、その妻に話をお伺いします。

同級生の死を通じて感じた人生の残り時間

阿部正暢さん(60):
セカンドキャリア研修みたいのがありまして、それを50歳前後に受けていましたので50代前半で銀行から転出するっていうのは規定路線というか。
ただ私自身が「最後はもう一回支店に戻って、支店長として先頭に立ってお客さまの役に立ちたい」というような思いもあって…、そんな異動願いなんかも出してたんですけれども、先に出向の話が来ちゃったなっていうようなモヤモヤはございました。

53歳の時、銀行から取引先の企業に出向することになったという阿部さん。異業種で慣れない中でも新しい仕事に奔走していました。

妻:
新しい世界に飛び込んでいろいろ思ったことはあったと思うので、50代になって自分がどういう方向に進むかというのを、おそらく本人は迷っていたんだと思うんですけれども。
そんな中、56歳の時、新たな転機が訪れたといいます。

阿部さん(60):
高校の同級生が急に難病にかかって亡くなるという経験がありました。それと、私の父と祖父も59歳で亡くなっているんですね。
59歳という年をすごく意識しまして、「あと3年しかない」というふうに思ったら、このままでいいのかなというところをちょっと考えたということですね。

同級生の死を通じて感じた、人生の残り時間。
そこから阿部さんは、コーチングやコミュニケーションのコンサルタントを行っている「みらい創世舎」のセミナーを受講し、自分を見つめ直したといいます。

みらい創世舎 森泰造代表:
優秀なビジネスマンの方って「こうでなければいけない」「いい会社員でなければいけない」「いい上司でなければいけない」そういうのがすごく強い。
でもそうじゃなくてもいいんだって、自分に許可がちょうど出せるようになってきたんですよね。よろいが剥がれていくうちに、自分の本音にどんどん近づいていくので「本当にやりたいことは何なんだ」っていうのがどんどん近づいてきた、という感じじゃないですかね。

阿部さんは銀行員時代に中小企業診断士の資格を取っていたこともあり、思い切って56歳で経営コンサルタントとして独立。

妻:
(独立を聞いた時)不安は感じたけれども多分本人も考え抜いて決めたことだと思いますし、やるんだったらやってみた方がいいし、やらないと多分いつまでも残るだろうなというのもありましたし。

阿部さんは独立したことで、昔からやりたかった中小企業を救う仕事ができるようになり、自分のペースで働けるようになったといいます。

阿部さん(60):
60歳、65歳であの時の強い一歩が踏み出せたかというと、ちょっとどうかなという気もしますので、あのタイミングで踏み出してよかったなと思いますし、自分が今生きている中で充実感を感じている部分ではあるかなと思っています。

カンニング竹山:
今のこの方(阿部さん)がおっしゃってたように、一つは、どうせ死にます人間は。これ悪い意味じゃなくてね。どうせ死ぬの中年になってきたら早かれ遅かれ長いか短いか。ということは人生それで楽しまなきゃもったいないんですよ。
やりたいことやらないと、途中でバッと終わる可能性もあるから…。立派に生きるとか関係ないから、「どうせ死ぬんだから好きなことをやりましょう!楽にやりましょう」って考えていった方が、多分人生が楽になると思いますよ。

MC 設楽統:
先生、この方(阿部さん)はミッドライフクライシスに陥ってしまったということですが、やっぱりキャリアの変化っていうのはかなり関係あると思いますか?

精神科医 水島広子氏:
40代50代の一つのポイントというのは、社会的な仕事上の変化がとても大きいので、本当に大げさな例じゃなくても、やっぱり仕事って一つの役割なんですよね。
その役割の中の目標に向けて頑張るとか、その役割で期待されるように頑張って働くとか
そういうふうにそう思って働く役割なので。
そこに変化が起きるということは、そういうのが全部変わるということなので、やっぱり適応しなきゃいけない変化ですよね。
一見こう昇進とかいい変化に見えることであっても、それまで一緒に上司の愚痴を言えてた仲間がいなくなるとか、いい変化に見えることでも一つのクライシスにもなり得るので、その年代っていうのはやっぱりいろいろあると思います。

ミッドライフクライシスの乗り越え方

ではどうやって乗り越えればいいのか?
このミッドライフクライシス、気をつけるためには…
水島先生によると、「お茶を一杯飲む」「お風呂につかる」など、幸せを感じる小さな習慣を毎日続けるのがおすすめだそうです。

設楽統:
こういうことでもいいんですか?

精神科医 水島広子氏:
こういうことが結構いいんです。変化の時の心理状態っていうのは、もうその変化についていくのでいっぱいいっぱい。変化に飲み込まれてしまう。
だから「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」「私は何もできない…」みたいな、そういう、もう完全に台風に巻き込まれた状態みたいになってしまうんですけれども、そういう中で定点を作る。変わらないものを一つ作っておく、というのは、本当にこういう、「おいしいお茶をいっぱい飲む」とか、「毎日お風呂につかる」とか「寝る前に本を読む」とか、こんなにすごい変化の中でもこれだけは続けています、これだけは毎日できます、というのを一つ持っておくと、そこで感情の波から少しリセットされて、変化に完全には巻き込まれなくて済むようになります。

(『ノンストップ!』2026年6月19日放送より)