脚本家・矢島弘一さんが、火9ドラマ『夫婦別姓刑事』の制作裏話を明かしました。
ドラマ『夫婦別姓刑事』は、コミカルな刑事ドラマの装いの裏に、緻密な謎と登場人物の感情が絡み合うミステリードラマ。「夫婦は同じ部署に所属してはならない」という暗黙のルールが存在する警察で、夫婦であることを隠して別姓のままバディを組む四方田誠(佐藤二朗)と鈴木明日香(橋本愛)の活躍が描かれています。
本作で脚本を担当する矢島さんは、劇団「東京マハロ」の主宰。2016年に放送されたドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS)で第35回向田邦子賞を受賞。『コウノドリ』(TBS)や『初恋、ざらり』(テレビ東京)など話題作の脚本を手掛け、現在は脚本・演出を務める20周年記念公演『可もなく不可もない戦争』(本多劇場/~6月2日)が上演中です。
先日放送された第7話のラストでは、郡司綾(齊藤京子)、小寺園みちる(斉藤由貴)、そして研修生のドナルド(LUKE)が怪しげな表情を見せる場面が。これにSNSでは「どういうことー!?」「ちょっと怪しいんですけど!」といった声が上がり、期待感が高まっている『夫婦別姓刑事』の制作裏話を矢島さんに聞きました。
「カッコいいセリフは、カッコよくならない」秋元康からのリクエストに応えるため脚本家・矢島弘一が意識したこと
──物語は折り返しましたが、矢島さんのもとに反響は届いていますか?
(佐藤)二朗さんと橋本愛さんという、映画で活躍している2人がゴールデンタイムのドラマで主演するということで、スタート前の段階から多くの反響をいただいていました。
当初は、おそらくコメディ色の強い作品を予想していた方も多かったと思います。そういった方々が1話、2話を見たあとに「意外と人間ドラマなんだ」とコメントされていて、伝わってよかったなと思っています。
──初回からコメディとシリアスの温度差が話題となっていましたが、共存させるために大切にしていることはありますか?
物語のなかで誠と明日香がちゃんと生きていたら、こういう展開になっただろうということをしっかり表現しようと思いながら制作していました。つまり、視聴者をびっくりさせるためとか、泣かせようとする意図で、わざと何かを仕掛けることはしていません。
二朗さんと橋本さんのキャスティングが決まった状態で、お2人をイメージして脚本が書けたことも大きかったですね。そうして出来上がったものを、田中(亮)監督、河野(圭太)監督、平野(眞)監督が現場で膨らませてくださり、みんなの共同作業でいいバランスの作品ができていると思っています。
──企画・原案の秋元康さんからスタッフの皆さんへ「二朗さんをカッコよく撮ってほしい」というリクエストがあったと聞いています。脚本の時点で意識したことはありますか?
そういったオーダーを受けていたので、意識しなかったことはないのですが…脚本のなかで、特別カッコよく見せようとはしていません。“カッコいいセリフ”って、カッコよくならないと思いますし(笑)。ですので、逆にカッコいいセリフを言わせないように、余計なものは加えないようにしていました。
──事件を解決していく誠と明日香のバディ感に加えて、夫婦としての関係性がにじむ会話も印象的です。言葉のセレクトなどでポイントにしていたことを聞かせてください。
脚本会議では、「その回で起きる事件の内容と、夫婦の会話がマッチするといいよね」という話がよく出ていたので、そこは基本としていました。
ただ…カッコつけた言い方になってしまうのですが、ほとんどの場面で誠と明日香が脚本のなかで自然としゃべってくれていたんです。だから、「これをしゃべらせよう」などと意識して書いたセリフは、実はなくて。
チョコミント論争やパートナーが洗った食器を洗い直す話など、「こういう話を入れよう」ということは会議で出ていました。でも、セリフの応戦は、誠と明日香のキャラクターを自分のものにした二朗さんと橋本さんが、自然と表現してくださっているものです。
──チョコミント論争など誠と明日香の議題に挙がるものは、矢島さんやスタッフの皆さんの実体験なのでしょうか?
基本、自分の実体験ですね(笑)。僕と水野(綾子)プロデューサーは、チョコミントが大好きなんです。あとは、誠も明日香もとんかつの端っこが好きというエピソードがありますが、僕らも端っこが大好き。
打ち合わせでその話をしたら、ほかの皆さんから、「チョコミントは食べないよ」「とんかつは真ん中だろう」と言われまして。でも、それが夫婦にとって大切なエピソードになればいいなと思い、盛り込みました(笑)。
──年の差があるからこそ、好きなものが一緒であったり、感性を理解し合ったりというのは、夫婦を描くうえでポイントになっていそうですね。
そうですね。誠が55歳、明日香が32歳の設定なので、ときどきSNSで「こんなに年の離れた夫婦はあり得ないよ」という意見を目にします。でも、今の時代、年齢は関係ないと思いますし、なんとかそのマイナスな意見を2人の会話などで払拭できればいいなと思って書いていました。

