5月にYouTubeで公開された動画が、物議を醸しています。

91歳の現役医師を名乗る人物が、高齢者の健康について語る動画。
動画の中で、「60年以上医師として高齢者の健康を支えてきた」と話していますが、ITジャーナリストの三上洋氏によると、この動画は、生成AIで作られた可能性があるといいます。

ITジャーナリスト 三上洋氏:
(最近は)生成AIの動画を使ったものが増えています。まるで医師のように見える人が話をしている動画で、ナレーションが流れる場合が多いですね。

実際に『サン!シャイン』が、厚生労働省の医師の免許を持つ人物を検索できるシステムで、動画の医師を名乗る人物の名前を打ち込んでみますが、登録はありませんでした。

厚労省によると、医師免許を所持していない人物が医師と名乗った場合「医師法違反」の可能性もあるといいます。

法に触れる可能性があるにも関わらず、なぜこのような動画を投稿するのでしょうか?

ITジャーナリスト 三上洋氏:
60代でも半数以上がYouTubeを見ていると言われています。こういった高齢者層にはですね、健康、医療、年金、こういった話題は再生数が上がるんです。そのためにこの手の動画が大量に出回っています。

動画の一部に「不正確な情報」

気になるのは、動画の内容。

約40分の動画では、「朝に行う5つの習慣」で脳卒中などの様々なリスクが減少すると紹介。起床後に「ぬるめのお湯」を飲むことや、タンパク質を30g摂取するなど、独自の健康法を解説し、実践して効果があったという人の話も紹介していますが…。

実際にこれらの方法は、脳卒中などのリスクを軽減するのでしょうか?現役の医師に話を聞くと。

お茶の水健康長寿クリニック 白澤卓二院長:
91歳の医師が「30gのタンパク質を取れ」と言うことはあり得ない。まずこの一点をとってもですね、「お肉を食べろ」「卵を何個食べろ」「納豆一箱食べろ」これはあり得る話だけども、「良質なタンパク質30g取ってください」っていうことはあり得ないですね。一般の人に語るときの言葉じゃないです。

使われている表現が、医師が患者に説明する際に使う言葉ではないと指摘。
さらに、朝起きたら480mLのお湯を2杯飲めという指示についても…。

白澤卓二院長:
(480mLを2杯)960mLの水を朝いきなり飲んだら、水中毒になりますね。
まともな医者がこれを言っていたら、大変なことだというふうに、まず思いますね。

さらに、最新の動画10本を「ファミリークリニックひきふね」の梅舟仰胤院長に見てもらったところ、タンパク質の摂取量など3本の動画に不正確な情報があることが分かりました。

『サン!シャイン』はこれらの動画の投稿者に取材を申し入れましたが、放送日である23日までに回答はありませんでした。

谷原章介キャスター:
基本、問題を抱えている人が見に行くわけで、そこに「これが答えです」となると、信じる人が多いと思うんですよ。

スペシャルキャスター 武田鉄矢氏:
簡単に信じると思いますよ。(自分もこういう動画)見ていますよ、信じてはいない。見ると信じるは別問題。
この人たちの話って、私たち高齢者から言わせると飽きちゃうんです。本物が持っている何かがないんです。抑揚がなかったり、よどみなく言葉を発するという。大体言葉によどみがない人というのは、だまそうとしている人が多いです。

鈴木おさむ氏:
でも調べるとすぐ出てきちゃいますよね。僕は高血圧だから、「高血圧」と調べると、検索ですぐ出てきちゃうから。そうなると見分けるのは…信じちゃいます。

谷原章介キャスター:
ネット上はあまり規制するべきじゃないと思うと同時に、健康被害だったりとか、若者向けのCM広告でもってあまり良くないモノがいっぱいあるじゃないですか。そういったものをある程度規制しないと。
例えばテレビだったら放送法、自主規制のBPOというのがあって、ミスは犯してもそれを改善していく土壌がありますけど、ネット上ではそれがないようにも感じます。

(『サン!シャイン』 2025年9月23日放送より)