──改めて、お互いの印象を聞かせてください。

三谷:僕が普段一緒にお仕事をしている俳優さんは、舞台にしろ、映画にしろ、割と年配の方が多いので、20代や30代の役者さんとの接点があまりないんですよね。ゼロではないですけど。

その中でも、神木さんのお名前はもちろん知っていましたし、映像を見たこともありました。ただ、「いつか作品を一緒にやるかもしれない」という目線ではなかったので、今回初めてご一緒して、すごく新鮮な体験をさせてもらいました。

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──神木さんから、三谷さんの印象はいかがですか?

神木:作品の番宣などで朝の番組のエンタメコーナーに出ていらっしゃるところは見ていましたし…。

三谷:作品は見てない(笑)?

神木:見てます(笑)。(佐藤)浩市さんの『ザ・マジックアワー』が好きです。

テレビで見る三谷さんの印象は、博学というかなんでも知っている方というイメージでした。なので、初めて直接お会いする際は本当に緊張して。話についていけるのか、ちゃんと理解できるのか、「理解力がないな」と思われてしまうかもしれないと思いながらお会いしました(笑)。

実際にお会いして、テレビで見ていたときと印象は変わらなかったです。なんでも知っている博士みたいな方という印象です。

三谷:神木さんだけではなく、若い俳優さんは僕に間違った大家(たいか)の印象を持っていらっしゃるんです。そういう過大評価された空気感の中に入っていくのは、ものすごく厄介で。本当に、全然そんなすごいものではないですからね(笑)。

神木:でも、三谷さんの作品が公開されるとなると、最初にドンと出てくるのは「三谷幸喜作品」という文言じゃないですか。それがすごく印象的なので、とんでもないお人だなと思っています(笑)。

三谷:やりづらいです(笑)。

──菅田将暉さんが演じる主人公の演劇青年・久部三成についてうかがいます。三谷さんは、久部という人物にどのような思いを込めていますか?

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三谷:僕が菅田さんとお会いしたのは、昔、日本アカデミー賞授賞式のトイレで並んで用を足したときくらいなんです。(三谷さんが脚本を手がけた)大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)ではお会いしていないし、この作品に入ってしっかり話すようになったくらいで、それまでは全然人柄なども知りませんでした。

ただ、大河ドラマで演じてくださった源義経を見たときに「この人には今後こんな役をやってほしい」という思いがすごく膨らんだんですよね。それは、ただのいい人とか何か一色で語られるものではなくて、もっといろんな面を持った、憎まれ役、嫌われ役も含んだ複雑な役を見てみたいと思ったんです。その思いから今回の久部のキャラクターが出来上がりました。

──神木さんが演じる蓬莱は、久部とどう絡んでいくのでしょうか?

神木:劇中で蓬莱は久部の演出助手という立ち位置で絡みます。蓬莱にとって久部は初めて見るタイプの人間で、すごく強引だけど「僕たちを新しい場所へ連れて行ってくれるんじゃないか」という期待感も抱かせる人。だからついて行きたくなるんだろうな、ということは心の中で思いながら演じています。

ただ、本当に人の話を聞いてくれないんですよね(笑)。暴走もしますし。そんな久部とどうやって距離を保てばいいのか、悩んでいます。

──共演経験もあり、ご本人をよくご存じだと思いますが、この役を演じる菅田さんを神木さんはどのように見ていますか?

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神木:100%のパワーを出し続ける姿を初めて見ました。普段の菅田は、基本的に元気で面白い人ですが、圧のようなものはまったく出さない人なんです。だから、久部のように一つひとつのセリフを100%全力で言ってくる姿は初めてで、それが今、板についた菅田を見ていると、すごいなと思います。

久部もそうですが、菅田自身も僕らを引っ張ってくれる存在だということも改めて思いましたし、僕にとって大きな存在ですね。

三谷:このドラマは1984年が舞台で、その当時はものすごくパワフルな時代だったんです。その時代の色を一身に背負っているのが久部というキャラクター。それを演じている菅田さんの熱量みたいなものが、このドラマ全体を引っ張っていますね。

その横でクールに、客観的に物事を見ているのが蓬莱であって、この2人のコンビネーションは、昔で言う勝新太郎さんと田村高廣さんみたいな。僕の中ではそういうイメージで書いていました。