夏休みも終わり、お休み気分から一転、普段の生活リズムに戻るこの時期、注意が必要なのが「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)」です。

「ソーシャルジェットラグ」とは、仕事や学校などがある平日と、制約のない休日で、生活のリズムが崩れ体内時計がずれてしまうこと。

平日と休日で寝る時間・起きる時間が異なると、「時差ぼけ」の症状が現れ、眠気や疲労感が出る・BMIが高くなる・脳の機能が落ちて認知機能が低下するなど、心身に不調をきたすことがあるといいます。

富山大学 神川康子名誉教授:
夏休みとか、お盆とか、ちょっと長めの休みがあるときに起こりやすいです。
週末2日だけでも体内時計が狂って、月曜日がブルーな憂鬱な、学校に行きたくないとか仕事に行きたくないという気分になっちゃう。

特に、最近の猛暑でなかなか寝付けない人や、猛暑疲れで休日により多くの睡眠をとろうとする人などは注意が必要です。

観測史上、最も暑くなった2025年の夏。
“快眠できない人の救世主”として『サン!シャイン』が話を聞いたのは、睡眠と深い関係がある体内物質「オレキシン」を発見し、ノーベル賞候補にも挙がる睡眠研究の世界的権威・筑波大学の柳沢正史教授です。

まだまだ厳しい暑さが続く中、猛暑バテした体を癒やすには?ノーベル賞候補の専門家から快眠方法を学びます。

「時差ぼけ」を防ぐには「中央値」を意識

「ソーシャルジェットラグ」を防ぐためには、生活リズムを安定させることが大切です。
でも、休みの日くらいはゆっくり寝たい…。そんなときは、就寝時間と起床時間の「中央値」を意識してください。

例えば、普段は午前0時に寝て午前6時に起きている場合は、中央値は午前3時。
この場合、午前0時に寝て午前10時に起きると、中央値が午前5時と2時間もずれてしまうため、時差ぼけになってしまいます。

中央値をずらさずにたっぷり寝るには、午後10時に寝て、午前8時に起きると、10時間眠れて中央値もずれません。このとき、中央値のズレは1時間以内に抑えることが大切です。

休日こそ夜更かししたい…そんな時もありますが、柳沢教授は「早く寝て早く起きて、その分、休日の朝、何かを自分のためにやる」と気持ちを切り替えることも大事だといいます。

筑波大学 柳沢正史教授:
もちろん理想は平日も休日も同じというのが理想なんですが、休日寝だめしたい場合は、早寝遅起きをした方がいいと。

――朝が苦手な場合は?
それは、根が深いんです。朝が苦手な人は夜早く寝ようとしても眠くならないんです。朝は明るいところで暮らす、夜はあまり明るい光を目に入れない。そうやって光環境を整えて体内時計をできるだけ前進させるしかないと思います。

また、逆に体内時計の作用で、普段寝る3~4時間前は最も眠りにくい「睡眠禁止ゾーン」となるので、この時間に無理に寝ようとすると寝付けずかえって不眠につながることもあるので、注意が必要です。

柳沢正史教授:
例えば普段0時に寝ている方が、8時に寝ようとしてもほぼ無理なので、布団に入ってもんもんとした状態になっちゃうんです。そうすると、自分の睡眠に対して不安が募って眠れなくなるので、かえって良くない。そういう時は諦めて、「睡眠時間が少ないのは朝早く起きるから仕方ない」と。次の日に少し長めに眠るとか、長く眠って調節すると。

良質な睡眠のために…目覚ましの音は?枕選びのポイントは?

いい睡眠をとるにはどうしたらいいのか。柳沢教授に睡眠に関する、良いこと・悪いことを聞きました。

▼目覚ましのアラームについて

人間は、人の言葉に敏感に反応するようにできているので、「好きなアーティストの声・歌」などをアラームにすると、起きやすい。

また起床時に体に負荷がかかってしまうので、なるべく1回で起きるようにする。
スヌーズ機能をつけてもいいが、2回まで。

柳沢正史教授:
人間の聴覚って人の声にすごく敏感なんです。人間は声・言葉でコミュニケーションする動物なので、人の声にすごく覚醒作用があるとされています。個人差はありますが。
「起きろー」でも優しく「起きてね」でも。私は松田聖子さんの曲をアラームにしています。

▼眠るときの枕について

眠る体の向きによって、適した枕が異なる。

あお向けで寝る人 は「少し低めで柔らかい枕」。横向きに寝る人 は「少し高くて硬めの枕」、うつぶせで寝る人は、低いものがおすすめで、枕がなくてもいい。

――夜にトイレに何度も目が覚めてしまうときはどうすれば?
柳沢正史教授:

夜に1回か2回起きるのは気にする必要ないです。ただ、2回以上となると、ちょっと気にした方がいいですけど…。
寝付けなくなったときは、「15秒深呼吸」というんですけど、ベッドに横になったまま7~8秒かけてゆっくり吸って、自分の心拍を意識しながらゆっくりはいてというのを3、4回やって、1分ですよね。
そうすうと本当にリラックスできて、私は寝落ちするんですが。そういうリラックスできることをする。それで布団に戻っても10分15分眠れないなら、思い切って布団から出てリビングに行って、薄暗いところでリラックスできることをする。
眠れないのにベッドにいて、もんもんとするのは良くないです。

また、良質な睡眠のために、食事は脂っこいものは避ける、タンパク質と食物繊維は多くとる、塩分(ナトリウム)はなるべく控えて、カリウムを多く摂取するといいといいます。

柳沢正史教授:
これはもう一言で言うと、健康な食事なんです。それがいい睡眠につながると。

(『サン!シャイン』 2025年9月3日放送より)