11月24日、ボクシング・WBC世界バンタム級王座決定戦が行われ、那須川天心選手(27)との日本人対決を制し、井上拓真選手(29)が1年ぶりに世界王座に返り咲きました。
試合から一夜明けた25日の朝、井上拓真選手が『サン!シャイン』のスタジオに生出演!激闘から一夜明けての今の気持ちなど、じっくり話を伺いました。
また、「勝敗を分けたポイント」について、WBC世界バンタム級王座を12度防衛した山中慎介氏に解説していただきました。
「天心選手は本当にうまかった」
谷原章介キャスター:
改めましてWBC世界バンタム級チャンピオン井上拓真選手、おめでとうございます!
すごく勇気を日本中に届けてくれました。素晴らしい戦いでした。
井上拓真選手:
ありがとうございます。
――スタジオには特別にチャンピオンベルトを持ってきていただきましたが…なぜ2つなのでしょうか?
井上拓真選手:
本来ならこのWBCのベルトだけだったんですけど、WBCの会長が日本人同士の王座決定戦ということで、特別にこの“サムライベルト”を作っていただきまして。
佐々木恭子キャスター:
きのうはすっきり眠れたんですか?
井上拓真選手:
アドレナリンが出すぎて、一睡もできずにここに来ました(笑)。
谷原キャスター:
改めて、王座に返り咲いた今のお気持ちはいかがでしょうか?
井上拓真選手:
戻ってこれたというか、その気持ちも大きいんですけど、やっぱりこれだけ大きな試合になった、天心選手に勝てたことが今は一番うれしいですね。
谷原キャスター:
改めて振り返って、那須川天心という選手はどういうボクサーでしたか?
井上拓真選手:
やっぱりスピードもあって、ずっと無敗で来てて、勘のいい選手。距離感もいいですし。
始まった時は自分もちょっとどうしようかなって考えるぐらい本当にうまかったですね。
谷原キャスター:
1ラウンド2ラウンド、結構天心選手がやりやすくやって当てられてたじゃないですか。
僕ら見てて、「えっ?そんなに?」って思ったんですよ。
お兄さんがモンスターなら拓真さんは精密コンピューターというか精密機械のようなボクシングのイメージで。
1、2回見てドキッとしてたんですけど3回4回からガラッと変わりましたね、空気がね。
鈴木おさむ氏:
会場の空気って今まで経験したことのない空気でしたか?
井上拓真選手:
自分的には「天心」の声援が大きいかなと思ったら意外と自分の方の声援も大きくてそれもすごく力になりました。
勝負のポイントは?
そんな今回の勝負のポイントを3つ山中氏に挙げてもらいました。
<山中慎介氏があげる勝負ポイント>
①第4ラウンド終了時点での公開採点
第4ラウンド終了時点ではイーブン。第8ラウンド終了時点での公開採点で差がついています。
山中慎介氏:
ボクシングのWBCという団体は12ラウンド戦うんですけど、4ラウンドと8ラウンドに公開採点というのが発表されるんです。これは国内の世界戦のみなんですけど。
その時に、今回は4ラウンド終了時に38対38。これは2ラウンド2ラウンドとってイーブンですよね。
そこで拓真選手の陣営としては想定内だったと思っているんですよ。
天心選手はスタートからエンジン全開でいけるタイプなんで。実際1ラウンド目も2ラウンド目も天心選手の動きというのは本当にスピード全開でタイミングも良かったですし、良い印象でポイントを取ったかなと思ったんですけど。
3ラウンド目4ラウンド目というのは、拓真選手の陣営からの指示もあったかもしれないですけど「ちょっと見過ぎだ、警戒しすぎだ、もう少しいってもいいぞ」という指示通り、自分からしっかりと仕掛けてパンチを当てて、3ラウンド目4ラウンド目のポイントを取れた。
渡辺和洋アナウンサー:
実際にイーブンって分かったときは、どのような気持ちでしたか?
井上拓真選手:
自分としては1、2は絶対取られてると思っていて…、3もどうかな、悪かったら取られてるかな、ぐらいで。
1ポイント差ぐらいだったらいいかなくらいに思ってたらドローだったんで。自分的にはこのペースでいけばどんどんポイント取れると思いました。
谷原キャスター:
最初から1、2ラウンド抑えて相手の様子を見ようという作戦だったんですか?
井上拓真選手:
いや、抑えるつもりはなく、1、2からポイントを取っていくつもりでいったんですけど、やっぱり天心選手がうまくて、合わされたり。
自分も1、2終わって「これはちょっとヤバい。ポイント取れてない」と思いましたし。
このままだと向こうのペースになっちゃうので、作戦を変えて3、4からプレスを強めてポイントを取っていく作戦に変えて、ちょっとずつポイントを積み上げて。
<山中慎介氏があげる勝負ポイント>
②距離を詰めて自分から仕掛けた
③キャリアの差
山中慎介氏:
5ラウンド目か第8ラウンド目の中間のラウンドの中で差が開いたわけなんですけど、3ラウンド目4ラウンド目のいい流れをそのまま中盤に持っていきましたよね。
3ラウンド目4ラウンド目ポイント取れたということで、このままの戦い方でいいということで、引き続き5ラウンド目から8ラウンド目も距離を詰めて、自分からの攻撃がうまくいってしっかりとポイントを取れていって。
天心選手はどうしても後手後手に回っていったところがありましたので、なかなかポイントを取れなくて悩んでいた時間帯だと思います。
父・兄とともに勝ち取った試合
サウスポーに構えた兄・井上尚弥選手を相手にした対面練習をメニューに取り入れるなど那須川天心選手への対策をしていたという拓真選手。
試合では尚弥選手がセコンドにつき弟を間近で見守り、“最強のセコンド”と話題になりました。
井上拓真選手:
兄からはちょっとしたアドバイスなんですけど、兄がサウスポーに構えて細かいアドバイスだったりは常にしてくれましたね。
父と兄のアドバイスというのは、それだけをやりながら聞こうって自分は心がけているので、もう本当に父と兄の存在はでかいですね。
――天心選手の攻略のポイントは?
攻略のポイントとしてはいろんなパターンを想定して練習をしてたので、今回は自分がプレスを強めてポイントを取っていくっていうのが当てはまったんで。
拓真選手は試合前に「過去イチの仕上がり」。そして試合後には「お父さんが追い込んでくれたおかげ」と。
父でトレーナーの真吾さんも「初めて同じ気持ちでトレーニングできた」と話していました。
渡辺アナウンサー:
今回の試合にあたってのお父さまの存在というのはいかがでしたか?
井上拓真選手:
父がいなければこの勝利もなかったと思っているぐらい一緒に追い込んで練習をできたので、本当にすごく感謝してます。
佐々木キャスター:
お父さまの「初めて同じ気持ちで」というのは、目標は一致していると思うんですけど、これまではなかなかお父さまの求めるところに到達できない何かがあったんですか?
井上拓真選手:
到達できないというよりお父さんの気持ちが高すぎて。熱すぎて。
自分もやってるんですけど、まだここらへんで、同じ気持ちでいけてないみたいな。
――今回は同じ熱量でできた?
自分も絶対負けたくないっていう熱量がバーンってあったんで、同じぐらいで一緒にトレーニングできました。
佐々木キャスター:
山中さんから見ると、特に今回どこが強くなったという進化を感じられましたか?
山中慎介氏:
技術的な部分というのは世界でもトップクラスの部分は常にあったんですけど、今回、天心選手に対しての作戦もそうですけど一番はやはり気持ちですよ。
約1年前に敗れてから、その気持ちの部分が足りなかったということも本人は分かっていますし、そこで後悔したくないという思いはこの天心戦でも十分に出ていましたね。
そういったところが、リードした終盤でも気を抜かずに自分からしっかりと攻撃を仕掛けて、気持ちもそうですけど、技術的な部分もそうですけど、アッパーの連打。あれは技術もそうですけど思いがすごく伝わった場面でしたね。
谷原キャスター:
改めて、これからどういうチャンピオンになっていきたいですか?
井上拓真選手:
まずはこのベルトをしっかり守って、また皆さまのファンの盛り上がるカードをしていきたいです。
(『サン!シャイン』2025年11月25日放送より)
