8月6日、神奈川県・江の島近くの海水浴場で、14歳の少年と18歳の男性が溺れ、このうち14歳の少年が心肺停止の状態で搬送されました。

4日には、平塚市の海水浴場でも、部活仲間らと遊びに来ていた中学1年生の女子生徒が、溺れて意識不明の重体となり死亡するなど、水の事故が相次いでいます。

警察庁によると、2024年に全国で発生した水難事故は1535件。過去10年で最多となりました。

水難事故への意識は高まっているにもかかわらず、なぜ事故件数は増加傾向にあるのか、もし流されてしまったときはどうすればいいのか?命をつなげる、水の事故の対処法を専門家に詳しく聞きました。
離岸流の危険性と「浮いて待つ」
水難事故に関する調査を行っている、「海のそなえプロジェクト」によると、2025年4月26日〜7月28日の間で、全国の対象水域溺水者数は198人、うち131人が死亡、15人が行方不明となっています。
このうち、海にまつわる事故が122人と全体の6割を占めており、次点は川にまつわる事故(57人)でした。

海でおぼれてしまう要因として最も多いのは、「離岸流」によるものです。

離岸流とは、海岸から沖に向かって強く流れる水流で、わずか数分で数十メートル沖合に流されてしまうこともあるといいます。

水難事故の研究を行っている、大阪大学大学院 人間科学研究科の岡真裕美 特任研究員によると、離岸流の最も恐ろしい点は、「素人には分かりにくい」という点だといいます。

水難事故の研究を行っている 岡真裕美氏:
ライフセイバーやサーファーの方は、ここに離岸流が発生しているということは分かっていると思うのですが、一般の方で、夏だけちょっと海に遊びに行くという人は、離岸流が発生しているのは見えないし、分からないんですね。地形からも判断しづらいところがあって、遊んでいたら流されていたということがあります。

――もし離岸流に流されてしまったらどうすればいい?
「流されるまま救助を待つこと」が正解です。波に逆らって岸に行こうとしても行けないので、パニックになって溺れます。

海で溺れた際に、大きな声を出して助けを呼ぶのは危険です。声を出すと体が沈んでしまうため、無理をして泳がず、『浮いて待つ』ことが大切です。
水難事故の研究を行っている 岡真裕美氏:
声を出すと、肺の空気が出てしまうんです。肺の空気は浮力になっているので、それを失うと沈んでしまう可能性が高い。(溺れたときは)浮力と呼吸を確保することが大事です。
――浮いていたらどんどん沖に行くのでは?
離岸流の場合はどこかで止まるので、頑張って「パニックを抑えて待つ」と。
見えない「水深」に注意
海の次に水難事故が発生している「川」。
一般社団法人「水難学会」によると、川で注意しなくてはいけないのは「水深」です。

水難学会が制作した講習動画を見てみると、一見そこまで深さを感じない川でも、腰ほどの深さになったかと思うと、足を滑らせると体がすっぽり潜ってしまうほどの深さに。

川の水深は、光の屈折により実際の深さよりも浅く見えてしまい、予期せず深みにはまってしまうと、そのまま速い川の流れに流されてしまいます。
「川で遊ぶときは、水深は自身の膝よりも下」を徹底してください。

――泳ぎがうまい方も溺れてしまうことがありますが…
水難事故の研究を行っている 岡真裕美氏:
泳ぎがうまいとか泳力に関係なく、滝つぼに入るような感じになったり、本当に水の流れが読めないので、また、前日の天気によって水深も変わりますし、川の場合は「いけると思ってもいけない」ことの方が多いと思った方がいいと思います。

もし川で流されてしまった場合は、海と同じように「ひたすら浮き続ける」ことが大切です。
無理に立ち上がろうとすると、足が川底の石の間に挟まり、水中から顔を出すのが困難になります。
また、流されたときに靴を履いていたら、靴やサンダルも浮力になるので「履いたままで浮かんで」ください。

水難事故の研究を行っている 岡真裕美氏:
下流の方に足を向けて、足を上げておいて流れやすくする。そして浮力と呼吸を確保するというのが大事ですが、パニックになっているときにそこまでできるかは難しいかなと。
「浮いて、どこかで止まるのを待つ」と。
今は、着衣泳の練習や、背浮きの状態で止まっておくという練習をしている学校もたくさんあります。

――もし溺れている人を見つけた場合どうすればいいのでしょうか?
まず浮力になるものを見つけていただきたい。そして、通報をしながら浮くものを投げるのがいいかなと。まず119に通報していただけたら、海の場合は118番。
自分では行かないほうがいいです。

――水難事故に遭わないために、どのようなことが大切ですか?
まずライフジャケットを着用してください。水辺に行くと、「遊泳禁止」「立ち入り禁止」という看板が立っているところがありますが、それは意地悪で禁止にしているわけではなくて、本当に危ないから看板が立っているんです。ですから、そこに遊び半分で入らない方がいいです。あとは、子供から目を離さない。
(『サン!シャイン』 2025年8月7日放送より)