小泉進次郎農水相によって随意契約で売り渡された政府備蓄米が、6月13日から沖縄県でも販売開始。ついに全国的に備蓄米が行き渡るようになってきた中、“新たな問題”に直面しているコメ農家がありました。

刈り入れ時期が8月のお盆前と、他のコメより早くに収穫する“早場米”「ふさおとめ」を、千葉県東庄町で生産している、コメ農家の多田正吾さん。

これまで、全体の約8割を「飼料用米」残り2割を「食用米」という形で生産していましたが、コメ不足を受け今年は全て「食用米」に変更したといいます。

コメ農家 多田正吾さん:
全て、主食用米に切り替えました。去年は7~8割方、55ha飼料米、20ha主食用米でした。(今年は)主食用米が足りないということで、約80ha近くを主食用米に変えました。
飼料米のほうが調整作業が楽なので、カメムシ退治もいらない…乾燥調整も楽。手間が全然違う。

例年よりも手間もコストもかけて育てたお米。
しかし、もうすぐ収穫という時期を迎え、ある“懸念”が浮上しました。それは、小泉農水相が掲げた、「輸入米の前倒し」宣言です。

コメ農家 多田正吾さん:
備蓄米も、輸入米もどんどん入る、日本国内でも食用米が全国的に多いとなると、先が見えている感じがします。“じゃぶじゃぶ”になる。
9月は日本全国米が収穫できる時期だから、収穫状況を確認してからでも遅くはないと思うんですよね。ダブついてしまったら大暴落で、生産者は本当に困ると思います。
9月にどれくらい取れるかっていうのをちょっと調査してから輸入してもらわないと、最悪の事態が起きてしまうんじゃないかと。離農する人が多くなって、後継者もできない…。

一般的にコメの収穫は9月ごろがピークとなりますが、その時期に輸入米が入ってくることで、買取価格が下落、コメ農家がコメの在庫を抱え、離農する人も出てしまうのではないかと懸念しているといいます。

国の統計見直す方針「需要が上がっている可能性が高い」

コメ農家から不安の声が挙がる中、6月15日に福島県を訪ねた小泉農水相は、コメ農家などとの意見交換の場で、政府の収穫調査や作況指数が、生産者の実感と異なることを「反省しなければならない」と発言。

コメの作柄を示す作況指数など国の統計を見直す方針を、16日に発表する予定です。

スペシャルキャスター カズレーザー:
統計と実際の実感の差があるというのは長年言われていたことだとは思うんですけど、長年ズレがあるというのが分かっていて、長年ずっとそれが続いている中で、米価は基本的に下落基調だったと思うんです。そんな中で、今般の急激な高騰というのは…ズレとどういう関係があるのかっていうのはちょっと伺いたいなと思いますね。

谷原章介キャスター:
実感として、もしくは政府が広報している“コメ離れ”が、もっともっと実は進んでいたんじゃないかって気もしますね。

実際にどれほど隔たりがあるのか、米流通評論家の常本泰志氏に話を聞くと…。

米流通評論家 常本泰志氏:
例えば、コロナ禍以降で家庭内のコメの消費量というのは増えています。プラス、外国人労働者やインバウンドなどで、需要量の誤差が出てきている可能性が高いと思います。

――現在の見通しは甘すぎる?
そうですね。従来から農林水産省は人口の自然減に対して年間10万t前後の量は需要量が減っていくだろうと言われている中で、結局こういった形で「足りない」ということが発生したということは、需要量が上がっている可能性が高いかと。

谷原章介キャスター:
JAが取り扱っている量はコメの全体量のなかでいうと40%を切っているわけで、そういった意味で正確な数字は出しにくいんだと思うんですけど、今まで小泉さんは、“米をじゃぶじゃぶ”出してとりあえずマーケットを冷やす、値段を下げると言うことを集中的におっしゃっていたのが、農家の方と実際にお会いして対話して、今後は生産者の方も支えていく話もされましたが、専門家としてはどうですか?

米流通評論家 常本泰志氏:
それは…あまり“じゃぶじゃぶ”させるのはよくないですし。
確かに、必要な分を出していくのはいいと思うんですよ。でも必要以上というのは相場にすぐ影響してきますので。株価と一緒なんですよ、コメの値段というのは。だからちょっとした要因で上昇幅があるので、なるべく穏やかなソフトランディングをさせて、今の値段が高いんですけど、それが少しずつ下がってくるのを皆さん、待っていただけたらなという思いではいます。

(『サン!シャイン』 2025年6月16日放送より)