農林水産省は6月12日、沖縄県を除く全国46都道府県の店舗で政府備蓄米の販売が確認されたと発表。さらに、20万tの追加放出も決めています。

東京・練馬区「アキダイ関町本店」 店頭にならぶ備蓄米

小泉進次郎農水相:
圧倒的に、店頭に(コメを)埋めていく。そういったことも考えるので、今回20万tの追加を考えたわけです。他力本願ではない姿勢で、政策を打ち込んでいきたいと思います。

さらに、もうひとつ新たな方針として、主食用として海外から輸入しているコメの「入札前倒し」を打ち出しました。

小泉進次郎農水相:
入札は今月(6月)27日、本来であれば11月から12月くらいに入ってくる予定であるMA米(ミニマムアクセス米)を、9月には入ってくると。そういった予定に前倒しができることになります。

入札前倒しで9月の新米価格に影響?

小泉農水相が打ち出した輸入米の「入札前倒し」。

「ミニマムアクセス米」とは、毎年、約77万tのコメを関税をかけず義務的に輸入しているもので、多くは、みそや焼酎、米菓などの加工食品用、飼料用や海外援助用としても利用されます。
輸入先は、米国・タイ・中国などで、77万tのうち約10万tは主食用として民間に入札で売却されます。

例年は9月に入札し11月~12月に輸入されますが、これを3カ月前倒しして、6月27日に入札。9月に輸入される見通しです。

前倒しにどのような狙いがあるのか、果たしてコメの価格安定化につながるのか、米流通評論家の常本泰志氏に詳しく話を伺いました。

米流通評論家 常本泰志氏:
この前倒しによる影響が2点あって、出る時期というのが9月前後ということで新米の時期と重なってきますよね、お米の価格が変動しやすい状態になりやすい。そのタイミングで市場投入するというのは、ものすごく不安定化してしまうんです。
2点目として、このまま先に輸入するということを前提にしてしまうと、その先にミニマムアクセス米の輸入枠を拡大する思惑があるのではないかと推測してしまうんです。それがトランプ政権の関税政策に絡むトランプさんへのお土産という形で持ってくるのではないかというのが、ものすごい警戒感ですね。

常本氏によると、輸入米の入札前倒しのメリットとして、「コメ高騰に歯止めをかけられる」可能性があるといいますが、一方でデメリットとして、「秋に収穫した新米の買い取り価格が下がり、コメ農家の収入に深刻な打撃」を与え、コメ作りをやめてしまうところも出てくる可能性もあるといいます。

米流通評論家 常本泰志氏:
9月に来るというのが、一番タイミングとして悪いので、その時点で日本国内のお米が不作であれば問題ないですが、それがそこそこ取れましたとなったときに、(ミニアムアクセス米が)最初から3万tも放り込まれるという状態になると、(市場価格の)見通しが立てにくくなるんです。どれくらいの価格で買い取ればいいのかなど基準価格がぶれてくるんです。いざその先で余れば暴落していきますし…、今この時点で決めてしまったのが、ちょっと拙速だったのかなあと。

起業家 成田悠輔氏:
逆に言うと今、価格がすごく上がっちゃっているわけじゃないですか。だから、政府としては“下げる”というのを最優先にしないといけないわけじゃないですか。
様子を見て結局そこで「新米が足りませんでした」となったら、あと何カ月かずっとコメの価格が高止まりするのを未然に防ごうという意図なんじゃないかと思うのですけど。

米流通評論家 常本泰志氏:
ただし、それは備蓄米が…小泉さんのお米がすべて出た段階で民間、市場っていうのは下がっています。そもそもの目的っていうのは民間の価格、要は(現状)JAから卸売りに流れる価格よりもはるか高い値段で民間市場が動いているんですね。その高い価格を下げる目的で、備蓄米の放出ってされているんですけれども、当初、江藤さんがやっていた頃は“価格にコミットしない”と会見でおっしゃっているんですよ。つまり、ある一定以上の価格は担保したうえで、量を出しますよっていうのが、いつの間にか“価格”にすり替わっちゃっているんですよね。

それはもちろん世論的な問題もありますし、メディア的な問題もあるとは思うんですけれども、それに対して“受けのいい価格”に振っていったというのが小泉さんのやり方なのかなと思っています。
1つの政策でここまでいろんな方に影響が出てきているんですよ、コメの末端っていうのは。だから下手に今、政治主導で動かれるよりはちょっと待っていただきたいなというのがあります。

スペシャルキャスター カズレーザー:
でも現状、消費者は安いおコメの方に向いているわけですよね。
新米としての適正価格もあるとは思いますが、その価格では買わない、カリフォルニア米とそもそもどっちを選ぶかという選択肢に乗っている時点で、高いおコメの需要がもうなくなっているってことなんじゃないですかね?

米流通評論家 常本泰志氏:
一概に言えなくって、結局ある一定の層っていう、例えば「最初から高級米が欲しいよ」とか「おいしいご飯を食べたいよ」っていう人はそういう価値観で動くと思うんです。
今の状態っていうのは、スーパーで大体50%買われる世の中なので、そのスーパーが味を分かって売っているわけじゃないですか、だって店員さんに聞いても味分かんないじゃないですか。それでもいいから銘柄だけで買ってたりとかっていうようなのが当たり前になっているわけですよね。

そうしたら、他の食品と同じように“安けりゃいいや”っていう発想にはなりやすいと思います。そのお米が結局ちゃんと作られて、ちゃんとした価値で売られている所というのは、それなりにニーズがありますし、うちらもそうですし。
そこでどう考えていくか。消費者の皆さんは、農家さんがどれだけ大切に作ったものかという意識がないまま買っている状態というのが、怖いと思っています。

(『サン!シャイン』 2025年6月13日放送より)