価格の安い備蓄米が店頭に並び始める中、「銘柄米」を値引きする店も出始めています。

銘柄米だけを取り扱う、スーパーマーケットセルシオ和田町店。店頭に並ぶ千葉県産の銘柄米には、「本体価格より10%引き」の文字が。

スーパーマーケットセルシオ和田町店 久保田浩二さん:
早々に先週の金曜日(6月6日)からは、少し値引きの販売というものを始めさせてもらいまして。5%引きでの販売をさせてもらって、週が明けて月曜日(6月9日)には10%引きに値引き幅をあげて販売をしている。
政府の備蓄米の随意契約の商品が、大手さんを中心に本当に安く販売できる商品が、店頭に並び始めたというところで、当店での購入というところに少し“買い控え”というような現象が起きてしまいまして。

安価な備蓄米の影響か、銘柄米の売れ行きが鈍くなったため、利益を減らしてでも値下げに踏み切ったといいます。

スーパーマーケットセルシオ和田町店 久保田浩二さん:
たったいま最後(の1袋)が売れたというところで、一応、ホッとしました。
やはり精米日が古いものがずっと残るのはどうかなと。最悪、あす、あさっても残ってしまっていたら、もう2割引まで値下げ幅を上げてでも販売しようと思っていたので。
スーパーの銘柄米にまで及びつつある“コメ価格 下落の波”。その余波は、“街のお米屋さん”にまで広がりを見せています。

横浜市にあるコメ店「農家産直米すえひろ」では、玄米をその場で精米し販売していますが、群馬県産・無農薬のコシヒカリが、1kg1700円から1400円に値下げされていました。

農家産直 米すえひろ 荒金一仁代表:
ちょうど5月の25日ごろからですか、やっぱり米価が下がらなくて右肩上がりをしておりましたが、この先の予測では全体的に米価は下がってくると思われますので、(現在)5kgで平均4200円ぐらいだと思われますけど、やはり3000円台実現してくると思うんですね。ですから、そう考えると高い方のお米は売りづらいと。

“コメのプロ”であるコメ店の店主すらも、「随意契約の備蓄米は銘柄米の価格に影響を及ぼす」と考え、随意契約が始まる直前から値下げに至ったといいます。
店頭に並ぶ“銘柄米”の価格に影響を及ぼしている備蓄米。
さらに、6月11日から追加での受付が始まったのが、「2021年産の備蓄米 “古古古米”」の随意契約の申し込みです。これまで買い手が付かなかった分も加えた、約12万t分を放出します。

農林水産省は、11日午後5時時点で98社から約4.2万tの申請があったと発表。流通大手の「イオン」は、5000tを申し込んだことを明らかにしました。

小泉進次郎農水相(44):
やはりニーズが非常にあるなという印象です。できる限り店頭に早く並べていただけるところに、早くこの随意契約米が届くように省内の作業も加速をしたい。
小泉農水相は、今後21年産の古古古米の受付終了後に、20年産の「古古古古米」10万tの放出を予定しています。
市場に“じゃぶじゃぶ”…突然 銘柄米が店頭に
6月10日の会見で発した、「じゃぶじゃぶにしていかないと、コメの価格は下がらない」の言葉通り、就任以降、随意契約による備蓄米の放出を続ける小泉農水相。

その影響か、これまで店頭になかなか並ばなかった銘柄米も“じゃぶじゃぶ”出てきたといいます。

農家産直米すえひろ 荒金一仁代表:
卸さんも高止まりになる可能性があるので出したいわけですよ、勘ぐれば。今までなかったので。世の中の風潮が、ブランド米、高い米が売りづらくなっていることなので、これ以上売れないかと思えば、それは出しちゃいたいよね、今のうちに。これがだってあと2カ月もしたら古米になっちゃうわけですから。

「すえひろ」の荒金代表によると、ずっと「在庫のコメはない」と言っていた卸売業者から、5月末に突然、仕入れることができたといいます。売れないまま古米になってしまうなら…という危機感から在庫分を出したのか。

変化し続ける“コメ事情”。今後、銘柄米の価格はどうなっていくのでしょうか。
今後の“コメ相場”は?コメの流通が“複雑化”した理由
谷原章介キャスター:
実際に、古古米が出て“小泉米”って言われて、古古古米…古古古古米が出るってなると本当にマーケット、このまま相場がずっと下がってきそうで。とても喜ばしいと同時に、これでもって本当にコメ相場が破壊されてしまって、コメの価格が一気に下がりすぎるっていう怖さもちょっと感じる面はありますね。

スペシャルキャスター 杉村太蔵:
小泉農水相になってから備蓄米を一気に放出したと。それに加えて、これまでの農林水産行政と全く違うコメントがあったのは、「必要であれば輸入しますよ」と。あのコメントは業者からすると、備蓄米はいずれ底をつくと、底についたら今の在庫もちゃんと売れるだろうと、特に8月に勝負をかけられると。
ところが、輸入されるとちょっと今の在庫が余るんじゃないかなと。コメの口先介入じゃないけれども、日銀じゃないないですけど、それが結構影響しているんじゃないかなと。

コメ価格高騰で小泉農水相が問題視している、複雑な“コメの流通”。
しかし、米流通評論家の常本泰志氏は、「本来は価格が上がる構造ではない」と指摘します。

これまでは、卸売問屋にそれぞれ得意なコメの分野があり、「北海道米が足りないから融通してほしい」「では、新潟米が足りないので売ってほしい」と、卸間でコメを売買する「卸間売買」という、“お互いさま”の横のつながりで取引を行っていたといいます。しかし…。

米流通評論家 常本泰志氏:
今回の場合は、もともとJAに集まる量が少なかったんです。それが民間に流れてしまったことで、JAから契約量を減らされたと。減らされた分だけ、ほかの民間の高い米を買わざるを得なくなってしまったんですね、大きな卸さんが。それで、高いのを買ってしまって、お互いさまでと融通し合ったことで、こんな形になってしまいましたが、本来はこんな高くなるような構造ではないです。たまたまこの構造になっただけだと。
(『サン!シャイン』 2025年6月12日放送より)