2025年4月に新たな法律が成立するなど、日本でも急速に高まるAIへの関心。

アメリカでは、AIが作り出した故人の映像を使い、殺人事件の被害者が出廷するという“異例の裁判”が行われました。

裁判にまで登場したAI。最新技術の利用はどこまで許されるのでしょうか?
『サン!シャイン』では死者を巡る倫理を研究している上智大学大学院の佐藤啓介教授に話を聞きました。

“AI個人”サービス①「メッセージ型」

亡くなった人をAIで再現するというサービスは次々と登場しています。

故人の写真や1分以上の動画から、生前の人相・声・話し方など故人の癖の情報を引き出し、最短3日で“AI故人”を作成。
遺族が決めた文章を“AI故人”が読み上げるサービス。
初期費用9万9800円~ データ管理料月980円

このサービスを行っている「アルファクラブ武蔵野」に『サン!シャイン』谷原章介キャスターのAI動画を作っていただきました。

〈“AI谷原章介”〉
おはようございます。谷原章介です。なんと私、“AI”になっちゃいました。『サン!シャイン』をご覧の皆さま、本物との違いは分かりますか?AIでも皆さまに元気をお届けします。

谷原章介キャスター:
短時間で作ったんですよね。AIと対話をして僕の癖とかを学ばせたわけではなく、ある動画から学ばせただけでしょ?

渡辺和洋アナウンサー:
以前谷原さんに取材したときの映像を使ってAIにしたものです。

上智大学大学院 佐藤啓介教授:
この「メッセージ型」というのは、あくまでこちらが決めた文章を読み上げていくパターンなんですね。AIがゼロから生成した内容をしゃべっているわけではないんです。“しゃべり方”はAIが再現してくれるものです。

“AI個人”サービス②「対話型」

亡くなった人と会話ができるという“対話型”のAIも。

話しかけると故人と対話しているかのように答えが返ってくるサービス。
故人に会いたいとき、お盆などの法事などに利用されるケースが多いといいます。
年会費30万円(“AI故人”作成費用+トレーニング費用)
通話料は60分プラン800円 600分プラン3000円

例えば、こんな質問をしてみると…。

生成AIで作成された柏口代表と対話をする取材スタッフ

――今のAI事情について教えてください。
〈生成AIで作成された 株式会社ニュウジア 柏口之宏代表〉
AIデジタルヒューマンを活用することで、情報提供の質とスピードが格段に向上し、ユーザーによりよいサービスを提供できるようになります。

現在、利用者の約9割が依頼するのが「故人とのやりとりの再現」だといいます。

株式会社ニュウジア 柏口之宏代表:
「あの人そうだったね」を思い起こせる故人の新しいしのび方になるっていうことを目指してます。

ホルヘ・アルマザン氏:
個人的には、「メッセージ型」はあり得るかなと思いますが、「対話型」は本人と話しているように感じてしまうのは危険かなと思います。遺族にとって精神的に健全かどうか、依存症みたいな問題にもつながるのかなという懸念があります。

谷原章介キャスター:
思考パターンみたいなものまで学習できてしまうということですよね。

上智大学大学院 佐藤啓介教授:
もちろん限界はありますし、あくまで本人っぽいとはいえ、私たちだって日常においてその人のパターン通りに普段からしゃべっているわけではないので、どこまでが本人っぽいかと言われると、よく分からないですね。

“AI故人”「スナップシネマ」

“AI故人”のサービスは、話をするだけではありません。
写真から故人の表情やしぐさなどを再現し、映像化するサービスも6月4日に始まりました。

着物姿の女性の写真。

これをAIで動かすと…微笑み、歩く動作や手の動きまで自然に動いているように見えます。

さらに、仲むつまじい家族写真も…母親は手を振り、子供は立ち上がりこちらに歩み寄ってきます。後ろの花まで風で細かくなびいています。

松﨑涼佳アナウンサー:
私の祖母は私が生まれる前になくなっているのですが、昔の写真とか見ていると、祖母に似ているね、と言ってくれる人がいるので、どういう表情や動きが似ていたんだろうなと、こういうので知れたらうれしいですね。

“AI故人”サービスはあり?なし?

亡くなった人をAIで蘇らせるという新たな試み。街で聞いてみると。

20代女性:
亡くなる前に、話せなかった人とかにしゃべってるような感覚になるんですごくいいなって思います。

一方、こんな意見も…。

30代男性:
自分のおばあちゃんがコロナ禍でなかなか会えずに亡くなってしまったので、(会話)したいですけど、やっぱ本物じゃないんで。それで上書きはされたくないなって感じはありますね。

『サン!シャイン』視聴者の方からも「残された遺族の心が癒やされるならいいのでは」という意見がある一方で、「AIは悪用も怖い」という意見も寄せられました。

上智大学大学院 佐藤啓介教授:
これらのサービスはどれも、使う人にデータを丸投げではなくて、あくまで会社側が管理します。だから、勝手にYouTubeにアップしたりいろんな人に使えないように配慮して作られています。そうでないと、遺産の残し方に、「こんな言葉が残ってたぞ」みたいな、ディープフェイクのように使われたりするリスクはいくらでもあります。我々が常識的に考えている用途を外れた用途がいくらでもできてしまう。そのあたり、慎重に使わないと悪用の危険性があるという意見はもっともだと思います。

(『サン!シャイン』2025年6月6日放送より)