にわかに巻き起こった「備蓄米フィーバー」。
その様子を冷静に見守っているのが、街のお米屋さんです。

米マイスター麹町 福士修三社長:
令和3年産だと、ちょっと売りづらいかなと。例年であれば新米が出ますと、前年度の米はほとんど売れないんですよ。

契約見送るコメ店も

『サン!シャイン』が取材したのは、千代田区にある老舗の米専門店の店主。
全国から取り寄せたお米を飲食店や一般の家庭などに販売。1カ月あたり約30tを扱っています。

6月2日で受付が一時休止された、中小のスーパーやお米屋さんを対象とした2021年産、古古古米の随意契約。
このお店には、契約の条件となる精米の設備もありますが…。

米マイスター麹町 福士修三社長:
今回は見送りですね。10tという数なんで、これを8月までに消化しなきゃならないのと、あとは一般消費者向けなんですよね。これは業務用の飲食店等には使えない。 
10tじゃちょっと多すぎる数ですね。
大量仕入れしても、使えるかどうか。サンプルもいただいてないしちょっとリスクがあるんですよ。仕入れたのはいいけど、使えないとなると、そういうことも考えましたね。

放出される「古古古米」の味を確かめずに購入を決めることは、小さな米店にとってリスクが大きすぎるといいます。

「お米がないと困るけど…」シングルマザーの苦悩

都内に住む、シングルマザーの大原さん。
メディアなどで報じられる「備蓄米フィーバー」を遠目で見ているといいます。

3人の子供を育てる大原さん(40代):
本当に米がないので、もしあったら買ってみようかなと思ってるんですけど、身近な場所で売っているのを見ていないので…。
うちは子供が3人いて、高校2年生と中学3年生と小学校5年生。3人男の子なので、1カ月に15kgぐらいお米を食べるんですね。
いろいろ(子供に)できないこともあったけど、ご飯だけはちゃんと食べさせようと思って食べさせてきたから、お米食べられないのはすごく困るっていうか、(お米が)ないと困る。
お米以外、野菜とかお肉とかお魚で、1万2千円とか1万5千円とか週にかかるから、それ以外にお米がどんどん値上がりすると(家計が)すごい大変。

コメの価格が高騰する中、小泉大臣が決めた随意契約での備蓄米の放出。
安いお米は喉から手が出るほど欲しいといいますが…。

大原さん:
買ってみてもいいなとは思うんですけど、並んでまではちょっとなみたいな。
タイムイズマネーじゃないですけど、並ぶ時間がないっていうのはすごくあって、お米は必要だけど、お米のためだけに半日はつぶせない。

家事、子育てだけではなく、家計を支えるシングルマザーが安い“小泉米”を手に入れるのは、至難の業だと言います。

NPOの調査によると、直近の半年間でお米を買えない経験をしたひとり親家庭が88%にのぼることが明らかに。

コメ価格 地方格差も

「小泉米」を巡っては、地域による不公平感も生まれています。

今年4月、総務省統計局が県庁所在地など合わせて全国81の都市を対象に行われたコシヒカリ5kgの平均価格の調査で、最も高かったのが岡山市の5396円。

なぜ、岡山市が一番高いのでしょうか?
岡山市のお米事情に詳しい人たちを取材すると、その理由が見えてきました。
実は岡山県は、西日本を代表する米どころ。去年は「豊作だった」といいますが…。

グランドマート 岡本和恵取締役:
去年の米不足の足りないというときに、新米のときに、全国から、特に関東の方から買い付けの方が来られて、岡山のお米をたくさん購入されていったというのは聞きました。

大都市圏の業者が岡山のお米を大量に「青田買い」。その結果…。

岡山市の米穀店オーナー:
さあ、岡山のお米が足りなくなりました。それじゃあ、関西圏の中間業者から買いましょうっていうふうなことになれば、当然その間には、運賃が発生してきますから、そういうふうな問題で高くなっているんじゃないかと。

取材した「グランドマート」では “小泉米”の購入を決めましたが…。

グランドマート 岡本和恵取締役:
当社としては、玄米で来る予定で、いま、岡山で精米させてくださる業者さんとご相談中ではあるんですが、岡山では、東京ほどの玄米自体が届いていない状況ですので、だいたい2~3週間かかると言われて、早くて6月下旬と言われております。やはりテレビでああいうのを見ると、少し不公平感はあります。同じようにしてほしいなって思いがありますね。

そして、以前、小泉農水相が「コメが高すぎる」と言っていたのが…総務省のデータには載っていない、沖縄・西表島です。
実際にいくらで販売されているのか、西表島で商店を営む方を取材しました。

――コメは今いくらで売っている?
屋良商店 屋良誠一代表:

今は税込みで(5kg)6500円です。つらいですよね。この値段でしか売れないっていうのは。
電気代もあるし、ガソリン代、貨物費というのをどんどんかけていって、プラスで自分たちの利益っていうとこまで出さなきゃいけない中で、うちの集落が今60世帯ぐらいしかいないので、そこに対しての商店だとどうしても買う人が少なくなってくるので、やっぱり高くしなきゃこっちもやっていけないし…。

見えてきたのは、離島が直面する厳しい現実。
さらに、備蓄米については…。

屋良誠一代表:
報道を見ると、皆さん買いに走ってるので。マスクやトイレットペーパーときみたいに、多分都会でバーって売れて、こういう田舎までには(備蓄米)回ってこない方があるのかなって思いまして。

今後はスピード感に加え、本当に困っている人たちにコメを届けるさらなる対策がのぞまれます。

酒主義久アナウンサー:
放出した備蓄米を全国で流通させるためには何が大事になってくるのでしょうか?

流通経済研究所 主席研究員 折笠俊輔氏:
備蓄米の倉庫からの出庫は必ず入りますので、例えば今後、中小の契約があったときに、大手さんとは前に契約しているわけですけど、どういうふうに契約の後に優先して出していくかっていう話になります。政府の方でのそういった調整もかなり肝になると思います。

(『サン!シャイン』2025年6月3日放送より)