その後、万理子に心配された千明は、彼女の健気さに負けて、浮かない表情の理由を打ち明ける。
母から電話があり、父・吉野隆司(小倉蒼蛙)が病床で千明に会いたがっているから顔を見せに来い、と言われたという。
しかし、千明の母はこれまでも「父が病気だ」と嘘をつき、千明を呼び戻すという前科があった。しかも、何度も。
長倉家の面々に後押しされて実家への帰省を決める千明(小泉今日子)
還暦前の娘が心配なのだろうが、今回もどうせ嘘だろう。笑いながらも、何かをごまかすような千明に、和平は真正面からきっぱりと言う。
「いいじゃないですか、嘘でも。何度でも騙されてあげてください。会いたいって言ってくれてる親が、そこにいるんですから」
千明にしてみれば煙たい存在でも、早くに親を亡くした長倉家の人々にとっては、“親が生きていて、会いたいと言ってくれている”というだけでも、自分たちには望むべくもない話。

子どもをなだめるような笑顔を浮かべた長倉家の一人ひとりに見つめられ、千明は「わかりました」と白旗。
しかしただでは起きず、婚約者役を演じさせるため、和平も信州へと道連れにするのだった。