夕食を終えた団らんのひととき。
茶の間のソファで隆司が居眠りを始めると、「千明をよろしくお願いします。宝物みたいな子なんですよ」と有里子が頭を下げ、和平も「千明さんといると幸せです」と返す。

驚いた千明が和平を見つめるなか、有里子は今でも後悔していることを打ち明ける。それは千明が小学1年生のときに、有里子の不注意で、千明の腰のあたりに火傷をさせてしまったこと。
千明は一度も言わないが、その火傷痕を作ってしまったことを、今でも震えて涙が出てくるほど悔いているし、ごめんと叫びたくなると。
有里子(三田佳子)が千明(小泉今日子)のことで長年後悔していること…
そこで千明よりも早く有里子を安心させたのが、「お母さん、ありませんよ。もう」と言う和平の落ち着いた声。
すぐに千明も、もう痕なんて残ってないよと言葉を重ね、50年以上も背負っていた後悔から解放された有里子は、ホッとして笑い声をあげた。
しかし、千明が「なんで知ってるんだっけ」と和平に尋ねたところから、感動的だった雰囲気は一変。裸を見たのかと問い詰める千明と、売り言葉に買い言葉で応じてしまう和平。

いつもの調子のケンカに、目を覚ました隆司も有里子も、呆気に取られる。
嘘の恋人同士とバレてしまった2人は、布団に入って部屋の灯りを消したあとも、またケンカ。子どものように枕を取り合って投げ合い、両親の部屋まで声が届くほどの大騒ぎを繰り広げる。
しかしそのケンカの声に、「大丈夫そうね、あの子」と有里子、隆司も「だね」と応じてうれしそうに微笑んでいた。