徳島県立近代美術館が、大阪の画廊から税金を投じて6720万円で購入した、油彩画「自転車乗り」。

20世紀前半に活躍したフランス人画家ジャン・メッツァンジェの作品として、20年以上にわたり展示されてきた作品でしたが、2024年6月に「贋作ではないか」と指摘が入り、2025年3月に正式に贋作であることを発表されました。

徳島県立近代美術館 上席学芸員 竹内利夫さん:
県の美術館の所蔵品に贋作が含まれていたということで、鑑賞してくださった皆さま、信頼して美術館を利用してくださった皆さまに本当に申し訳ないというか、謝っても取り戻せないんですけれども…。

徳島県立近代美術館では、贋作の指摘があった時点から展示を取りやめていましたが、11日から一連の経緯説明も含めて、無料での公開を開始。

“贋作”の展示に、戸惑いながらも多くの人が集まりました。

来館者:
6000万円のモノといわれたら6000万として見ますし、1万のモノといわれたら1万のモノとして見ますもんね。(贋作かは)全く分からないですよ。

来館者:
すごく細かくて絵もきれいだし、作品だけでみ見れば素晴らしい作品だなと思うけど、贋作となると価値がなくなるんだなと思うと、面白いなと思って見ていました。

“幻の作品”をあえて描く天才贋作師

今回見つかった贋作を描いたとされるのは、ドイツの天才贋作師と呼ばれるヴォルフガング・ベルトラッキ氏です。

彼がこれまでに贋作で得た金額は、3500万ユーロ。現在のレートで57億円以上と言われています。

しかし、なぜ美術館が“贋作”だと気がつけなかったのでしょうか…。

徳島県立近代美術館 上席学芸員 竹内利夫さん:
「本物がどこにあるのか、持ってきて比べたら分かるじゃない?」と(よく言われるが)これ、本物はないんです。
フランスのメッツァンジェという画家の“こんな絵を描きそうだな”っていう“でっちあげ”なんですね。さもその時代にあったかのような、そしてメッツァンジェという人の作風もよく捉えているので。
しかも、どこかに写した元があったら、「あそこにあるはずだからこちらは嘘だ」ってすぐ分かるんですけど、こういうのを描いてもおかしくないよなって“ない物”をでっちあげているので、専門家一同だまされたと。

天才贋作師は、実在する作品ではなく、“メッツァンジェ幻の作品”を描くことで、専門家たちをだましきったのです。

今回の被害に関して、美術館側はなすすべはないといいます。

徳島県立近代美術館 上席学芸員 竹内利夫さん:
ドイツではもう詐欺の時効が終わっていると。しかも、この作品自体はもうすでに裁判の時点で時効だったんですね。これはもう徳島県がこんな“詐欺事件の顛末”という形で、ご報告するしかしょうがない、そういう代物だっていうのは、説明していこうと思っています。

MC谷原章介:
慌てて処分しないでほしいし、見に行きたい!この作品。

スペシャルキャスター カズレーザー:
これで美術館自体が注目されて来館者数が増えるならめちゃくちゃいいことだと思います。そもそも、メッツァンジェの絵ということをみんな知らないじゃないですか。6720万円の絵があったとしてもみんな見に行かないですが、贋作なら見に来てくれるというのが何か逆転していて面白いですね。

贋作の無料公開は、2025年6月15日まで行われます。

(『サン!シャイン』 2025年5月12日放送より)