終演後の客席では、足を痛めたトニーを劇団メンバーが囲んでいた。到着が遅れてしまったことを詫びるトニーに、口々に励ましや明るい言葉をかけるメンバーたち。そこに、警察が来ていると知らせに大門が慌ててやって来る。
即座に状況を飲み込むトニー。久部は裏口から逃げるよう言うが、すべての出入り口に警官がいるはずだと大瀬が止める。潔く自首を決意するトニーと、その決断を受け入れるパトラ。納得できない久部を、八分坂にいる人間はみんな覚悟しているのだとフォルモンが諭した。
トニーは、自首することは淡々と決めたのに、舞台に穴を開けてしまうことを、むせび泣いて久部に詫びる。その姿に久部も涙を浮かべ、自身の責任であり行かせるべきではなかったと叫んだ。そんな彼に、トニーは現場の一部始終を録音したカセットテープを差し出した。
劇場を守るため、久部(菅田将暉)やパトラ(アン ミカ)らが一芝居を打つ
そして劇場は取引と無関係だと思わせるため、トニーはストリップを見に来た出入り禁止の客という設定で、一芝居打つことに。刑事が来たタイミングで、嫌がるパトラに迫ろうとトニーが暴れ、止めに入った是尾を突き飛ばす。
さらに大瀬が警官姿で登場し、トニーに飛びかかった。騙された刑事と警官たちが暴れるトニーを押さえつけると、パトラはその頬を叩いて、「この変態!顔も見たくないわ…」と吐き捨てる。劇団メンバーたちの迫真の演技に、久部は万感の思いに打たれながら、「みんな、いい芝居するなあ」とつぶやいた。
トニーから託されたカセットテープには“ジェシーコーポレーション”という社名がしっかりと録音されていた。久部はそれを警察に届けるのではなく、他の使い道を思いつく。
怒涛の公演を終え、それぞれが複雑な思いを抱えながら、いつも通りの日常が戻ってきたかのように振る舞う夜。蓬莱は日記に思いを綴りながら、「久部さんは僕たちを、どこへ連れていくのだろうか」と、劇場の“これから”について考えていた。
劇場の外で物思いにふける久部のもとに樹里がやって来て、ある客がテンペストで待っていると言う。久部がテンペストに向かうと、奥のテーブルに座っていたのは、客席から舞台に見入っていたニット帽の男。
その男は、久部が心から敬愛する演出家・蜷川幸雄(小栗旬)だった。

